関心引くグリーン・プレート

香港の食市場をどう見るか(4)

美容と健康については、香港のみならず世界的にも関心の高い分野だが、中国文化圏特有の健康と長寿を尊ぶ風と漢方の考え方に加えて、香港はまた女性が活躍する社会、女性が消費を主導する社会でもあり、やはり外せない市場である。

ジビエとグリーン・プレート

キサラエフアールカンパニーズは鹿の正肉を生鮮として扱いながら加工に適する部位の活用を進め、生鮮・加工両方の量と品質の安定を狙っている。
キサラエフアールカンパニーズは鹿の正肉を生鮮として扱いながら加工に適する部位の活用を進め、生鮮・加工両方の量と品質の安定を狙っている。
キサラエフアールカンパニーズ(岐阜県揖斐川町)の岐阜産の鹿肉製品。
キサラエフアールカンパニーズ(岐阜県揖斐川町)の岐阜産の鹿肉製品。

 化粧品等については日本製品の品質感・信頼感があるが、ここに来て韓国勢に押され気味の様子がある。とくに韓流女優のイメージと、中小メーカーのフレキシブルな展開が有利に働いているという。

 そんな中、フードエキスポの日本からの出展の中でも今回注目を集めていた一つが、岐阜県産の鹿肉・鹿製品を扱うキサラエフアールカンパニーズ(岐阜県揖斐川町)だった。

 日本では野生動物による農業被害対策の一環として駆除した鹿をジビエとして活用することが行政主導で推進されてきた。そんな中、全国の市町村でそれぞれに鹿肉の売り込みを行うようになって来ているが、取り組む組織の単位が小さく、しかも獲れればあるが獲れなければないということも多いため、全国的な鹿肉市場が形成されたと言えるまでには至っていない。

特徴と機能のわかりやすさはビジュアルでも用意する。このプレートには「にんにくと玉ねぎを不使用」とも記してることから、素食(道教式ベジタリアニズム)にも対応していることがわかる。
特徴と機能のわかりやすさはビジュアルでも用意する。このプレートには「にんにくと玉ねぎを不使用」とも記してることから、素食(道教式ベジタリアニズム)にも対応していることがわかる。
テーマ別出展のグリーンフードエリアに出店した米国の人造肉製品「BEYOND MEAT」。
テーマ別出展のグリーンフードエリアに出店した米国の人造肉製品「BEYOND MEAT」。
「BEYOND MEAT」は植物由来の人造肉製品としてベジタリアンと健康志向の消費者から世界的に関心を集めている商品で、香港でも多くの来場者が足を止めていた。
「BEYOND MEAT」は植物由来の人造肉製品としてベジタリアンと健康志向の消費者から世界的に関心を集めている商品で、香港でも多くの来場者が足を止めていた。

 キサラエフアールカンパニーズはこれに対して「岐阜県」という県規模での集荷とブランド構築を進め、安定供給と利活用のための情報収集・発信も行っている。今回の香港での出展では、主に鹿肉を使った食肉加工品を紹介した。

 香港や中国南部では、もともと漢方や医食同源的な考えと珍味という面から、こうした野生動物を食べることへの関心がある。しかし、現在中国本土では野生動物の猟・流通には規制があるということで、鹿などは手に入らないこともあって注目を集めたようだ。

 同社では、品質や安定供給といったことの説明に加えて、専門の設備で衛生的に処理していることも説明した。健康のためのものだけに、こうした安全・安心情報も重要だ。

前年出展時からデザインを改良。英語表記と、シンプルでわかりやすい食べ方を記載することで手に取りやすくした。
前年出展時からデザインを改良。英語表記と、シンプルでわかりやすい食べ方を記載することで手に取りやすくした。
JA周桑の「おこめん」はグルテンフリーへの関心もあって注目を集めていた。
JA周桑の「おこめん」はグルテンフリーへの関心もあって注目を集めていた。

 健康分野についてはまた、フードエキスポの一般向けグルメゾーンが掲げた4つのテーマに注目しておきたい。すなわち、「アジア料理」「西洋料理」「スイーツ」「グリーン・プレート」であるが、このうち「グリーン・プレート」は日本では用語としてはまだあまり普及していないが、グリーンは植物の緑と安全を示すグリーン(青信号)の両方を連想させるもので、扱う内容としてはオーガニック、植物性(いわゆるボタニカル)、ベジタリアン関連などである。

 このゾーンでは、とくに「BEYOND MEAT」などの人造肉(ベジタリアンミート)などに人が集まっていた。

 一方、プロ向けのトレードホールでも、日本の米を使った麺が関心を集めていたが、そのきっかけの一つには「グルテンフリーであること」があったようだ。

先行者を大切にするビジネス界

日清食品は香港進出60周年。出前一丁は、商品、キャラクターとも、香港では非常に親しまれている。
日清食品は香港進出60周年。出前一丁は、商品、キャラクターとも、香港では非常に親しまれている。
フードエキスポではラーメン各種とグッズなどの詰め合わせ袋を販売(約1,500円)。期間中はこれを数個買ってカートで引く人を多く見かける。
フードエキスポではラーメン各種とグッズなどの詰め合わせ袋を販売(約1,500円)。期間中はこれを数個買ってカートで引く人を多く見かける。

 さて、前述の“インスタ映え”のネタとしては、丸くてかわいいキャラクターなども関心を集める。その点、香港でもハローキティが人気だが、香港における日本のかわいく親しみのあるものとしては、日清食品「出前一丁」の出前坊やが元祖と言えるだろう。

 インスタント麺については、現在では日本からもアジアはじめ世界各国からも多様な商品が香港に入って来ている。しかし、それでも「出前一丁」の人気は不動だという。それはなぜかという問いに、ある香港人は「最初に来たから」と答えた。

 日本でも、古くから商業の栄えた地域には、このように先に来た者、先に扱った物を大切にする風がある。香港でもそうした気風は強い。そして、人間関係を重視し、人のネットワークでビジネスが広がっていくという。

 であれば、香港とのビジネスをいつ考えるべきか。善は急げということになるだろう。

→香港の食市場をどう見るか(1)

齋藤訓之
About 齋藤訓之 298 Articles
Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。日本フードサービス学会会員。戸板女子短期大学食物栄養科非常勤講師。東京栄養食糧専門学校非常勤講師。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ →