2012年食の10大ニュース[3]

  1. 進化し続ける「在宅介護食」
  2. 味の素がアミノ酸で「がん診断」
  3. 日本人の“肉食化”進む
  4. コンビニエンスストア国内5万店舗突破
  5. 「ガリガリ君」が相次ぐバリエーション化
  6. 「塩麹」ブームが日本を大席巻
  7. 気が付けば急増している「東京チカラめし」
  8. 「マテ茶」大ヒットに続け!
  9. コーラなのにトクホ!キリン「メッツ コーラ」の大成功
  10. 成熟した即席麺市場を変えた「マルちゃん正麺」

1. 進化し続ける「在宅介護食」

 超高齢化の急激な進行に伴い、高齢者介護の対策が急務です。

 私事で恐縮ですが、数年前に他界した母親は約6年間を神奈川県の療養型病院に入院していました。重度の脳梗塞の発作で寝たきりとなり、すぐに意思の疎通もできない状態になりました。当然食事などは不可能です。鼻からの経管栄養でしたが、医師に勧められて「胃ろう」手術を施しました。

 胃ろうにしたことが最適だったか、という根本的な問題はここでは言及しませんが、介護において“食”に関する事柄は最大の課題ということは知っています。とくに重要なのは介護食の問題です。幸いにも筆者はその苦労は経験しませんでしたが、在宅介護における食事は家族にかなりの負担をかけるものです。

 聞くところでは、介護が必要な人の多くは「噛む力が不足」しているために、飲み込むだけでいい料理を作る必要があると言います。ミキサーにかける、すり鉢でする、裏ごしをするなどの手間が余計にかかり、1食あたり2時間ほどを要するというのです。

 さらに“飲み込む力が低下”している人のためには、とろみをつけたり、ゼリー状に固めるなどの“もうひと手間”がかかります。そんなに手間がかかるのに、見た目が悪くて食欲を湧かせない、食事の満足感が得られないというケースが多く、介護をする家族を嘆かせていました。

 そうしたことに対していち早く目をつけたのが、大塚製薬グループで経腸栄養剤などの専門メーカー、イーエヌ大塚製薬でした。“形はそのままで軟らかさを100分の1~1000分の1”にした摂食回復支援食「あいーと」を2010年10月に発売したのです。それまでも介護食は徐々にではありますがマーケットを広げてきましたが、この画期的な商品に刺激されて、“食べやすさ”を主眼としたものに一挙に移行していきました。

 2012年6月にはさらに進化した商品が発売されました。森永乳業グループのクリニコの「まとめるeasy」です。「あいーと」の場合は料理そのものでしたが、「まとめるeasy」は家庭で調理しミキサーにかければ常温でも素早く固められる“固形化補助粉末”です。加熱が不要なので生もの料理も可能です。

 マーケットの拡大に合わせて、今後もさまざまな商品が登場することでしょう。

2. 味の素がアミノ酸で「がん診断」

 味の素が開発した「アミノインデックス」は、人体のアミノ酸バランスを調べて「がん」の早期発見に役立てようという試みです。味の素と言ったらアミノ酸、アミノ酸と言ったら味の素ということで、医療分野への進出でも“最大の売り”を活用したのではないと勘繰りますが、たぶんそうでしょう。

 なんでも、人体の血液中には20種類のアミノ酸が含まれているとか。病気や体調不良となると、特定のアミノ酸が増減する。だから、その増減の様子を見ればその人の病気や体調がわかるらしいのです。

 そこで味の素は、健康な人とがん患者の血中アミノ酸を調べて、がんのスクリーニングとして使えるアミノ酸解析サービスを開発しました。それが「アミノインデックス」です。

 現在は一部の医療機関で、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がんのスクリーニングとして使われているということです。

 食品業界の一方で医療業界も活動の場としている筆者としては、両業界を“股にかける”ビジネスは注目せざるを得ません。なにより、がんの早期発見はさまざまな企業、とくにベンチャーが新しい手法を繰り出してしのぎを削っている成長分野ですから、いい目の付けどころだと思います。

3. 日本人の“肉食化”進む

 これが「肉食系進む」であれば、肉食系女子が草食系男子を駆逐している場面を思い浮かべるところですが、おふざけはこのくらいにして真面目な話。

 厚生労働省は2012年12月6日に公表した2011年の「国民健康・栄養調査」で、日本人の成人が1日に食べる野菜類と果物類、魚介類の量が2001年に比べて減少し、一方、肉類が増えて“肉食化”が進んでいることがわかったそうです。

 調査は2011年11月、無作為に抽出した3412世帯を対象に実施。その結果、成人の生鮮食品の摂取量(平均値)は野菜類277.4g、果物類110.3g、魚介類78.6gで10年前に比べて18.4~24.3g減ったということです。

