2019年食の10大ニュース[5]

2019年は、明治以降初の天皇生前譲位が行われた年になった。その意味で、新しい時代への期待、新天皇即位へのお祝いムードのあふれた年とも言えた。半面、ここ数年見舞われ続ける自然災害に苦しめられた年でもあった。食をめぐる出来事も、暗いものが目立ったようだ。

  1. 異常気象による自然災害の多発
  2. 消費税増税
  3. フードロス対策が広がる
  4. コンビニエンスストアで営業時間短縮の動き強まる
  5. 多角化する食品スーパーの生き残り策
  6. 時短ニーズを受けて冷凍食品好調
  7. 深刻な人手不足への対策拡大
  8. EUとのEPA(経済連携協定)発効により乳製品、ワイン好調
  9. 飲食店倒産、過去最高を記録か
  10. 拡大と進化を見せる“脱プラ”対策

1. 異常気象による自然災害の多発

 大雨、台風による被害は8月以降に集中した。8月初旬に四国、中国地方から北海道へと抜けた台風10号、8月後半の九州北部への集中豪雨、9月初旬の東海、関東直撃の台風15号、10月初旬に九州から列島を縦断し東北へ抜けた台風19号。いずれも甚大な被害をもたらした。農林水産業だけでも3,800億円以上の被害。その年の収穫被害だけでなく、翌年の作付けにも大きな影響を与えた。

2. 消費税増税

 10月1日より、消費税が8%から10%に。品目による軽減税率(8%据え置き)の導入も。日常生活に必需な食品は据え置きだが、酒などの嗜好品や外食は10%に。外食店でのテイクアウトは8%品目に据え置き。

 外食各社はテイクアウトと店内品の価格差への対応に頭を痛める。企業により同一価格にしたりメニューにより変えたりとさまざま。スーパーマーケットやコンビニでもイートインはある。さらにキャッシュレス事業による軽減策などもあり、複雑極まりない。

 消費者の認知度もバラバラ。3カ月を経過した中では、増税の目的である消費活性化とは逆の動きを見せている模様。

3. フードロス対策が広がる

 年間約600万tの食べられる食品が、日本で廃棄されている。2019年5月の「食品ロス削減推進法」成立を受け、製造日から賞味期限の3分の1を経過した商品を廃棄するという日本独自の「3分の1ルール」の見直しや、技術革新により賞味期限、消費期限の延長などにメーカーと小売りが共同で進めたりしている。

 またローソンや日本ケンタッキー・フライド・チキンなどがフードバンクに食品を寄付する動きも出ている。

4. コンビニエンスストアで営業時間短縮の動き強まる

 2019年2月、東大阪にあるセブン-イレブンのフランチャイズ店オーナーが、人手不足により本部に無断で営業時間を5時間短縮した。本部は契約違反として1700万円の違約金と契約解除を求めた。このことがマスコミで取り上げられ、コンビニの長時間(24時間も含め)営業の是非が社会問題化した。多くのコンビニオーナーが時間短縮を願いながらも本部との関係で表立って動けない、という実情だった。

 大手3社は、その後時間短縮実験に取り組んでいる。また、政府部内でもコンビニの営業時間への見直しを取り上げることとなった。コンビニオーナーの犠牲とは言わないが、相当の頑張りで保たれている長時間営業、お客と店の本当に実りのある関係って何なんだろうと考えてみよう。

5. 多角化する食品スーパーの生き残り策

 食品の大半が軽減税率対象となったことなどから、食品スーパーの苦難はちょっぴり軽減。しかしドラッグやコンビニとの戦いは激化している。規模拡大が生き残るための大きな施策。

 中京地区の雄バローホールディングスはM&Aのほか、EDLP(毎日安売り)店舗への転換など新型店舗への転換を続ける。中四国・九州の雄イズミでは、地域のスーパーと資本業務提携をしたり中小スーパーの子会社化を進めている。2018年12月末のアークス(北海道)、バローHD、中国・四国のリテールパートナーズ3社による「新日本スーパーマーケット同盟」の立ち上げは、地域スーパーの再編の動きを加速させ、力のある地域スーパーの新たな施策が展開されている。

