トゥインキーの妖エネルギー

“ジャンクフード愛”の映画たち(1)

「ジャンクフード」と言うと、ある種の食品を栄養のバランスが悪く健康によくないと見なすネガティブな言葉だが、そのようなそしりを受ける食品であっても「早い、安い、そこそこうまい」といった長所から愛着を感じている人がいるのも事実である。

 そんな、「ジャンクフード」と呼ばれるものを愛する人々が登場する映画をシリーズで取り上げてみようと思う。第1回は、前回「ダイ・ハード」で紹介したトゥインキーとその愛好家が登場する映画を見ていこう。

「ゴーストバスターズ」怪物になり損ねたトゥインキー

 まずは、ダン・エイクロイドとハロルド・ライミスの脚本をアイヴァン・ライトマンが監督した「ゴーストバスターズ」(1984)から。

 ニューヨークのコロンビア大学で超常現象の研究をしているピーター・ヴェンクマン(ビル・マーレイ)、レイモンド・スタンツ(エイクロイド)、イゴン・スペングラー(ライミス)の三博士。彼らが、ニューヨーク公共図書館で初めて本物のゴーストを目撃した後、イゴンが立てたゴースト捕獲計画に感心したピーターがご褒美として手渡したのがトゥインキーであった。

 通常、トゥインキーは個包装された10本が箱詰めで売られていて、この時ピーターがイゴンに手渡したのはその一つ。トゥインキー1本はポケットに入るほどの手のひらサイズだが、それをまるで飴玉でも渡すかのようなさりげない仕草が笑いを誘う。まるでピーターが常日頃からトゥインキーを携帯しているのだと思わせるからだ(そして、そう思い込んだ男が、次の段で紹介する映画に登場する)。

 ゴーストを捕獲しようと意気込んでいた矢先、リストラで大学をクビになった三博士は、ゴースト退治を業務とする会社ゴーストバスターズを創業する。最初は閑古鳥が鳴いていたが、高級ホテルで食い意地の張った「12階のゴースト」を捕獲したことで一躍有名となり、商売は繁盛。ウィンストン・ゼドモア(アーニー・ハドソン)を新メンバーに雇い入れる。

甘いスポンジの中に生クリームを充填した一口ケーキ、トゥインキー(左)とそのマスコット、トゥインキー・ザ・キッド

 ところが、好事魔多し、謎の巨大な霊的エネルギーがニューヨークに接近しつつあることをイゴンが察知する。その巨大さを説明するのにイゴンが使ったのが、本作再登場のトゥインキーである。イゴンはトゥインキー一つをニューヨークの霊的エネルギーの総量にたとえ、それから換算すると謎の巨大な霊的エネルギーは全長10m、重量300㎏に匹敵すると解説する。

 それを聞いて巨大なトゥインキーを眼前に想像したのか思わずむせてしまうスタンツと、デカ過ぎて食いきれないなと平然としているウィンストンのリアクションのギャップが面白い。

 実はこのシーン、クライマックスの伏線となっている。ゴーストバスターズたちの心にある恐怖のイメージを破壊の使者として実体化するという宣告に対して、何も考えなければよいところを、スタンツは恐怖の対局にある、子供時代に食べた甘い菓子のことを思い出してしまう。それは先に想像した全長10mのトゥインキーではなく別の菓子のマスコットキャラクターであった……。

 一つ間違えば巨大化したトゥインキー・ザ・キッド(パッケージやTVCMに登場するトゥインキーのマスコットキャラクター)とゴーストバスターズの“夢の対決”が実現した訳で、そうしたシーンを夢想するのも映画の楽しみの一つである。

 実際の映画では巨大化した怪物はその菓子らしく焼かれて倒されたが、“揚げトゥインキー”というこってりしたメニューが存在するトゥインキーの場合は、さしずめ油攻めにされただろうか。

「ゾンビランド」トゥインキー探しの旅

 2009年製作のルーベン・フライシャー監督作品「ゾンビランド」は、ジョージ・A・ロメロ監督の「ナイト・オブザ・リビング・デッド」(1968)や「ゾンビ」(1978)をはじめとするゾンビホラーのジャンルに属しながら、コメディの要素を備えたディストピア・ロードムービーである。

 ゾンビウイルスの蔓延によってゾンビランドと化したアメリカが舞台。自らに31のルールを課してゾンビに用心してきたおかげで生き残った引きこもりの青年、コロンバス(ジェシー・アイゼンバーグ)。彼が孤独に耐え切れずに、大学のあったテキサス州オースティンから故郷のオハイオ州コロンバス(本作の登場人物は故郷の地名で呼ばれる)に向かう道中で出会ったのが、最強のゾンビハンター、タラハシー(ウディ・ハレルソン)だった。

 息子と愛犬をゾンビに殺されたタラハシーは、平和だった頃の記憶を埋め合わせるかのように、息子と食べていたトゥインキーをこの世からなくなる前に探し出そうと並々ならぬ執念で追い求めていた。テンガロンハットに蛇皮のジャケットという西部劇風の扮装は「ビリー・ザ・キッド」ならぬ「トゥインキー・ザ・キッド」がモデルと思われる。

“ENJOY THE LITTLE THINGS”(小さなことを楽しめ)

 トゥインキーをこよなく愛するタラハシーの言葉はコロンバスの32個目のルールとなり、かくしてコロンバスもタラハシーのトゥインキー探しの旅に同行することになる。

 道路から飛び出して乗り捨てられた車、トゥインキーの製造元のホステス社のトラックにはトゥインキーの姉妹商品のスノーボールが満載されていたが、ココナツ味が嫌いなタラハシーはトゥインキーそのものでないと満足できない。

