複雑な畑の土壌を理解する

前回まで水田の土壌型の説明をしてきましたが、今回からは畑の土壌型の説明です。畑になっている土地は水田よりもさまざまな土壌があり、作付ける作物によって人間が土に働きかける内容も異なり、複雑です。それをできるだけ単純化してお話していきます。

畑でも水の縦浸透が大切

 土壌診断と営農指導のため、これまで世界各地におじゃまして来ましたが、そのおかげでわかったことというのがいくつかあります。

 その一つが、水田の成り立ちです。日本以外のアジア圏では、水田とは水をわざわざ人工的に引き込んで作るものではなく、自然のなりゆきで出来上がっているものでした。これに対して、日本では昔から人々がたいへんな努力をして水田を作り上げてきたものだということを再確認しました。

 我が国は確かに降雨量は多いのですが、地形が急峻であるために水が溜まっていることが少なく、そのためわざわざ水を引いてくるということをしなければならないのです。「我田引水」といった言葉も、そんなところから生まれたのでしょうが、とにかく水を引く苦労を惜しまずやってきたのです。

 ですから、もともと水が溜まる場所ではないところに水田があるということになります。そして、前回までに説明したように、そうした場所の水田は排水がよく、うまい米ができるのです。逆に、水を引いてくる苦労のない場所の水田は米の味が悪いということになります。それは排水が悪いためにイネの根が活発に活動しないからということは説明しました。

 さて、この原則、つまり排水の善し悪しは畑でも同じことが起こります。排水のよくない畑は、水田でと同じように作物の根がうまく活躍できません。水田にせよ畑にせよ、圃場の中を水が上から下へ円滑に抜けていく縦浸透は、本当に大切なことなのです。

 これから畑の種類をみていきますが、心得は水田と同じことが言えると覚えておいてください。

畑の土は種類も使い方も多様で複雑

 さて、今回からは畑の土の話です。

 日本には、約150万haの畑がありますが、畑での栽培というのは実は難しいもので、どこでも皆さん手を焼いています。今年ちゃんと出来るか――毎年そんな不安の中で経営をしているのが本当のところ、そう言ってもよいくらいです。

 この畑の区分のしかたとして、栽培法による区分ということが従来から行われてきていますが、この連載ではもちろん土壌型から分類していくということをやっていきます。

 畑は、平面が多い水田とはまた異なる特有の出来方をしているものです。これを見るときは、その土地全体がどのように出来たのかに注意することがポイントとなります。

 とくに、日本では火山国ですから、火山活動によるさまざまな地形や土壌が見られます。たとえば、火山からの噴出物が大いに影響している場所がありますし、地殻変動で土地そのものが大きく隆起した場所もあります。また、過去の地質時代の気象の影響が今に残っている所などもあります。

 他方、畑の場合は作付ける作物が水田とは違ってさまざまであるという点にも注意する必要があります。水田でも、イネが主体で、所によりムギ、ダイズ、野菜というようにイネの栽培だけに使うとは限りませんが、畑はさらに作付ける作物のバラエティがあります。

 そして、各種の作物に応じて、施用する肥料の種類と多寡が異なってきます。たとえば、ジャガイモでは石灰が少なめにして、その後に作付けるビート(テンサイ)は石灰をかなり多めに施用するとかというパターンが発生します。

 そのため、畑での土壌型に関する思考や観察ポイントも複雑になります。しかし、複雑なままではわからなくなりますから、なるべく単純化して説明していこうと思います。

日本の畑の土は基本的に褐色森林土だが

 では、畑の土壌型にはどういうものがあるかというお話からしましょう。

 第63回で触れたように、基本的には、日本の土はたいていが褐色森林土という名称のものになります。では、褐色森林土とはどんな土かということを、簡単に述べましょう。

 この土は温帯に分布する種類です。

 土の種類を決めるものは出来方が決め手という原則があります。その原則から説明すると、褐色森林土とは、雨量がある程度あり、そこに広葉樹が育つということが言えます。

 広葉樹が育つと、その木は葉を落とします。この落とした葉が栄養になって、土は適度に肥えたものになります。

 針葉樹ならどうなのかと思うでしょう。針葉樹では葉が持つ栄養が少なく、広葉樹の育った場所のようには土はよくなりません。

 ですから、褐色森林土とは、広葉樹の栄養に富んだ葉が落ちて腐植となり、肥えたよい土になったものだと考えておいてください。

 と、説明しましたが、実はこれだけでは日本の畑の土を理解することはできません。次回は、もう少し詳しいところをお話します。

About 関祐二 101 Articles
農業コンサルタント せき・ゆうじ 1953年静岡県生まれ。東京農業大学在学中に実践的な土壌学に触れる。75年に就農し、営農と他の農家との交流を続ける中、実際の農業現場に土壌・肥料の知識が不足していることを痛感。民間発で実践的な農業技術を伝えるため、84年から農業コンサルタントを始める。現在、国内と海外の農家、食品メーカー、資材メーカー等に技術指導を行い、世界中の土壌と栽培の現場に精通している。