糖尿病の流行に人工甘味料が寄与との主張には難あり

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.20(2014.10.01)を発表した。

注目記事

【NHS】人工甘味料は糖尿病リスクを上げるか?

 Natureオンライン版に発表された、イスラエルWeizmann科学研究所のEran Elinavらのチームによる研究発表をもとに、Guardian が「人工甘味料は糖尿病を促進するかもしれないと科学者が主張する」と報道した。これに対して英国国営保険サービス(NHS)は、この研究が何を示しているのかを科学的視点で説明した上で、この研究をもとに糖尿病の流行に人工甘味料が寄与していると主張するのはあまりにも早すぎると述べた。

※ポイント:NHSは、報道に誤りや誤解をまねくような内容があった場合に、消費者が正しく理解できるように、報道のもととなった研究の内容やそれをどのよう解釈すればよいのかを説明した記事を公表している。

 このEran Elinavらの研究は、各国で注目され、NHSだけでなく多くの科学者がこの研究結果をどのように解釈すべきなのかコメントを発表している。それらのコメントでほぼ共通しているのは、ヒトではなくマウス実験の結果で結論していることに注意すべきであること、健常人で投与試験をしているが7人のみであり結論を出すには少なすぎること、実験で変化が見られたのはサッカリンなのに結論を人工甘味料とひとくくりにするのは間違いであることなどを指摘している点である。

【USDA】USDAは2013年オレゴン州での遺伝子組換え小麦の検出に関する調査の終了と知見を発表

 2013年5月にオレゴン州の農場1カ所で遺伝子組換え(GE)小麦が自生していたことが発見されて以降、米国農務省動物衛生検査局(USDA APHIS)が詳細な調査を実施しており、その結果が公表された。さらに、2014年7月にモンタナ州でもGE小麦が確認されたため、その調査結果も一緒に報告している。両州で発見されたGE小麦は別品種である。

※ポイント:これは、日本でも一部の米国小麦の販売停止に発展した問題でした。調査報告によると、オレゴン州の事例は孤発事例であることは確認されましたが、なぜ自生していたのか原因は結局わからなかったようです。モンタナ州の事例は今年になって新たに報告されたものです。

【ANSES】ANSESの食品摂取データがオープンデータとして利用可能になった

 フランス食品・環境・労働衛生安全庁(ANSES)は、7年ごとに実施している全国食品摂取調査の第二回「INCA2」で入手した食品摂取データに関する完全報告書を発表するとともに、調査データをオープンデータとして全て公開した。

※ポイント:食品摂取量調査の全データをオープンにすることで、多くの研究者が直接利用できるようにし、栄養や公衆衛生の分野でのアウトプットを広げることが目的です。

【FDA】連邦保安官は南カリフォルニアの工場から植物性物質kratomを押収

 消費者の公衆衛生上のリスクとなり濫用の可能性があるとして、米国食品医薬品局(FDA)の要請で、カリフォルニアのRosefield Management社からkratom(Mitragyna speciosa)が押収された(注:日本語ではクラトン、クラトムと呼ばれている)。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html

食品安全情報(化学物質)No.20(2014.10.01)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2014/foodinfo201420c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. 世界心臓デー2014:減塩は命を救う

【EC】
1. ECHI-欧州コア健康指標
2. 食品獣医局(FVO)査察報告書:キプロス、英国、イタリア、インド、アイルランド、スペイン、ルーマニア
3. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. EFSA科学会議N°21:複数化合物への複合暴露のヒト及び生態リスク評価のハーモナイゼーション
2. EFSAの科学的意見をより透明に
3. 規制対象製品の申請に電子申請導入
4. EFSAはGMガイダンス文書案に関する意見を募集する

【FSA】
1. 食品とあなた 第1および2回:「安全に良く食べる」報告書発表
2. FSAの年次科学報告書発表
3. FSA戦略2015-20:我々は成功に向かっているか?

【HSE】
1. 食品中残留農薬に関する専門委員会(PRiF):最新モニタリング結果

【NHS】
1. 人工甘味料は糖尿病リスクを上げるか?
2. Behind the headlines:チョークベリー抽出物は「膵臓がんの化学療法の効果を強める」
3. Behind the headlines:カレーのスパイスは脳細胞の修復を促進するか?
4. Behind the headlines:チェリージュースが痛風の治療用にと宣伝される

【ASA】
1. 「無料」お試しは高くつく

【ANSES】
1. ANSESの食品摂取データがオープンデータとして利用可能になった

【FSAI】
1. ハンター向け狩猟肉供給ガイド

【FDA】
1. FDAは全国製品安全性規則を履行するための共同契約を発表
2. FDAはFSMAの提案をより柔軟で標的を絞ったものにするための提案を求める
3. 連邦保安官は南カリフォルニアの工場から植物性物質kratomを押収
4. 警告文書
5. 食品施設の隔年登録更新

【EPA】
1. EPAは歯科医からの水銀排出削減基準を提案

【USDA】
1. APHISは3つの遺伝子組換え植物の決定記録(ROD)を発表
2. USDAは2013年オレゴン州での遺伝子組換え小麦の検出に関する調査の終了と知見を発表

【CPSC】
1. CPSCは子どもやティーンエージャーを守るため、強力磁石セットの安全性基準を強化

【FSANZ】
1. 食品基準通知

【TGA】
1. 消費者が「副作用」を報告するのを助ける新しいウェブサイト

【香港政府ニュース】
1. 地溝油関連記事
2. 違法薬物販売で女性逮捕
3. 痩身用製品警告
4. 豆から高濃度の農薬

【MFDS】
1. 日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 説明資料(「放射能漏れ福島の日本酒25トン流通」の記事に関連して)
3. 日本産水産物関連の日本側の回答について情報公開
4. 空き瓶に何も入れないでください
5. 加工食品に使用されている糖類の摂取量が増加する傾向

【AVA】
1. 「汚染油」による台湾産Chi Mei(奇美饺子)及び Sheng Hsiang Jen(盛香珍)食品の回収

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(EurekAlert)最近の食品偽装を受けてウマ肉詐欺を根絶する
・(米国癌学会)AACRがん進歩報告