「ワイン・ボトルは横に寝かせる」という“常識”を捨てよ

ワインの日本における国内流通体制は満足できる段階に至っていない。まず、適正な温度管理が行われる場合は希である。また、筆者は縦箱正立輸送を推奨しているが、トラック輸送の現場で発揮される“親切心”が、縦箱の意味を台無しにしてしまっていることが多い。

宅配便に適正な温度管理は期待できない

 ワインの国内流通の段階ごとの問題点を改めて検証してみたい。

 国内倉庫から消費地までの全段階を通じて、温度ダメージに対しとりあえずの満足を満たしてくれているシステムは、東西運輸が運営するリファーシステムジャパンが首都圏をカバーしてくれているシステムぐらいであろう。以前にも申し上げてきたことだが、宅配便各社のクール便ではワインにダメージを与えてしまう可能性は非常に高い(第20回参照)。

せっかくの縦箱も“親切心から”横倒しにされる

 さて、今問題にしている“撹拌ダメージ”の観点から検証してみよう。

 まず、スティルヴァン・スクリュー栓を施され、縦箱に正立させたワインを国内輸送する場合について。正しく正立状態が保たれて目的地まで到着したワインならば、通常の宅配便を使ってでも、国内全域(ただし、離島、厳寒期の北海道および北東北を除く)へ大過なく届くはずである。

 だが油断はできない。“縦箱正立詰め”といった場合、多いのは750ml×12本入りおよび375ml×24本入りのパッケージだ。中でも、ドイツやアルザス、ミュスカデ、アンジュー、一部イタリア産等のワインに使われている縦長ボトルに詰められている場合、トラック輸送中にパッケージごと横倒しになってしまう場合があるのだ。

 さらに、運送業界の現場で作業するスタッフの方々の多くには、パッケージに「ワイン」の文字が記載されているのを見ると、親切心からパッケージを横に寝かせたり倒立積み込みをしてしまう方々が多く存在するのだ。

 宅配便を含む国内運輸業界の方々へのお願いである。「ワインは、天然コルク栓を施したワインでさえも、国内輸送段階の所要時間内でコルクが乾燥してしまうはずはなく、正立輸送が基本である」ことを、全スタッフに周知徹底していただきたい。さらに、ワインを含むすべての酒類の1本、2本、3本、6本詰め梱包物の正立輸送遵守と、その転倒防止策の確立も、是非ともお願いしたい。

 私が酒販店を経営していたときの宅配便荷台観察でも、「天地無用」や「この面を上に」と書かれたシールが貼ってあっても、守られていたことは稀有であった。改善案の一つとして、「搬送時はこの面を上に!」と記したシールがほしい。それにもまして肝心なことは、国内運送業界現場スタッフの心から「ワインは横に」の思い込みを排除することである。

 いわんや、そもそも乾燥の恐れのないスティルヴァン・スクリュー栓を施したワインを横積みすることは、何としても避けてほしい。

ボジョレー・ヌーボーこそスティルヴァン・スクリューに

 11月8日現在、ボジョレー・ヌーボー(Beaujolais Nouveau)の航空便輸送が始まっている。日本での解禁日11月15日(第三木曜日)までの輸送保管期間では、天然コルク栓であっても乾燥萎縮に陥ることはない。安心して正立輸送してほしいものだ。

 本来、航空機で輸送し、大半を短期間で消費してしまうボジョレー・ヌーボーこそはスティルヴァン・スクリュー栓を施すにふさわしいワインである。コルク栓のワインを航空機で輸送する場合、上空で周囲が陰圧となることによる吹きこぼれと、下降~着陸で今度は瓶内が陰圧になることによる酸素流入の恐れがある。しかし、スティルヴァン・スクリューはボトルの気密を保つから、その心配がない。

 ただ、その場合でも空輸時に留意すべきは、低温被曝による成分結晶をいかに防ぐかだ(第22回参照)。

大久保順朗
About 大久保順朗 82 Articles
酒類品質管理アドバイザー おおくぼ・よりあき 1949年生まれ。22歳で家業の菊屋大久保酒店(東京都小金井市)を継ぎ、ワインに特化した経営に舵を切る。「酒販ニュース」(醸造産業新聞社)に寄稿した「酒屋生かさぬように殺さぬように」で注目を浴びる。また、ワインの品質劣化の多くが物流段階で発生していることに気付き、その改善の第一歩として同紙上でワインのリーファー輸送の提案を行った。その後も、輸送、保管、テイスティングなどについても革新的な提案を続けている。