栽培現場ごとの土の事情(4)露地畑(2)

プラウ(洋鋤)
畑に有機物を鋤き込むのに有効なプラウ(洋鋤)だが、北海道以外の地域では普及が進んでいない
栽培現場を7つに分類して説明する
(1) 育苗培土(野菜苗を中心に)
(2) 固形培地によるハウス栽培
(3) ハウスでの地床栽培
(4) 露地畑
(5) 水田での水稲
(6) 水田からの転作
(7) 海外での農業

農業生産を行う現場を7つに分類し、それぞれについて、土のあり方と栽培の実際について説明している。露地畑の2回目は、いわゆる“連作障害”が起こる理由を考える。

連作で起こる障害

 露地畑に特有の問題はもう一つあります。それは連作に伴う各種の障害が出ていることと、その原因や対策があまり論理的にかつ科学的に行われていないということです。

 農家はよく「連作障害」という言葉を使います。同じ圃場で同じ作物を栽培し続けていると、だんだん収量が落ちてきたり、病害虫が発生しやすくなりますが、いろいろな現象といろいろな原因をいっしょくたにして「連作障害が発生した」と言うわけです。

 この連作障害なるものは、水田では起きていません。水田では毎年イネを栽培していますが、そのことで水田の生産力が落ちるということはないのです。水田のメカニズムについては後の章で詳しく述べますが、水田は日本の土壌条件、気象条件を生かした、連作に伴う障害が起こらない栽培方法だということを押さえておいてください。

かつてあった障害を避ける営農の知恵

 日本での水田のように、その土地に合った栽培方法が発明、採用されて、その地域の農業生産の形を作っていったという例は、たとえばヨーロッパにもあります。

 世界史の授業で、「三圃式農業」という言葉を暗記した覚えがあると思います。これは、同じ作物は同じ圃場に繰り返して植え付けず、ある作物を作付けた翌年には別の作物を作付け、その次の年には休閑するというやり方です。ヨーロッパでは歴史的にも古くから三圃式農業が営まれ、限られた畑で永く生産性を落とさない工夫がされてきました。これが、肥料や土壌改良剤のない中世での知恵だったのです。

 日本では水田作以外の農業はどのように行われていたでしょうか。日本では狭い耕地に多くの農民がひしめきあっていて、その限られた畑で繰り返し同じものを作る必要がありました。

 そこで行われたのが有機物の施用です。有機物施用こそが大事なことで、それがあっての連作であると、われわれの先祖は経験的に発見し、理解していたのでしょう。

“連作障害”の原因は連作ではない

プラウ(洋鋤)
畑に有機物を鋤き込むのに有効なプラウ(洋鋤)だが、北海道以外の地域では普及が進んでいない

 さて、現在の日本の露地畑はどうでしょうか。戦後化学肥料が普及するに従って、有機物の施用はかつてのように熱心に行われなくなってきました。一方、機械化も進みました。そして、大型農家が大型機械を使えることになり、無理やり整備した大型圃場で同じ作物を作り続けるようになりました。それによって市場の引き合いを獲得し、その連続性が利益を出すことであるとしたモデルを追及しています。

 これでは土の負担は大きくなるばかりです。圃場に施す有機物は作物が直接に吸う栄養のためばかりではありません。適正な物理性や生物性の確保のためにも必要なものです。それが不足した上に、重量のある機械が何度も圃場に入ると、日本の土はてきめんに締まり、物理性も生物性も悪化します。その結果として、各地の有名な産地が土壌病害に苦しんでいます。

 さらに、その病害を押さえつけるために、これでもかというように土壌消毒剤が使用されてきました。

 こうした病害の原因は、単に同じ作物を作り続けることだけが原因ではないのです。必要なものが欠け、障害発生を助長するものがあるという点に注目しなければなりません。

 その視点がなかった日本の農業技術者の怠慢、農業者の勉強不足、これを反省する必要があります。

不正確な施肥が問題

 各地の露地畑で起こっている病害のメカニズムをもう少し掘り下げてみましょう。

 まず、第14回などでもお話したように、日本の露地畑は降水の多さのために石灰(カルシウム)や苦土(マグネシウム)が不足しています。これを補給するために、とくに戦後になってからですが、積極的に石灰や苦土の施用をしました。この結果、露地畑は飛躍的に生産力を向上しました。

 しかし、その補給は正確さに欠けるところがありました。施用量が間違っていたり、散布してからの混和が不十分だったりして、せっかくやったことが逆効果となる場面もあったのです。

 また、石灰や苦土だけでは日本の露地畑で連作を続けることは難しいのです。これに加えて、ホウ素、マンガン、亜鉛、銅、鉄、モリブデン、コバルトなどの微量要素も必要なのです。

 この微量要素の施用や気遣いは、施設園芸ではなかなかよく考えてやっている人が多いものです。しかし、露地畑ではほとんどの人が無頓着です。それというのも、施設園芸などに比べれば露地畑の単位面積当たりの収益は少なく、高価でしかも必要量はごくわずかな要素などにはかまうだけ損に思えるのでしょう。

関祐二
About 関祐二 101 Articles
農業コンサルタント せき・ゆうじ 1953年静岡県生まれ。東京農業大学在学中に実践的な土壌学に触れる。75年に就農し、営農と他の農家との交流を続ける中、実際の農業現場に土壌・肥料の知識が不足していることを痛感。民間発で実践的な農業技術を伝えるため、84年から農業コンサルタントを始める。現在、国内と海外の農家、食品メーカー、資材メーカー等に技術指導を行い、世界中の土壌と栽培の現場に精通している。