 その一方で、肉類だけが6.7g増の80.7gとなったということで、厚労省はその理由に「魚介類に比べ調理が手軽なことや、外食の機会が増えていることなどが背景として考えられる」と分析しています。

 たしかに魚に関して言えば、「料理するのが面倒」「骨が面倒くさい」という意見をよく聞きます。料理の苦手な人が敬遠するのは仕方がないところがあるでしょう。

 では外食、とくに市販の弁当で肉類のおかずが多いのはどういうことでしょうか。製造販売側が調理の手間を省くためなんでしょうか。いやいや、客が求めているのに応えた結果だと思います。要するに日本人の味覚の欧米化が進んでいるということですね。日本人は肉が好きなのです。

4. コンビニエンスストア国内5万店舗突破

 国内市場ではコンビニエンスストア(CVS)の店舗数の飽和状態の目安は5万店と言われているそうですが、2012年11月末時点でそのハードルを越えました。前月10月末比で見ると、271店舗増。1カ月で300店近く増えたわけです。大手CVSチェーンに絞って言えば、11月末の店舗数は「セブン-イレブン」1万1783店、「ローソン」1万1067店、「ファミリーマート」9201店となっています。

 東京新聞の記事(2012年12月11日付け)によれば、この急激な店舗数増加の理由として「惣菜や生鮮食品の品揃えの充実に加え、東日本大震災でライフラインとしての役割を発揮したことで、若い男性中心だった顧客層を女性や高齢者に広げることに成功」したことを挙げています。

 たしかに、最近CVSに行くと、必ずと言っていいほど高齢者客の姿を見かけます。以前では見られなかった光景です。小さなポーションの惣菜や生鮮食品が“食の細い”老人、あるいは独居老人に好まれているという状況というわけです。反対に、そうした需要に対応し、小ポーションの商品をCVS側が積極的に商品化しているというベクトルも見られます。

5. 「ガリガリ君」が相次ぐバリエーション化

 2012年の夏もアイスキャンディー「ガリガリ君」にはたいへんお世話になりました。家の冷蔵庫には「ガリガリ君」の「ソーダ」を常備し、毎日「ガリガリ」していましたが、あるとき、スーパーの冷凍ケースで「梨」を発見したときは驚きました。すぐに購入し、店を出るのももどかしく包装をはがしてかぶりつきました。うまい! 以来、家の冷蔵庫には2種類のガリガリ君が常備されるようになりました。

 そんなガリガリ君関係のニュースが9月の始めにマスコミを賑わせました。9月4日の「リッチコーンポタージュ」の新発売です。

 筆者が毎日聴いているAMラジオでも、さまざまな番組で話題に上っていました。中でもニッポン放送ではコーンポタージュ味の試食で大盛り上がりでした。筆者もCVSに走りましたが時すでに遅かったのです。何軒ものCVSやスーパーで売り切れており、その上予測の200%以上の販売数量になったため、発売から3日で販売休止状態ということで、今に至るまで試食できていません。なんとも残念です。2013年春の発売再開を待つしかありません。

 さらに、年の瀬も押し迫った12月18日、新しいガリガリ君が発売されました。「あずき大福」です。

 ガリガリ君はいったい何種類あるのかという疑問が湧きました。そこでガリガリ君のメーカー、赤城乳業のWebサイトをのぞいたところ、フレーバー別に10種類以上あることがわかりました。その他、ミニサイズ7本詰め合わせの「マルチ」には2種類のフレーバーを合わせた商品もあります。

 仔細に検証してみたところ、「リッチコーンポタージュ」の発売以降、9月25日「ぶどうサワー」、10月16日「プリン」、11月13日「白いサワー」、と毎月のように新商品を出しています。

 その最新が「あずき大福」。次にはどんなものを繰り出してくるのか楽しみです。

6. 「塩麹」ブームが日本を大席巻

 2011年秋、筆者はあるフリーペーパーで「塩きのこ」を紹介しました。長野在住の知り合いの料理研究家に頼んで、目新しいメニューを考えてもらったところ、「塩きのこと塩麹、どっちがいい」と聞かれました。どちらも耳慣れないものでしたが、料理に不慣れな若い女性に提案する美容によい料理ということで、ゆでたさまざまなきのこを粗熱が残る状態で塩をまぶすだけの簡単なレシピである塩きのこに決めました。塩麹はその時点ではまだ「なに? それ」的な印象しか持てず、スルーしました。

 2012年に入ってから塩麹のブームには目を見張らされました。遅ればせながら、ある企業の広報誌に持っている健康コラムで扱おうと思っています。ダイエットに効果的な塩麹を使った野菜メニューということで。

7. 気が付けば急増している「東京チカラめし」

 仕事の合間に手っ取り早く“めし”を済ませる。貧乏暇なしの男性ビジネスマンにとっては、立ち食いそばと牛丼屋はホームポジションです。フリーランスの筆者も昼時に繁華街を歩けば、自然と牛丼屋を目で探しています。

 今年に入り、馴染みの牛丼チェーンとは違う見慣れぬ店が目に付き始めました。「東京チカラめし」という名で、メインメニューは「焼き牛丼」。で、早速試しました。個人的な感想ですが、味付けが甘すぎて口に合いませんでした。

 しかし、調べてみると出店のスピードはものすごい。2011年6月に第1号店をオープンした後、12月末までに30号店、2012年11月末まで120号店まで拡大しました。

 筆者と言えば、再び足を向けることなく昔から馴染んだ店を利用しています。

8. 「マテ茶」大ヒットに続け!