6. 時短ニーズを受けて冷凍食品好調

 調理労働に時間をかけたくないという“時短ニーズ”の強まりを受け、冷凍食品市場が拡大している。日本冷凍食品協会によれば2018年に3188億円となり、10年前から約3割伸びている。国民一人当たりの消費量は年間23㎏に達する。

 協会調査によれば女性で夕食のための冷食を購入する人が57%に上る。最近伸びているものは、チャーハン、ラーメン類など、単品でお腹が膨れるものだという。

7. 深刻な人手不足への対策拡大

 ある統計推計によれば、15〜60歳の労働人口は向こう30年ほど減少し続けるという。人手不足が恒常化するということだ。この人手不足に対応し、スーパーではセルフレジの導入が拡大している。また、コンビニでもセブン-イレブンが「レジなし店舗」に取り組んだり、スマホ決済を導入するチェーンも出ている(セブン-イレブン、ファミリーマート)。またファミリーマートは「Amazon Hub ロッカー」を店舗に設置し、従業員の作業を軽減する試みに取り組んでいる。

 コンビニでは店舗の電子武装化が進んでいるが、長引く人手不足対策の武器にしたい模様。

8. EUとのEPA(経済連携協定)発効により乳製品、ワイン好調

 2019年2月1日、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が発効した。これにより、欧州産ワインやチーズなどの食品を中心に関税が下がった。これを商機ととらえ、セブン&アイ・ホールディングスやイオンがワインを大量に値下げした。その後も価格を下げたまま営業を続けている。全体でも欧州産ワインは、チリやアルゼンチンを抑える伸びを見せている。また、2018年まで国産の生産量が減っても輸入物が増え消費量全体は増え続けていたチーズも、昨年は大幅に輸入量が増えた模様だ。

9. 飲食店倒産、過去最高を記録か

 2019年12月23日発表の帝国データバンクの調査によれば、2019年1月〜11月の飲食店の倒産件数は668件で、通年で過去最多だった2017年(707件)を上回る勢いであることがわかった。業種的には「酒場・ビヤホール」(144件)、「西洋料理店」(110件)で過去最高を更新。負債額別では、5000万円以下の小規模倒産が84.4%、5000万円以上が15.6%。節約志向の強まりや10月1日の消費税率の引き上げとそれに伴う軽減税率制度により、消費者の内食会期が強まっていることが大きな要因のようだ。

 人手不足、経営者の高齢化、後継者問題、改正健康増進法など、2020年、飲食業を取り巻く環境は一層厳しくなる。

10. 拡大と進化を見せる“脱プラ”対策

 昨年12月すかいらーくホールディングスがプラスチック製ストローの提供を主力13ブランドでやめると発表し、2019年に入って着々と進めている。こうした脱プラの動きは外食業界だけでなくコンビニなど周辺業界にも広がっている。さらには、スーパーがプラスチックレジ袋の有償化を決めたり、生協がプララベルのないペットボトル入り飲料水を販売したりという動きまで出ている。

 地球環境の改善まで一気につながらなくとも、これ以上悪くしないという歯止めになれば……。


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About 石川秀憲 7 Articles
フードジャーナリスト いしかわ・ひでのり 大学卒業後、流通専門の出版社「商業界」に入社。「飲食店経営」をはじめ数誌の編集長、新規事業部長、出版部長等を歴任の後、2005年退社。その後、食に関わる講演・執筆活動を続ける。現在、名古屋文理大学フードビジネス学科(教授2007~2016年)、戸板女子短期大学(非常勤講師2006~2016年)、金城学院大学(2008~2013年非常勤講師)等の教育機関で、食品経済関係、食品流通関係の講座を担当してきた。ほかに、水産庁の「おさかな語り部」を務める。