家畜飼料の安全確保に犬が活躍

No.24(2025.11.26)

イメージ:ノボロギクの仲間(写真:Roketjack)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。欧州食品安全機関はΔ8-THCをΔ9と合算して評価可能と判断し規制検討へ。BfRは訓練を受けた犬が飼料中の有毒Senecio植物を嗅ぎ分け検査に有用と報告した。

注目記事

【EFSA】Δ8-テトラヒドロカンナビノール(Δ8-THC)の健康影響に基づく指標値の導出及び食品に含まれる存在量

 欧州食品安全機関(EFSA)は、食品に含まれるΔ8-THCについて健康影響に基づく指標値(HBGV)の導出、ヘンプ及びヘンプ由来製品におけるΔ8-THCの含有実態、Δ8-THCとΔ9-THCの共存に関する科学的意見を欧州委員会(EC)より要請された。2015年の評価でEFSAは、ヒトの中枢神経系への有害影響に基づきΔ9-THCの急性参照用量(ARfD)を1μg/kg体重と設定している。

 今回の評価でEFSAは、Δ8-THCとΔ9-THCによるヒトへの影響と作用機序の類似性を考慮して、Δ9-THCのARfDをΔ8-THCとΔ9-THCの合算に対するグループARfDと見なすことが可能であると判断した。さらにEFSAへ提出された食品の検査データによると、Δ8-THCの検出は数サンプルのみであった。天然に含まれるΔ9-THCに対するΔ8-THCの割合は1未満と推定されるが、Δ8-THCが陽性だったサンプルの多くは1を上回っており、当該サンプルへの半合成Δ8-THCの添加、加工工程でのΔ8-THCの形成、天然Δ8-THCの強化のいずれかの可能性が示唆された。

※ポイント:EUではヘンプ種子、挽いたヘンプ種子、ヘンプ種子オイルに含まれるΔ9-THCについて最大残留基準値が設定されています。今回の評価結果を受けて、ECと加盟国はΔ8-THCについても規制措置が必要であるか検討するとのことです。さらにΔ9-THCについて、前回(2015年)の評価以降に発表された新たな研究報告が入手可能であることから、EFSAは再評価が必要であると勧告しています。

【BfR】科学的嗅覚の持ち主:イヌは動物用飼料に含まれる有毒植物を特定するのに役立つ

 ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は、飼料用の干し草に含まれるSenecio属植物を嗅ぎ分ける特別な訓練を受けたイヌに関する研究について発表した。

 Senecio属は世界中に分布する多くの種を含む植物属であるが、二次代謝産物としてピロリジジンアルカロイド(PA)を含んでいる。PAを家畜が摂取すると比較的少量でも肝臓障害を引き起こす可能性があり、大量に摂取すると致死的になる場合がある。

 家畜は、牧草地であれば苦みのあるPA含有植物を避けるが、干し草やサイレージに混入している場合には一緒に摂取してしまう。しかし、現在まで干し草に含まれるPAを確実に検出できる簡易な方法はない。本研究プロジェクトでは、イヌを訓練することで、匂いによってSenecio属のPA含有植物のハナノボロギクとその他の植物を見分けることができることが確認された。将来、特別に訓練を受けたイヌが飼料用干し草のPA汚染の検査やターゲットサンプリングに役立つ可能性がある。

※ポイント:イヌの優れた嗅覚を活かして警察犬や救助犬、麻薬探知犬などが活躍していますが、飼料の安全性確保においても活躍するかもしれないという話にとても驚いたのでご紹介しました。飼料に混入するSenecio属のうちとくに重要なのがハナノボロギクとのことで、今後実施される最終試験は、圧縮された丸ごとの干し草ロールに含まれる少量のハナノボロギク検出だそうです。

(注目記事のまとめ:安全情報部第三室)

目次

【WHO】

1. 公衆衛生のための食用油脂のビタミンA及びDの強化に関するWHOガイドライン

【FAO】1. Codex

【EC】

1. 査察報告書

2. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【ECHA】

1. SEAC意見書案で評価されるPFAS用途区分表案

【EFSA】

1. Δ8-テトラヒドロカンナビノール(Δ8-THC)の健康影響に基づく指標値の導出及び食品に含まれる存在量

2. 農薬の規制上の環境リスク評価における機序的影響モデルに対するFAIR原則の解釈に関するEFSAの声明

3. EFSA第28回科学討論会「環境リスク評価における農薬の間接的影響の評価」の結果(ベルギー、ブリュッセル、2025年6月18日)

4. 食品添加物関連

5. 食品酵素関連

6. 新規食品関連

7. 健康強調表示関連

8. 遺伝子組換え関連

9. 農薬関連

【FSA】

1. 精密育種生物:申請ガイダンス(販売認可申請)

【FSS】

1. 魚類の化学汚染物質-文献レビュー

【DEFRA】

1. 精密育種植物:環境への放出及び販売

【COT】

1. マリンバイオトキシンに関連する英国海域で収穫された二枚貝(貝類)の消費によるヒトの健康へのリスクに関する助言の声明

【BfR】

1. 科学的嗅覚の持ち主:イヌは動物用飼料に含まれる有毒植物を特定するのに役立つ

干し草に含まれるSenecio属植物(Senecio vernalis(ハナノボロギク)など)は家畜に健康リスクをもたらす

2. フードサプリメントの意味と無意味

ドイツ連邦健康衛生雑誌の特集号では、ビタミン、ミネラル、その他の物質のベネフィット、リスク、認識に焦点を当てている

【FDA】

1. 鉛含有量が高いため、FDAの公衆衛生警告にシナモン製品が追加された

2. リコール情報

【EPA】

1. EPAはPFAS報告要件の実用性と実施可能性を向上させ、規制上の負担を軽減するための改正案を発表する

2. EPAはパラコートの揮発可能性に関する最新のレビューを公表し、製造業者に追加データを要求する予定である

【FSANZ】

1. 食品基準通知

【APVMA】

1. 特定のジメトエート製品の一時停止

【TGA】

1. TGAはコンプライアンス向上を支援するため、ソーシャルメディア広告に関するガイダンスを更新する

【NSW】

1. 意見募集:オンラインで販売される食品の情報要件についての政策ガイドライン

【MPI】

1. ニュージーランドにおける動植物用抗生物質の販売は引き続き減少傾向である

【香港政府ニュース】1. 違反情報

【MFDS】

1. 日本産輸入食品の放射能検査の結果

2. 国民と共に食品医薬品安全の基準を作ります

3. 食品医薬品試験・検査成績書、いつどこでも政府24で発行

4. 食薬処、ナトリウム・糖類低減製品の開発を支援

5. 回収措置

【SFA】

1. SFAは未来の食品と食品安全の飛躍的進歩を推進するため4,200万ドルを拠出する2. Forum Replies:寄付された食品の安全性確保における共同責任

【その他】

・論文紹介(BfR)2件

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.24(2025.11.26)
https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2025/foodinfo202524c.pdf