2012年食の10大ニュース[13]

  1. 円高デフレ下の収益環境が継続
  2. 相場変動に苦慮、影響は来期にも
  3. TPPに水面下で賛否飛ぶ
  4. 震災の影響で反動増・減入り乱れる
  5. CVS、DGS、ネットスーパーなど核に購買行動変化
  6. 小売業のPB(自主規格品)戦略が再加速
  7. 反日デモも影響軽微、事業姿勢を堅持
  8. 食品表示の一元化、方向決まる
  9. 電力料金値上げ、消費税増税に戦々恐々
  10. 円安をおおむね歓迎、景気回復に期待

1. 円高デフレ下の収益環境が継続

 今年も円高デフレが継続し、輸入コストは低位安定、製品価格も緩やかな単価下落基調で推移した。

 こうした事業環境を反映してメーカー収益はおおむね安定しているものの、競合の激しい業種分野によっては販促費が増加して利益を圧迫する傾向に。

2. 相場変動に苦慮、影響は来期にも

 水産・畜産・穀物などで相場変動の振幅が大きく、振り回される形で業績に大きな影を落とした企業も。

 チリ銀サケ、ブラジル産鶏肉は震災後の需要増を見越した大量搬入により相場が大幅に下落した。在庫過剰から上期の水産・畜産各社は大きく業績を落とした。

 小麦、大豆、トウモロコシの歴史的な相場高騰は、その影響が来年春以降に表れる見通し。小麦粉、大豆油の高騰懸念が根強く、配合飼料の価格高から畜肉原料やチーズ・バターの値上がりも十分に考えられる。

3. TPPに水面下で賛否飛ぶ

 TPPについては食品産業からは表だった意見表明は少なく、乳業や食肉加工業からの反対意見があった程度。

 国内外の多様な原材料・資材を扱う食品だけに関税撤廃の影響予測は難しく、水面下で賛否が飛び交う状況だった。

 ただ為替が円安に大きく振れるなか、自民党政権の舵取りいかんで事業環境に与える影響が転換期を迎える可能性もある。業界は今後の動向を注視している。

4. 震災の影響で反動増・減入り乱れる

 前期の東日本大震災後の特需が特殊要因となり、上期の各社業績は前年同期比で反動増・減が入り乱れる展開となった。直接間接の被害を受けて特需への対応ができなかった企業は反動増に、直接被害が少なく特需にも恵まれた企業は反動減の様相となった。業績判断は比較困難で、下期以降の事業計画立案に与える影響も少なくない。

5. CVS、DGS、ネットスーパーなど核に購買行動変化

 震災後に存在感を高めたCVSを中心に、食の消費意識が買い物場所のシフトを伴い変化している。

 依然続く内食化の進展とも重なり、とくに中食市場での購買行動がより近場に、より高い頻度に、より個食にといった方向に進んだ。業態間で価格競争も激化している。

6. 小売業のPB(自主規格品)戦略が再加速

 2008年のリーマン・ショック以後に低価格路線を前面にいったんは拡大した小売PBだが、その後は新味が薄れて改訂も進まず、減速気味だった。競合激化と中食市場の好調を背景に、今年に入り再びPB開発が再加速。

 前回と異なり品質や機能を訴求した商品がより広範な品揃えとともに投入されており、各メーカーも無視できない状況だ。

7. 反日デモも影響軽微、事業姿勢を堅持

 尖閣諸島問題の表面化に端を発した9月下旬の中国反日デモで、食品は日系小売企業が深刻な被害を受けた。ただ日系メーカーへの影響は総じて軽微だった。出資比率49%以内、トップには現地パートナー企業の幹部を据えるなど、裏方に徹した名より実を取る進出形態が一般的で、政治色を強めた今回の被害を回避できた。事業姿勢にも変化はなく、逆に旺盛な直接投資実績からも同国は生産拠点としての重要性を増している。

8. 食品表示の一元化、方向決まる

 消費者庁は新食品表示法(仮称)を年明けから始まる通常国会に提出する。8月に食品表示一元化検討会の報告書を公表し、JAS法・食品衛生法・健康増進法3法の食品表示部分を統合する。原料原産地表示は検討会でも方向がまとまらなかったが、品質との関連づけをしないことを前提に、対象品目は拡大に向けて検討が始まる見込み。

9. 電力料金値上げ、消費税増税に戦々恐々

 今後の事業環境に大きく影を落とすのが電力料金の値上がりと消費増税への対応だ。

 各社は電力値上げにはコストダウンでしのぎたい構えだが、値上がり幅によっては製品価格への反映も検討する考え。消費増税は税率上昇の問題であり、製品の納入価格には反映しないとの基本姿勢を貫きたいが、小売各社の価格表示方針によっては増税負担が生じる可能性もあるだけに、戦々恐々としている。

10. 円安をおおむね歓迎、景気回復に期待

 アベノミクス効果も含めた現下の円安傾向には、おおむね歓迎との反応が大半。輸入コスト高につながるが、それよりも景気回復によって個人消費が上向くほうを重視している。

 ただ個人所得が増えない限り消費拡大は見込めないため、政策の実効性には疑念ものぞかせる。デフレ脱却へ向けた今後の景気対策、中長期の内需拡大策に期待を寄せる。


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About 本宮康博 3 Articles
日本食糧新聞社次長・記者 ほんみや・やすひろ 1967年広島市生まれ。89年関西大学社会学部卒後、大手食品メーカー勤務。食品業界専門紙2社を経て、00年に日本食糧新聞社入社。