中国の環境問題と食品ロス問題

中国における環境問題は日本とよく似ている。つまり、実害が発生してから法律を整備した。そして、法律遵守が行きわたるまで、どうしても時間がかかる。食品ロスに対する施策と社会の動きも同様で、人々の意識改革は容易でない。ただし、トップの号令により、短期間で改善が進むかも知れない。

中国の環境問題

中国の街で見る分別ゴミ箱。
中国の街で見る分別ゴミ箱。

 日本では、1960〜1970年が公害の時代と言われる。経済発展を優先して、環境問題を疎かにしたのである。その結果、水俣病やイタイイタイ病、四日市ぜんそくなどが発生した。これらを反省して、国は公害対策基本法(1967年)や自然環境保全法(1972年)などによって環境対策を進めてきた。その後、1992年の地球サミット(リオ・デ・ジャネイロ)に象徴される世界規模の新しい環境対策にも対応するため、環境基本法(1993年)が制定され、現在はこれを基本とした環境行政が展開されている。

 その経緯は中国でもよく似ているが、現在進行形である。とくに、都市のゴミや産業廃棄物などの固形廃棄物、廃水、大気汚染(排ガス)の“三廃問題”が重要だ。さらに、地下水の過剰汲み上げや、安全基準を満たす水道水供給なども加えておこう。中国では、現在これらに対して各種の法律が施行されている。ただし、違法行為は後を絶たない模様である。それでも、徐々に改善されつつあると言えるだろう。

 三廃問題の中でも喫緊の課題は、都市から排出される一般廃棄物である。生活水準の向上と都市化が加速するのに伴い、都市に由来する廃棄物が急増しているのである。従来は主に簡単な埋立てにより処理してきたが、この方法は環境への悪影響がある。そして広大な国土を持つ中国であっても、適地枯渇により継続が困難になっている。

 中国は日本の状態をよく研究しており、焼却処理を推進する必要性を認識している。その前提となるのが、分別である。一般的には「有害」「リサイクル」「焼却」に分けている。その内容は日本と同様で、有害は電池など、リサイクルはPETボトルや瓶、缶である。その他が食品残さなどの焼却ゴミになる。

 分別のゴミ箱は国内の広範囲に設置されている。だたし、生活者の意識改革が必要になる。従来は分別を意識することなく廃棄できたのだし、分別は面倒であるから、それをする意義が理解される必要がある。だが、廃棄場の適地枯渇は都市住民には実感できない。そんな事情から、現在の分別の実態は地域によりさまざまだろう。それでも、徐々に進展するに違いない。

 一方、中国は2017年に環境対策の一環として「輸入廃棄物管理目録」を改正し、プラスチックゴミの輸入を禁止した。日本を含む先進国において、国内で処理できるプラスチックゴミの量は一部であり、最終処分を中国への輸出に頼っていた。現在、日本など各国は輸出先を東南アジアなどに切り替えて対応しているが、これらの国でも輸入を制限する動きがある。

食品ロス問題

ある日の会食。残さないように。
ある日の会食。残さないように。

 日本の食品廃棄物は約2,550万tで、このうち喫食可能な食品ロスは約612万tである(環境省、2017年度)。食品ロスは家庭に由来する部分が284万t(46.4%)とほぼ半分を占める。削減には国民一人ひとりの自覚が重要になる所以である。

 中国における食品廃棄物の量は把握できなかったが、レストランでは年間1,700万tもの残飯が生じているという。こうした食品ロスは食品廃棄物の一部になるが、一説によると人口当たりの食品廃棄物発生量は他の先進国の5倍に及ぶとも言われる。農場から食卓までのフードチェーンにおける冷凍倉庫や冷凍トラックの整備が遅れているためである。冷凍トラックであっても、冷凍機を稼働させると燃料を消費するため、運転手がスイッチを切ることが頻発しているという。これらの状況改善に、日本企業も積極的に協力している。

 そうした事情以外にも、中国において料理関連の食品廃棄物が大量に発生する背景として以下が指摘できる。

  1. 大量の料理で饗応する文化がある。
  2. 料理を食べ切らずに残すことがマナーとされている。
  3. 飲食店で提供される料理が大量で食べ切れないことがある。
  4. 外食頻度が高い。

 とは言え、筆者の感覚では、中国の人々は以前から食を大切にする意識があったように思う。喫食後、残った料理をドギーバックにより持帰る様子を見てきたからである。通常、ビニール袋のことが多い。汁が多い料理であっても、二重にすれば問題はない。帰宅後、電子レンジで温めれば、おいしく食べられるのである。

 さて、2020年8月中旬、習近平国家主席は「食べ残し禁止令」を発令した。この背景は倫理や処分場の問題ではなく、食料確保の危機感にあるらしい。直近の要因として、穀倉地帯の長江流域における広範囲の水害が挙げられる。また、中国南部のバッタによる蝗害(こうがい)も無視できないレベルで北上中である。

 従来から、中国は米国やブラジルなどから大量の穀物や大豆を輸入してきた。少し前の書籍だが、レスター・R・ブラウン「だれが中国を養うのか?」で食料問題を指摘している。また、国家主席のこの指示は年輩者には好意的に受止められているらしい。食料不足を経験してきたためである。

About 横山勉 85 Articles
横山技術士事務所 所長 よこやま・つとむ 元ヒゲタ醤油品質保証室長。2010年、横山技術士事務所(https://yokoyama-food-enngineer.jimdosite.com/)を開設し、独立。食品技術士センター会員・元副会長(http://jafpec.com/)。休刊中の日経BP社「FoodScience」に食品技術士Yとして執筆。ブログ「食品技術士Yちょいワク『食ノート』」を執筆中(https://ameblo.jp/yk206)。