デリ売場は手洗いと温度守れ

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(微生物)No.17(2021.08.18)を発表した。

注目記事

【米国】デリ売り場における食品由来疾患のリスク因子

 米国食品医薬品局(US FDA: US Food and Drug Administration)は、食品小売店の調理済み食品売り場(デリ)における食品由来疾患のリスク因子について実施した調査の報告書を発表した。

https://www.fda.gov/media/148247/download

 この調査は、従業員個人による不十分な衛生管理や不適切な手洗いなどの慣行を例とする食品由来疾患のリスク因子について、これらが発生するタイミング、およびこれらと食品安全管理システム(FSMS:Food Safety Management Systems)や認定食品保護管理者(CFPM:Certified Food Protection Managers)との関連を調べた10年間にわたる取り組みの一環として実施された。この調査のデータは2015〜2016年に収集された。

 調査の結果、FSMSが適切に導入されているデリは、そうでないデリと比べて食品由来疾患のリスク因子を適切に管理している傾向が強いことが認められた。また、責任者としてCFPMを採用しているデリでは、CFPMを採用しないデリより洗練されたFSMSが整備されていた。

 調査データの分析から、デリは以下の項目については最良の管理ができていることが示された。

  • そのまま喫食可能な(ready-to-eat)食品は決して素手で取り扱わないこと。
  • 生の動物由来食品の加熱調理は温度要件に従って行うこと。

 一方、より優良な管理が必要となる最も一般的な食品安全慣行・規範には以下の項目が含まれた。

  • 従業員が適切な手洗いを確実に実践すること。
  • 要冷蔵食品を適切な温度下で保存すること。
  • 食品を適切に冷却すること。

 米国において食品由来疾患は依然として公衆衛生上の重要な懸念であり、毎年およそ
4,800万人の患者と3,000人の死亡者および年間約777億ドルの損失の原因となっている。

【アイルランド】養殖タイセイヨウサケの寄生虫対策としての冷凍処理を免除

 アイルランド食品安全局(FSAI: Food Safety Authority of Ireland)および海洋漁業保護局(Sea-Fisheries Protection Authority)は、アイルランドで養殖されるタイセイヨウサケの寄生虫対策としての冷凍処理について、要件に関する最新の見直しを行った。

 今回の見直しは以下の内容を踏まえて行われた。

  • 最初の冷凍要件の導入以降に行われた規則変更
  • 水産食品中の寄生虫のリスク評価に関する欧州食品安全機関(EFSA)の科学的意見

 規則変更の見直しおよびリスク評価の見直しにより、アイルランド産養殖タイセイヨウサケは、浮動ケージまたは陸上の水槽内で養殖され、生きた寄生虫を含む可能性が低い配合飼料による給餌が行われており、アニサキス科幼虫の感染リスクは極めて低いと結論付けられた。この見直しにもとづき、アイルランド産の養殖タイセイヨウサケについては、寄生虫対策としての冷凍処理は免除されると判断された。

 アイルランド産養殖タイセイヨウサケが以下のような改正規則の要件を満たしている場合は寄生虫対策のための冷凍義務はなく、何らかの冷凍処理が施された場合には製品ラベル上または消費者向け情報提供として店頭に適切に表示する必要がある。

  • 当該水産食品がアイルランド産タイセイヨウサケ由来の場合
  • 胚から養殖され、かつ健康危害をもたらす寄生虫が生存している可能性がない飼料のみが給餌された場合
  • 寄生虫が生存していない環境のみで養殖された場合

【カナダ】旅行と関連のないサイクロスポラ感染

 カナダ公衆衛生局(PHAC: Public Health Agency of Canada)は旅行と関連のないサイクロスポラ感染を調査している。

 2021年7月30日までに、サイクロスポラ症患者計48人がブリティッシュ・コロンビア州(2人)、オンタリオ州(37)およびケベック州(9)から報告され、調査が行われている。患者1人が入院し、死亡者は報告されていない。

 カナダでは毎年、旅行と関連のないサイクロスポラ症患者のカナダ公衆衛生局(PHAC)への報告数が春季および夏季に増加する。PHACは公衆衛生・食品安全当局と協力し、感染経路を調査している。

 過去の事例では、包装済みミックスサラダ、バジル、シラントロ(コリアンダー)、ベリー類、レタス、サヤエンドウ、スナップエンドウなどの様々な種類の輸入生鮮農産物がサイクロスポラ症患者に関連していた。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.17(2021.08.18)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2021/foodinfo202117m.pdf

今号の目次

【国際連合食糧農業機関(FAO)】
1. 食品事業における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染予防に関するガイダンス

【米国食品医薬品局(US FDA)】
1. 米国食品医薬品局(US FDA)が調理済み食品売り場(デリ)における食品由来疾患のリスク因子に関する報告書を発表

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 詰め物入りパン粉付き冷凍生鶏肉製品に関連して発生しているサルモネラ(Salmonella
Enteritidis)感染アウトブレイク(2021年8月11日付更新情報)
2. 小規模飼育の家禽類との接触に関連して発生したサルモネラ(Salmonella Hadar、S.
Agona、S. Anatum、S. Enteritidis、S. Infantis、S. Mbandaka、S. I4,[5],12:i:-、S. Braenderup、S. Muenchen、S. Thompson、S. Typhimurium、S. Newport)感染アウトブレイク(最終更新)

【カナダ公衆衛生局(PHAC)】
1. 旅行と関連のないサイクロスポラ感染を調査中(初発情報)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
1. 感染症の予防と管理を強化するための新しいポータルサイト「EpiPulse」を開設
2. サルモネラタイピング技術に関する第10回外部精度評価の報告書

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)

【アイルランド食品安全局(FSAI)】
1. アイルランド産養殖タイセイヨウサケの寄生虫対策のための冷凍処理規則の見直し

【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(28)(27)(26)