ニュージーランドの健康損失評価

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.17(2013.08.21)を発表した。

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【NZMH】ニュージーランドでの病気、ケガおよびリスク要因の影響が示される

 ニュージーランド保健省は、集団の健康損失を系統的に評価した「ニュージーランドにおける健康損失」を発表した。この研究は、病気、ケガおよびリスク因子全体による健康寿命の損失を2006年のデータを基準として推定したものである。

 健康寿命の損失の指標には、障害調整生命年(DALY)を使用した。健康寿命の損失の主な要因は、2006年の全体では、がん(17.5%)と心血管系疾患(17.5%)が多く、次いで精神疾患(11%)、筋骨格疾患(9%)、ケガ(8%)であった。ニュージーランド人は寿命が伸びたが、必ずしも健康に過ごせているわけではない。高齢化が進むに従って、どれだけ良く生きたかも重要になるとしている。

※ポイント:障害調整生命年(DALY)は、何らかの原因による健康障害によって、健康ならば本来得られるべき寿命がどのくらい損失されるかを数値で表したもので、早期の死亡により損失する余命年数と障害により損失する余命年数の和として算出されます。1DALYは、健康的に過ごせる1年の寿命の損失を意味しています。

 厚生行政において、どの健康問題について対策が必要かを判断する時には、どのくらいの国民がどの程度の被害にあっているかという「被害実態(Burden of Disease)」が1つの基準となります。その被害実態は、死者数や患者数を指標に考えられる場合が多いのが現状です。しかし、死亡のみを指標に被害実態を推定すると、死亡に至らない疾患やその原因については見落とされてしまいます。また患者数だけでも症状の重さや後遺症の有無がわかりません。そこで登場した指標が「DALY」です。

 DALYは、死亡の有無や死者数に加えて、死亡した年齢(疾患によりどのくらい寿命が短くなったか)、さらに障害による損失年数(健康的に過ごせる時間がどのくらい減ったか)も考慮して、被害実態を包括的に推定し数値で示しましょうというものです。障害による損失年数は障害の大きさによって変わるので、1週間の休養で治癒するような障害の場合には加算されるDALYの数は小さくなりますし、後遺症を負うなどの長期間続くような障害の場合には加算されるDALYは大きくなります。つまりDALYが大きいほど、推定される被害実態は深刻さが増して、対策の必要性が高いということになります。

 ニュージーランドの報告によると、全体では「がん」と「心血管系疾患」が健康寿命損失の主な要因になっています。しかしながら、より注目すべきなのは、15~44歳では要因のトップが「精神疾患(不安、抑鬱等)」であるということです。WHOでは「Global Burden of Disease」(GBD)プロジェクトを行っていて、各国におけるリスク因子と被害実態に関するDALYのデータが公表されています(http://www.healthmetricsandevaluation.org/gbd)。これを見ると、「精神疾患」が主な要因として上位に来るのはニュージーランドに限ったことではなく、日本を含む他の先進国の調査でも似たような傾向が報告されています。このように、DALYを指標に厚生行政上の問題を考えてみると、「がん」や「生活習慣病」だけでなく、「精神疾患」の対策がいかに重要であるかを理解できます。また日本では、若い女性のやせ願望により、高齢になったときの骨関連障害が大きくなる可能性が考えられます。

 ちなみに、要因を食事分野のみに限ると、欧米では「全体的に不健康な食事」「飽和脂肪の過剰摂取」「魚や野菜の不足」「アルコールの摂取」「微生物を原因とする胃腸炎」などが上位に来るとされています。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/index.html

食品安全情報(化学物質)No.17(2013.08.21)
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/2013/foodinfo201317c.pdf

今号の目次

【EC】
1. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. 食品添加物としてのポリビニルアルコール-ポリエチレングリコール結合コポリマーの安全性についての科学的意見
2. EFSAはフッ素及びモリブデンの適正摂取量を提案

【ANSES】
1. 発がん性化学物質の毒性学的参照値(TRVs)の設定方法に関するフランス環境職業健康安全局の意見

【DAFM】
1. アイルランド農業食糧海洋省が2012年全国残留物質計画の結果発表

【FDA】
1. リコール情報
2. 警告文書(2013年8月6、13日公表分)
3. FDAは輸入食品の監視を強化するために食品安全近代化法の下に提案された2つの規則について公聴会を開催する
4. 農業に役立つミツバチを助けるために新しい薬物を認可

【EPA】
1. 新しい農薬ラベルはミツバチやその他の授粉媒介者をより良く守るだろう

【USDA】
1. チリのチキンのリコール拡大

【TGA】
1. 安全性助言

【NZMH】
1. ニュージーランドでの病気、怪我及びリスク要因の影響が示される

【MFDS】
1. 説明資料(「日本放射能汚染水産物」に関連する噂に対して)
2. マラカイトグリーン(malachite green)検出“養殖ナマズ”販売・出荷禁止措置
3. 韓国国民カフェインの摂取量どれくらい?
4. 勃起不全治療薬の成分検出:食品販売者摘発
5. 政府合同の第一次計画の監視結果発表
6. 済州みかん米国輸出の道開かれる!

【HSA】
1. HSAは違法健康製品による重大な有害反応について警告

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から