気候変動と食品安全への影響

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.13(2020.06.24)を発表した。

注目記事

【WHO】IARC:カビ毒の暴露とヒトがんリスク:疫学研究の系統的レビュー

 カビ毒の暴露とヒトの発がん、とくに原発性の肝臓がん、乳がんおよび頸がんとの関連性を調べた疫学研究の系統的レビュー。アフラトキシンと肝臓がんリスクの関連性について概要を提供するとともに、その他のゼアラレノン、フモニシンB1、デオキシニバレノール、オクラトキシンAなどの発がん性に関しても記されている。

※ポイント:カビ毒によるヒトでの発がん性に関する現時点での疫学情報が簡潔にまとめられています。ただし国際がん研究機関(IARC)はハザード同定を行う機関なので、本報告も発がんとの因果関係のみに着目しています。

【FAO】気候変動:食品安全に関する負担の中身を調べる

 気候変動により、将来的に予測される、また現在生じている食品安全への影響の両方に関する情報について、主に文献レビューをもとにまとめた報告書。食品安全に関係するハザードとして、以下の項目についてまとめている:食品媒介病原菌および寄生虫、青粉(algal blooms)、重金属(例:水系へのヒ素流出による汚染、海洋環境のメチル水銀)、農薬(例:昆虫の地域分布やライフサイクルの変化による影響)、カビ毒(例:気温上昇による汚染拡大)、新興問題および情報収集(マイクロプラスチック、新規食品生産システム、新規食品素材、地球工学、技術的進歩とデジタル化)。

※ポイント:気候変動と食品安全との関連性について具体的にまとめられています。かなり労力のかかった報告書でボリュームも多いので、各項目について詳細をご紹介できないのが残念です。関心のある方は、ぜひ本文を参考にしてください。

【MFDS】健康機能食品の異常事例管理システムを強化

 韓国食品医薬品安全処(MFDS)は、健康機能食品の摂取に起因する消費者被害予防のための健康機能食品異常事例報告、調査・分析および公表方法などの詳細手続きを用意して、6月4日に施行すると発表した。今回の健康機能食品法施行で、営業者は健康機能食品の摂取が原因と疑われる異常事例(消化不良、かゆみなど)について情報を得た場合、7日以内に異常事例を食品安全情報源に通知することになる。食品医薬品安全処は、報告を受けた異常事例と該当健康機能食品との因果関係を調査・分析し、その結果を食薬処ホームページに公開する。

【EC】食品の寄付を含む食品小売り活動のための食品安全管理システムのガイダンスを提供する委員会通知(2020/C199/01)

 ハザード分析を中心とする食品安全管理システム(FSMS)に関するEU要件の実施を促進し統一するための小売業向けのガイダンス。フードバンクなどの慈善団体での基本的食品衛生とHACCP基本原則に基づくセルフチェックシステムの実施についても記している。

(安全情報部第三室)

※編集部註:algal bloomsは淡水や海水で微細な藻類が急激に増殖して水面の色を変えるほどになった状態。藻類ブルーム、水の華。日本では主にその色からアオコや赤潮などに区別されることが多い。有害な藻類を含むブルームの場合、それを取り込んだ貝類の喫食によってヒトに被害を及ぼし得る。

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.13(2020.06.24)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2020/foodinfo202013c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. 農薬のハザードによるWHO推奨分類と分類のガイドライン、2019年版
2. 国際化学物質安全性計画(IPCS)
3. 国際がん研究機関(IARC)

【FAO】
1. 気候変動:食品安全に関する負担の中身を調べる
2. COVID-19と食料安全保障について
3. Codex

【EC】
1. FAQ:EUで食品廃棄を減らす
2. 食品の寄付を含む食品小売り活動のための食品安全管理システムのガイダンスを提供する委員会通知(2020/C199/01)
3. 査察報告書
4. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. 新規食品関連
2. 食品添加物関連
3. 香料グループ評価
4. 食品酵素関連
5. 食品と接触する物質関連
6. 農薬関連
7. 飼料添加物関連

【FSA】
1. EUと食品に関する消費者の見解
2. FSAはEU離脱後に消費者を守るための科学の役割の概要を示す

【PHE】
1. イングランドのアルコール起因率:更新

【ASA】
1. 我々は消費者をオンラインでより良く守るために詐欺広告警報システムを開始

【BfR】
1. 食品や飼料中の動物タンパク質のトレーサビリティと真正性のための革新的方法のさらなる開発と妥当性検証
2. 食品中のフランに関するQ&A
3.日焼け止めは保護するが健康リスクはあるか?

【ANSES】
1. 食品中ナノ物質:同定と消費者の健康リスク評価を改善するためのANSESの助言

【FSAI】
1. リコール情報
2. アイルランドにおけるジン及びジン製品の表示に関する新たなガイドライン

【Ruokavirasto】
1. ゼリー菓子の窒息リスク

【FDA】
1. COVID-19パンデミック中の食品表示変更についてのFDAの暫定的方針に関するQ & A
2. リコール情報
3. 警告文書

【NTP】
1. テクニカルレポート公表

【EPA】
1. EPAはAmazonとeBayにある種の農薬製品の販売を中止するよう命令
2. ジカンバ耐性作物に使うためのジカンバ使用登録

【CDC】
1. COVID-19予防のための安全な家庭用洗浄剤や殺菌剤の知識と実践-米国、2020年5月

【FTC】
1. COVID-19に関連した警告文書

【CFIA】
1. 食品安全検査報告2020年6月10日

【FSANZ】
1. 食品基準通知

【TGA】
1. 安全性警告

【香港政府ニュース】
1. 食品安全デー2020
2. 台湾政府より
3. 包装済みカニペースト付ロブスターのサンプルは食品表示規則に違反している
4. 違反情報

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 政府、COVID-19をきっかけに「食事文化改善」本格的に展開することに
3. おいしい食卓、賢いおうちごはん生活をしてください
4. 次のコロナ時代に備え、食品安全管理改善推進
5. 健康機能食品の異常事例管理システムを強化
6. コラーゲン一般食品、肌の保湿・弾力広告ダメ!
7. 餅、キムチにも栄養成分表示の拡大推進
8. 食品用器具・容器・包装のリサイクル基準を整備
9. 食品表示、よくある質問(FAQ)プラットフォームオープン
10. 畜水産物の抗菌剤の管理基準強化
11. オンラインオープンフォーラム、子供の高カフェイン飲料の規制議論
12. 食薬処、梅酒、クマイチゴ酒など果実酒製造業者を点検
13. 回収措置

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(EurekAlert)GM食品にネガティブな意見を持っている人は他の新食品技術にも反対する可能性が高い
・(EurekAlert)米国がん学会はがん予防のための食事と運動ガイドラインを更新
・(EurekAlert)画期的研究が食事後の炎症は健康な成人の間で劇的に異なることを示す
・(EurekAlert)アボカドオイルの82%が酸敗あるいは他のオイルが混ぜられている
・(EurekAlert)コロナウイルス:世界のフードシステムを強化する注意喚起
・(EurekAlert)英国成人の4人に1人はロックダウンの後飢餓と栄養不良の可能性のリスクがある