食品安全情報(化学物質)No.19(2011.09.21)

国立医薬品食品衛生研究所が月2回発表している「食品安全情報」(化学物質)No.19(2011.09.21)で注目の話題には、公的機関による、実験や調査に関する指針と誤りの指摘があった。また、被曝による影響の予防や治療、性機能改善、ダイエット、筋肉強化などを謳う製品への注意喚起があった。

注目記事

【EFSA】統計学的有意差と生物学的妥当性

 ECの科学委員会が生物学的に妥当な影響の評価を行う際のガイドとなる文書を、EFSAが発表した。実験で得られたデータの解釈において、ただ有意差が見られたというだけで仮説を決定づけてしまうと、誤解を招く可能性があると注意を呼びかけている。実施した実験のデザイン、想定される生物学的変化の性質や大きさの意義などについて、あらかじめ十分に検討しておく必要がある。また、実験方法等の詳細な内容や、別の解析ができるように生データを、提供することが推奨されている。

 このガイドに書かれた内容は、ECの科学委員会に限らず生物学的な実験のすべてに当てはまる概念と言える。EFSAが強調しているのは、統計的に有意差があるか、有意差がないかという二分法で解釈するのではなく、データの範囲(信頼区間等)はどうなっているかなどの、より多くの情報をもとに解釈すべきということである。

【FDA】放射線の安全性

 米国食品医薬品局(FDA)は、輸入品について定期的に放射性核種汚染調査を実施している。9月7日現在、FDAの輸入検査官は2万5066件の野外放射性核種汚染調査を行ったが、その結果によると公衆衛生上の懸念はないとしている。

 さらに消費者向け注意事項も公表しており、被曝による有害影響の予防や治療の効果があると主張している未承認製品への注意を呼びかけている。これらの注意事項は、日本人にも当てはまると思われる。

【FDA】リンゴジュースとヒ素について

 米国のある研究者が市販のリンゴジュースの総ヒ素を分析し、総ヒ素として微量検出されたことをもとにリンゴジュースは安全でないと発言した。この発言がニュース等に取り上げられて話題を呼んだ。しかしながら、この発言には誤解があるとしてFDAが注意を呼びかけている。

 その理由は次の通り。総ヒ素の分析では無害な有機ヒ素と有害な無機ヒ素の両方が合わせて検出されており、総ヒ素の分析で検出されたからといって、リンゴジュースが安全でないということにはならない。FDAが定期的に実施している検査では、リンゴジュースなどフルーツジュースのヒ素レベルに公衆衛生上のリスクがあるとの根拠はない。しかも、この研究者は飲料水中のヒ素基準と比較しており、飲料水中のヒ素はフルーツジュースと違ってほぼすべてが有害な無機ヒ素であること、1日の摂取量がフルーツジュースと飲料水では大きく違うことを考慮していない。

【KFDA】海外サイトの販売製品に注意

 韓国の食品医薬品安全庁は、海外インターネットサイトで性機能改善やダイエット、筋肉強化などを標榜して販売されている31製品の検査を実施した。その結果、12製品から食品に使用が禁止されているシルデナフィル、イカリイン、ヨヒンビンなどの成分が検出された。

 性機能改善やダイエット、筋肉強化などの目的で販売されている製品には、販売禁止になった医薬品やその類似化合物などが意図的に含まれている場合が多く、とくにインターネット販売されている製品には注意が必要である。

食品安全情報へのリンク

「食品安全情報」
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.19 (2011.09.21)
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/2011/foodinfo201119c.pdf

今号の目次

【EC】
1. FVO視察報告書
2. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. コーデックス第43回残留農薬部会におけるEUの立場についての科学的サポート
2. 統計学的有意差と生物学的妥当性
3. 飼料添加物に関する科学的意見
4. 既存のMON 531綿由来綿実油、食品添加物、飼料、飼料添加物の継続販売認可更新申請についての科学的意見

【FSA】
1. 主任科学者の年次報告書発表
2. 混乱を招く日付表示を終了させるためのガイド
3. 食用色素を除去するガイド

【DWI】
1. 新しいSCA BLUE BOOK 233:飲料水の味と臭いの決定法の履行について

【BfR】
1. ミネラルクレイに発見されたダイオキシンについての評価
2. 消費者製品中の有機スズ化合物

【RIVM】
1. オランダにおける違法勃起不全用製品:10年の傾向と2007~2010年の製品更新

【ANSES】
1. ブルターニュでの野生のイノシシの死亡:硫化水素の可能性が高い

【FDA】
1. 放射線の安全性
2. 消費者向け情報 リンゴジュースとヒ素についてのQ&A
3. 警告文書
4. ミネソタの企業が認められていない宣伝をしていたアミノ酸製品の販売を中止することに合意

【NTP】
1. 2011年発表のテクニカルレポート

【EPA】
1. ニューヨークのチャイナタウンで違法な農薬の販売を行った12人の被告逮捕

【DEA】
1. DEAは合成興奮剤の緊急コントロールを実施

【CFIA】
1. カナダの食品の安全性への信頼は上昇傾向

【FSANZ】
1. 食品基準改訂告知
2. リステリアリスク低減に役立つ加工助剤について意見募集

【APVMA】
1. 殺鼠剤混合所の閉鎖?

【TGA】
1. 安全性助言 Maxidusカプセル

【KFDA】
1. 海外サイトの販売製品に注意
2. 日本原子力発電所関連の食品医薬品安全庁による対応及び管理動向(12)
3. 楽しい山行、野生の毒キノコ摂取注意 !

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(ProMED-mail)原因不明の病気、イヌ 英国(イングランド)
・(ProMED-mail)原因不明食中毒 南アフリカ、有機リンの疑い
・(EurekAlert)専門家はトランス脂肪表示の変更を要請
・(Case Watch)FTC年次報告書
・(Scienceニュース)フランス政府はGMトウモロコシについてEU法廷に逆らう

登田美桜
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国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第三室主任研究官 とだ・みおう 農学博士。国立医薬品食品衛生研究所は、医薬品、食品、その他生活環境中に存在する物質について、品質、安全性、有効性を評価するための試験、研究、調査を行う機関。 安全情報部の「食品安全情報」は、食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報を伝える。