特定時期の暴露のリスク評価

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.15(2021.07.21)を発表した。また、「【COT】生涯より短い期間あるいは生涯にわたり変動する暴露に由来するリスクを評価するためのCOTの基本原則に関する声明」を食品安全情報(化学物質)No.15(2021.07.21)別添として発表した。

注目記事

【FDA】1年が経過し、よりスマートな食品安全新時代の青写真は、FDAの公衆衛生上の使命に浸透している

 米国食品医薬品局(FDA)が「よりスマートな食品安全の新時代」の青写真を発表してから1年が経過し、その目標に向かって大きく前進した。パンデミックへの対応をはじめ、サプライチェーンの継続性と回復力、検査方法の近代化、消費者がオンライン注文する食品の安全性などに関わる目標の必要性が加速していることがわかった。この1年間の活動報告とともに、2021年に予定されている活動についても紹介する。

※ポイント:米国FDAでは、青写真に掲げた目標を達成するための活動が着々と進められているようです。食品システムへのCOVID-19パンデミックによる影響も反映して、リモートによる査察や監視の導入などのデジタル化の推進やさまざまなデータの活用方法の検討に活動の重点が置かれています。

【COT】2021年7月6日の議題とペーパー:EFSAの二酸化チタンの評価について

 英国毒性委員会(COT)が、二酸化チタン(TiO2)に関する欧州食品安全機関(EFSA)の意見を遺伝毒性委員会(COM)が検討した予備的な報告を発表した。COMは、EFSAの意見についていくつかの疑問点を指摘し、入手できる根拠に基づきEFSAの結論には合意せず、さらに、EFSAの結論は薄弱な根拠に基づく極めてリスク回避傾向の強いもので人々に不必要な懸念を作り出す可能性があるとしている。

※ポイント:EFSAは食品添加物としての二酸化チタンについて遺伝毒性の懸念が排除できないという曖昧な結論を出しました。これに対してCOTは評価に使用されたデータの信頼性にさえ疑義をていしているので、今後のさらなる議論の動向が注目されます。また、オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)も、二酸化チタンの遺伝毒性の可能性と食品添加物として使用される粒子サイズに着目して、EFSAの評価内容のレビューと関連データの募集を開始しています。

【COT】生涯より短い期間あるいは生涯にわたり変動する暴露に由来するリスクを評価するためのCOTの基本原則に関する声明

 COTは、生涯においてある特定の時期に相当高くなるような暴露や、汚染事故の発生のように短期的な暴露によるリスクの評価方法について基本原則を公表した。

※ポイント:これまでは生涯にわたる長期(慢性)暴露と、単回や24時間以内の短期(急性)暴露による影響を評価するのが一般的でした。近年、それらにプラスして、ある一時期に増加するような短期間の暴露による影響をどのように評価するのかが盛んに議論されています。COTは、先ずは長期暴露を想定して設定された許容一日摂取量(ADI)や耐容一日摂取量(TDI)などの健康影響に基づくガイダンス値(HBGV)と比較することを勧めており、もし対象とする短期間の暴露量がHBGVを超過するような場合には、必要に応じて詳細なリスク評価を行うという段階的なアプローチを提示しています。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.15(2021.07.21)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2021/foodinfo202115c.pdf
食品安全情報(化学物質)No.15(2021.07.21)別添
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2021/foodinfo202115ca.pdf

今号の目次

【WHO】
1. 化学物質の公衆衛生への影響についての新しいデータ
2. 化学物質が原因の可能性がある病気のアウトブレイク調査マニュアル
3. 国際がん研究機関(IARC)

【FAO】
1. Codex

【EC】
1. 植物の健康を守ることが EU が国連の持続可能な開発目標を達成するのに役立つだろう
2. 査察報告書
3. 欧州不正防止オフィス(OLAF)
4. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. EFSA の科学的評価のための証拠の収集、評価、統合のトレーニング
2. OpenFoodTox:化学物質のハザードデータベース
3.2022-2027年に予定される EFSA の進行方向
4. 遺伝子組換え関連
5. 新規食品関連
6. 農薬・動物用医薬品関連
7. 飼料添加物関連