 2011年に日経トレンディのヒット商品にランクインした韓国発の飲む赤いお酢「ホンチョ」のメーカー、デサンジャパンの担当者にこの年末、話を聞きました。

――「ホンチョ」は相変わらずで?

「全国の量販店さんにはほぼ行き渡りました。安定基調に入っています。今力を入れているのは『とうもろこしひげ茶』と『コーン茶』。それも煮出し・水出しタイプです」

――お茶と言えば、今年のお茶関連の大ヒット商品は「マテ茶」でしたね。韓国ならではのとうもろこしひげ茶とコーン茶の売れ行きはいかがでしたか?

「順調に伸びています。来年はさらに力を入れて拡販していく予定です」

 さまざまな原料を使ったお茶マーケットは今後さらに成長を遂げていく可能性が高そうだ。

9. コーラなのにトクホ!キリン「メッツ コーラ」の大成功

 まさかコーラでトクホとは!

 と食品業界を仰天させたのが、2012年4月に新発売されたキリンビバレッジの「メッツ コーラ」。

 同時に消費者も飛びついた。発売後2週間で2012年末までの販売目標である100万ケース(1ケースあたり24本)を達成し、発売2カ月で200万ケースを出荷したといいます。まさに大ヒットです。

「コーラなのにトクホ!」

 このイメージが消費者に強く訴求したのです。

 健康食品業界とのつきあいが長い筆者にとって、トクホでこんなにヒットを飛ばした商品は見たことがありません。そこで考えました。なぜヒットしたのか?――つまりこういうことではないかと思います。「おいしい」だけではもの足りない、「体にいい」だけでも触手は伸びない。「おいしくて体にいい」からこそ試してみる価値がある。トクホコーラはそうしたニーズをがっちりつかんだのでしょう。

 同業他社は指をくわえて見ていませんでした。2012年11月13日、“トクホのペプシ”「ペプシ スペシャル」が発売されました。いよいよ“トクホコーラ”戦争勃発か? 楽しみです。

10. 成熟した即席麺市場を変えた「マルちゃん正麺」

 東洋水産の「マルちゃん正麺」は2011年11月発売以降、累計で2億食を出荷したそうです。価格が従来商品より高めなのにもかかわらず、販売数で2012年のトップを争う勢いとか。

 人気の理由は主に2つあります。1つに生麺をそのまま乾燥させるという独自の製法で、モチモチした生麺の食感が味わえる。2つ目に即席麺には余りもの野菜を添えて調理することが多いという調査から、スープには野菜にマッチする隠し味を加えた。

 子どものころから「サッポロ一番しょうゆ味」一辺倒の筆者にも一度試してみたいと思わせる魅力があります。


2012年の10大ニュース
《特別企画》2012年食の10大ニュース[一覧]
これまでの「10大ニュース」
《特別企画》2011年食の10大ニュース[一覧]
《特別企画》2010年食の10大ニュース[一覧]
旭利彦
About 旭利彦 15 Articles
ジャーナリスト あさひ・としひこ 旅行会社勤務の後、スーパーマーケット専門紙「流通ジャーナル」、海外旅行専門誌「トラベルタイムス」(オータパブリケイションズ)、同「トラベルマネジメント」(トラベルコンサルタンツ)での社員編集者勤務を経て、1996年よりフリーランス。「夕刊フジ」「サンケイスポーツ」などで健康および医療・医学分野の契約ライターを担当。その後、「週刊新潮」で連載コラム「よろず医者いらず」、夕刊フジで一般食品の健康的効能を紹介する「旭利彦の食養生訓」、飲食業界専門誌「カフェ&レストラン」で「カフェのヘルシー研究」、経済雑誌「経済界」で50代以上の男性に向けた健康コラム「経営者のための“自力”健康法」を連載。現在は食品専門誌「食品工業」(光琳)、スーパーマーケット専門誌「週刊ストアジャパン」、医療専門誌「月刊/保険診療」(医学通信社)で取材・執筆活動を行っている。主な著書に「よろず医者いらず」(新潮社)、「カフェの『健康食材』事典」(旭屋出版)など。