造岩鉱物と岩石のスープ

土は造岩鉱物、生物、腐植、粘土鉱物の4つの要素の混合物だということを指摘し、このうち粘土鉱物と腐植について説明をしました。今回は、造岩鉱物がどんな役割を持っているかを説明します。

「岩石のスープ」が土壌の性質を左右する

 料理にとってだしとはとても大切なものと聞きます。だしは肉や魚や野菜などのエキスを水に溶け出させたものですが、その種類もそれを使う技も多種多様だそうです。

 なぜ私ごとき料理の素人がこんな話をするのかというと、土と作物の関係を考える際、あたかも料理で使うだしのように映るものに期待をかけているからです。「岩石から“だし”が出てくる」などという表現はピント外れに感じるかもしれませんが、植物にとってとても大きな意味を持つものです。これまでにも、「岩石のスープ」という表現を使ってきましたが、それのことです。

 岩石のスープに関心を持つと、農産物を生産する土地ごとの能力も少しずつ見えてきます。全国あるいは世界の産地の能力を見分ける上でも、とても重要なポイントです。

 農家も、小売業や外食業に従事する人も、最近はとかくある種の栽培法や特別な肥料のなどに関心を持つ傾向があるようです。しかし、岩石のスープやその素である岩石についても、興味を持ってほしいと思います。

岩石の分類で「岩石のスープ」を見分ける

身近な岩石の分類
ケイ酸含量が、多い岩石が酸性岩、少ない岩石が塩基性岩

 さて、スープには味の濃いものと薄いものがありますし、味もさまざまです。岩石のスープにも、濃い・薄いがありますし、成分にも種類があります。岩石のスープの種類は、岩石に含まれるケイ酸の含量の多い・少ないで区分することができます。

 まず、ケイ酸含量の多いものを酸性岩と言います。酸性岩は、ケイ酸分が多いだけ石灰とマグネシウムが少ないという特徴があります。逆に、ケイ酸分が少ないものは石灰とマグネシウムが多く含まれていて、これは塩基性岩と呼びます。また、この中間は中性岩と言います。

 とりあえず、私たちの身のまわりによくある岩石を分類して示してみましょう(右表)。

 このうち花コウ岩という白っぽい岩石は、東北では福島県白河辺り、北海道では富良野地区でよく見られます。最も目に付くのは山陽新幹線沿いで、車窓からの景色で白く見える山はほとんど花コウ岩です。

 火山岩の中の流紋岩は白っぽくて、いかにも地上に現れて日が浅い感じがします。

 今回、岩石の種類についてはこのくらいにしておきましょう。とにかく岩石にはいろいろな種類があり、岩石のスープにも種類があるということだけ覚えておいてください。この違いが、作物に対して異なる効果を持ちます。

 それぞれの岩石は、単一の成分で出来ているものは少なく、多くはいくつかの鉱物の集まりです。また、硬く緻密に見えますが、2~10%の容積割合で空隙があります。この空隙には自然の状態では、通常は水が詰まっています。

 そのような構造から、寒暖の差があると伸縮が起きます。だいたい、1m当たり最低でも0.1mm、最大で2~3mmほど伸び縮みするのです。そして、岩石に含まれる水は氷点下では凍りますから、その膨張によって岩石は細かく砕かれるわけです。この作用は、表面から深いところまでと、順序よく進んでいきます。

 このような伸縮や破壊が起こるなかで、岩石が含んでいる多くの無機成分が溶け出してきます。岩石のスープです。岩石のスープはやがて海に注ぎ、地球の長い歴史の中で濃くなり、今日の海水ができたわけです。海水の塩辛さも、元は岩石のスープなのです。

“だしがら”になお残る“だしの素”

 一方、風化した岩石から“だし”がどんどん抜けていけば、後に残るのは”だしがら”です。それが土だということになります。“だしがら”とは言え、風化に耐え残って土の中に含まれる岩石の破片すなわち造岩鉱物は、まだ作物に“だし”を提供できるものと考えられます。また、砂のようにほとんどが細かな岩石の粒で構成されている土壌は、その岩石の種類によっては、たくさんの岩石のスープを出す可能性を秘めていることになります。

 たとえば、千葉県の九十九里浜の砂や高知県の桂浜の砂は、よく見るといろいろな有彩色の砂粒からなっているものですが、一般にこのようなタイプの砂は作物の味を高める傾向があります。逆に、単純な灰色のような砂粒だけのタイプは、そこに作る作物の味を淡泊にする傾向があります。どちらがいいかというよりも、そのような特徴をとらえて利用するように考えるといいでしょう。

 また、火山が噴火すると周囲に火山礫や火山灰が降り積もりますが、その噴火からの時間がまだ浅い、年代の新しい土地は、従来はやせ地として嫌われてきたものです。しかし現在は、石灰を施用し、リン酸と有機物を与えることで、生産力のある畑に見事に激変させる土地改良が行われることになりました。これは、火山礫から溶け出す岩石のスープが作物を育てることに効果を持っていて、その性質を引き出す方法だということです。

 そう考えると、よく言われる「砂地はやせている」という話も、考え直す必要がありそうです。実際、日本の沿岸部には砂地の野菜産地がたくさんあり、そうしたところに評価の高い産地も多いものです。

About 関祐二 101 Articles
農業コンサルタント せき・ゆうじ 1953年静岡県生まれ。東京農業大学在学中に実践的な土壌学に触れる。75年に就農し、営農と他の農家との交流を続ける中、実際の農業現場に土壌・肥料の知識が不足していることを痛感。民間発で実践的な農業技術を伝えるため、84年から農業コンサルタントを始める。現在、国内と海外の農家、食品メーカー、資材メーカー等に技術指導を行い、世界中の土壌と栽培の現場に精通している。