土には種類がある/土壌型と土壌図

土には種類があるということは、漠然とは理解されているが、土壌型というもので分類が行われている。それぞれの土壌型の特徴を押さえれば、適地適作が可能になり、営農上も適切な対策を打つことができるようになる。土壌型の分布は、土壌図というもので把握することができる。

土の種類を知ることが農業と食材調達を変える

「土作り」という言葉は、農業界では人気の言葉です。この言葉から考えると、土は人の行為によって“作ることができる”ように思われるでしょう。これまで説明してきた窒素・リン酸・カリはじめさまざまな成分や腐植などを良好な状態にするという意味では“作る”こともできると言えます。

 しかし、土は数千万年とか数億年とかの長い時間をかけて出来たもので、昨日今日の人間の行いでどうこうすることができない部分も持っています。よく「土が良い」「土が悪い」という言い方も聞きますが、悪い土を良い土にすることができないということがあるのです。

 しかも、土の性質は良い/悪いの2種類などではなく、実に多様なものです。その土の多様な有様を知って、それぞれの種類の土について適切な使い方、働きかけ方を行うことがこれからの農業や食材調達の仕事を変えるものになります。

土壌型を無視して頑張るのは努力のムダ

 とは言え、「土は確かにいろいろな場所で違うような気もするけれども、土の種類ということは考えたこともなかった」と思われるのではないでしょうか。

 しかし、農家ではなくても、畑に行ってイモを掘るなりしたときに、表面の土とそれより深いところの土とでは、色や手触りが違うと経験的に知っているということはあるでしょう。

 また、鉄道で旅行したり、長距離ドライブをしたときに、普段見たことのない切り通しや崖の景色を見て、さまざまな色の土を見たことがあるでしょう。

 そのように、私たちは普段意識してはいないものの、漠然と土には種類があるということは知っているものです。

 そのさまざまな土をきちんと分類して、それぞれの特徴をつかみ、そして日本のあるいは世界のどこにどんな種類の土が分布しているということを知れば、この産地の野菜はどんな特徴になるとか、この地域ではこういう作物が作りやすいとかということがわかります。つまり、農業生産を行うなり農作物を調達をするなりを行う上で、大きな力になるのです。

 逆に、これを知ろうとせずに、「どうしてもここでレタスを作る」「何がなんでもここで米を作ってもらう」と土の性質を無視して頑張るということは、努力のムダということにもなります。

日本の土壌は酸性褐色森林土

 ここで述べる土壌の種類は土壌型と称します。

 たとえば、まず日本の土の土壌型を見ていきましょう。日本の土は、土壌型の分類では褐色森林土という仲間に入ります。これは世界の温帯地域にはかなり分布しています。

 ただし、日本の褐色森林土は世界のそれとは異なっています。とくにヨーロッパの褐色森林土とは違います。これまでにも述べているように、日本は非常に降水の多い地域で、その影響を受けて世界の他の地域とは異なる性質を示す土壌になっているのです。

 日本はヨーロッパと同様に樹木が豊富に繁茂していることから、その葉や茎などに含まれた豊富な養分が土に供給されます。ところが、日本の多雨と気温の高さから、せっかく供給された養分も激しく分解してしまい、土壌中から流れ去ってしまうという現象が起きます。

 そのため、大事なカルシウムやマグネシウムをはじめ多くの成分がほとんどなくなった状態の土壌となり、同じ褐色森林土には分類されても、酸性が強いのが特徴です。この日本の土壌を、酸性褐色森林土と呼びます。

海外と日本の農業を比べるのにも役立つ土壌図

 この酸性褐色森林土を持つ日本では、ヨーロッパとは違って、野菜やコムギを作ろうとしてもそのままでは出来ず、不足するカルシウムやマグネシウム、その他多くの種類の微量要素を施用してやることが必要になります。

 さらに、日本列島に分布する土の種類は大陸に分布するそれとは比べものにならないほど多く、日本の学界の方法では16種類に分類しています。

 このように、海外農業と我が国の農業を比べる場面でも、大いに参考になるのが土壌型です。

 世界のそれぞれの地域の土壌型というものは、「世界の土壌図」というものを見るとわかります。また、日本国内の土壌型は「日本の土壌図」を見るとわかります。

About 関祐二 101 Articles
農業コンサルタント せき・ゆうじ 1953年静岡県生まれ。東京農業大学在学中に実践的な土壌学に触れる。75年に就農し、営農と他の農家との交流を続ける中、実際の農業現場に土壌・肥料の知識が不足していることを痛感。民間発で実践的な農業技術を伝えるため、84年から農業コンサルタントを始める。現在、国内と海外の農家、食品メーカー、資材メーカー等に技術指導を行い、世界中の土壌と栽培の現場に精通している。