 続いてゾンビが巣食う大型スーパーの廃屋にフル武装で侵入するが、トゥインキーを見つけ出すどころか詐欺師の姉妹、ウィチタ(エマ・ストーン)とリトルロック(アビゲイル・ブレスリン)にだまされて車を奪われてしまう始末。コロンバスとタラハシーは姉妹を追うが、4人の共通の敵であるゾンビから身を守るために協力することになり、ゾンビがいないパラダイスと言われているカリフォルニア州の遊園地、パシフィック・プレイランドを目指す。

 ロサンゼルスに到着した一行は、どうしてもトゥインキーを手に入れたいタラハシーの案内でビバリーヒルズにあるビル・マーレイ(本人)の豪邸へ。マーレイの出演作は全部見たというタラハシーは、マーレイ → ゴーストバスターズのピーター → トゥインキーを携帯する人という彼なりの“逆三段論法”で訪れたと思われるが、当然ながら映画と現実の違いを思い知らされる。作中ではマーレイのホームシアターで「ゴーストバスターズ」のイゴンが霊的エネルギーをトゥインキーで説明するシーンが映し出され、オマージュを捧げている。

 最後の希望とも言えるパシフィック・プレイランドでタラハシーがトゥインキーにありつけたかどうかは本編をご覧いただきたい。

 なお、本作の10年ぶりの続編「Zombieland: Double Tap」(原題)が今年の10月に公開が予定されている。タラハシーのトゥインキー探しの旅の行方にも注目だ。


【ゴーストバスターズ】

「ゴーストバスターズ」(1984)
作品基本データ
原題:GHOSTBUSTERS
製作国:アメリカ
製作年:1984年
公開年月日:1984年12月2日
上映時間:105分
製作会社:ブラック・ライノ/バーニー・ブリルスタイン・プロ
配給:コロンビア映画
カラー/サイズ:カラー/アメリカンビスタ(1:1.85)
スタッフ
監督・製作:アイヴァン・ライトマン
脚本:ダン・エイクロイド、ハロルド・ライミス
製作総指揮:バーリン・ブリスタイン
撮影:ラズロ・コヴァックス
美術:ジョン・デ・キュア、ジョン・デ・キュア・ジュニア
音楽:エルマー・バーンスタイン
主題曲:レイ・パーカー・ジュニア
編集:シェルドン・カーン、デイヴィッド・ブリューイット
衣装デザイン:セオニ・V・アルドリッジ
特殊効果:リチャード・エドランド
キャスト
ピーター・ヴェンクマン博士:ビル・マーレイ
レイモンド・スタンツ博士:ダン・エイクロイド
イゴン・スペングラー博士:ハロルド・ライミス
ウィンストン・ゼドモア:アーニー・ハドソン
ジャニーン・メルニッツ:アニー・ポッツ
ディナ・バレット:シガニー・ウィーヴァー
ルイス・タリー:リック・モラニス
ウォルター・ペック:ウィリアム・アザートン

(参考文献:KINENOTE)


【ゾンビランド】

「ゾンビランド」(2009)
作品基本データ
原題:ZOMBIELAND
製作国:アメリカ
製作年:2009年
公開年月日:2010年7月24日
上映時間:88分
製作会社:コロンビア映画、レラティビティ・メディア
配給:日活(提供:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント)
カラー/サイズ:カラー/シネマ・スコープ(1:2.35)
スタッフ
監督:ルーベン・フライシャー
脚本:レット・リース、ポール・ワーニック
製作総指揮:ライアン・カヴァナー、レット・リース、エズラ・スワードロウ、ポール・ワーニック
製作:ギャヴィン・ポローン
撮影:マイケル・ボンヴィレイン
プロダクション・デザイン:メイハー・アーマッド
舞台装置:ジーン・サーデナ
音楽:デヴィッド・サーディ
編集:アラン・ボームガーテン、ピーター・アムンドソン
衣装デザイン:マガリー・ギダッシ
VFXスーパーバイザー:ポール・リンデン
キャスト
タラハシー:ウディ・ハレルソン
コロンバス:ジェシー・アイゼンバーグ
ウィチタ:エマ・ストーン
リトルロック:アビゲイル・ブレスリン
406号室の女:アンバー・ハード
ガソリンスタンドのオーナーマイク・ホワイト
ビル・マーレイ:ビル・マーレイ

(参考文献:KINENOTE)

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映画ウォッチャー 埼玉県出身。子供のころからSF映画が好きで、高校時代にキューブリックの「2001年宇宙の旅」を観たところ、モノリスに遭遇したサルの如く芸術映画に目覚め、国・ジャンルを問わない“雑食系映画ファン”となる。20~30代の一般に“青春”と呼ばれる貴重な時をTV・映画撮影現場の小道具係として捧げるが、「映画は見ているうちが天国、作るのは地獄」という現実を嫌というほど思い知らされ、食関連分野の月刊誌の編集者に転向。現在は各種出版物やITメディアを制作する会社で働きながら年間鑑賞本数1,000本以上という“映画中毒生活”を続ける“ダメ中年”である。第5回・第7回・第8回の計3回、キネマ旬報社主催の映画検定1級試験に合格。第5回・第6回の田辺・弁慶映画祭の映画検定審査員も務めた。