【FSA】
1. 根拠の重み付け-外部の根拠を評価するための新たな枠組み
2. リスクアナリシスと規制品申請の新規登録
3. COVID-19消費者研究

【MHRA】
1. ハーブとホメオパシー医薬品:有害事象疑いに注意しそれをイエローカード計画で報告するように再度注意喚起

【HSE】
1. 食品中残留農薬:2020四半期モニタリング結果

【COT】
1.2021年7月6日の議題とペーパー:EFSA の二酸化チタンの評価について

【ASA】
1. オンラインで子どもたちを守る:2021年第一四半期モニタリング結果
2. ASA 裁定

【BfR】
1. 恐怖と安心の間
2. エストラゴールとアネトールの生体活性化は DNA とヘモグロビンのよくある付加体につながる
3. PFAS 工業化学物質:一部の集団は時々健康影響に基づくガイダンス値を超過する
4. 動物実験を避けるために透明性を促す

【ANSES】
1. 市販されている植物:健康リスクは?
2. フランス海外領土(レユニオン島、グアドループ、マルティニーク)の家庭での殺虫剤使用
3. フランス領西インド諸島集団の食品からのクロルデコン暴露の特徴をより良く調べる

【FSAI】
1. キャッスルメイン生産地域の貝警告

【Ruokavirasto】
1. ザリガニシーズンが7月に始まる

【FDA】
1.FDAと USDA が共同でラテンアメリカの農産物輸出業者に FSMA 農産物安全規則に関するウェビナーを実施
2.FDA規格相互承認協定の対象となる食品の監視に関するガイダンスを発表する
3.1年が経過し、よりスマートな食品安全新時代の青写真は、FDAの公衆衛生上の使命に浸透している
4. 業界向けガイダンス:食品包装におけるリサイクルプラスチックの使用(化学的考察)
5. 警告文書

【EPA】
1. EPA は農薬安全性アウトリーチ支援のためカリフォルニア大学 Davis 校に600万ドルを与える

【USDA】
1. 遺伝子工学を用いて作った、通常の交配で達成可能な追加の改変をもつ植物の除外提案

【NIH】
1. ODS 更新-2021年夏

【FTC】
1. FTC は CBD 製品について立証されていない健康強調表示をした Kushly 社とそのオーナーに対する最終行政同意命令を承認

【CFIA】
1. 食品安全検査報告-残留化学物質及び微生物報告
2. リコール情報

【FSANZ】
1. 食品基準通知
2. 食品添加物として使われた場合の二酸化チタンのレビュー:データ募集

【APVMA】
1. 農業・獣医用化学物質規則変更案に意見募集

【香港政府ニュース】
1. 国家市場監督管理総局(SAMR)は中国本土の食品18品が違法であると通知をだした
2. 違反情報

【MFDS】
1. 日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. IAEA 福島原子力発電所汚染水国際検証、韓国側の専門家参加
3. 夏季には虫・カビ異物に注意してください!
4. プロテインバー、虚偽・誇大広告に注意してください!
5. プロバイオティクスの安全性評価、このようにします!
6. 食品として使用できないフグ卵を添加した食品の製造・販売、フグの丸薬・抽出液に抗がん効果虚偽広告など4業者摘発
7. アフラトキシン基準超過輸入ピーナッツ油回収措置
8. 飲食店で味付け肉など再使用すると営業停止
9. 食品 HACCP 認証申請急いでください!
10. 食肉簡便調理セット基準新設……業界製品開発支援
11.人体有害物質管理および高齢者などの給食支援強化
12. コンビニでの一食、賢く摂取してください!

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・ProMED-mail3件

別添

【COT】生涯より短い期間あるいは生涯にわたり変動する暴露に由来するリスクを評価するためのCOTの基本原則に関する声明