冷凍シェイクのリステリア汚染

No.05(2025.03.05)

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国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。米国で栄養補助食品の冷凍シェイクに関連するリステリア感染が発生している。感染者38人中37人が入院し、12人が死亡。多くが長期介護施設の入居者だった。米国ではまた、キュウリに関連のサルモネラ感染が発生しており、当局が調査を行った。感染源の可能性があるキュウリの生産者の今季出荷は終了している。

注目記事

【米国】冷凍シェイクに関連のリステリア

 米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、複数州にわたり発生しているリステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイクを調査するためさまざまなデータを収集している。

 疫学・追跡調査および検査機関での検査から得られたデータは、Prairie Farms社製の冷凍シェイク飲料(栄養補助食品)がリステリアに汚染されており、本アウトブレイクの感染源となっていることを示している。

 2025年2月21日時点で、L. monocytogenesアウトブレイク株感染患者が21州から計38人報告されている。患者由来検体は2018年8月17日〜2025年1月23日に採取された。情報が得られた全患者38人のうち37人が入院した。死亡者は計12人が報告されている。患者のほとんどが長期介護施設の居住者であったか、発症前に病院に入院していた。

 CDCは、2018年、2021年および2023年にも本アウトブレイクを調査していた。当時の調査で得られた疫学的エビデンスからは、患者が長期介護施設およびその他の高齢者福祉施設の居住者であること、および可能性の高い感染源がこれらのタイプの施設で提供された食品であることは特定されたが、具体的な食品を特定できるだけの十分な情報は得られなかった。その後、新たな患者6人が報告されたことを受け、CDCは、2024年10月にこの調査を再開した。追跡調査から関連製品が特定され、2025年2月にPrairie Farms社由来の環境検体からアウトブレイク株が検出された。

 各州・地域の公衆衛生当局は、患者が発症前1カ月間に喫食した食品に関する聞き取り調査を行っている。情報が得られた全患者38人のうち34人(89%)が、長期介護施設に居住していたことを報告、または発症前に入院していた。患者8人が栄養補助食品の冷凍シェイク飲料に似た軟食の喫食を報告した。これらの施設で提供された食事の記録を調査した結果、栄養補助食品の冷凍シェイク飲料が居住者に提供されていたことが示された。

【米国】キュウリに関連のサルモネラ

 米国疾病予防管理センター(US CDC)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、複数州にわたり発生したサルモネラ(Salmonella AfricanaおよびS. Braenderup)感染アウトブレイクを調査するためさまざまなデータを収集した。疫学・追跡調査および検査機関での検査によるデータは、キュウリがサルモネラに汚染されており、本アウトブレイクの感染源となったことを示している。

 疫学・追跡調査および検査機関での検査によるデータから、Bedner Growers社(フロリダ州Boynton Beach)およびThomas Produce Company社(フロリダ州 Boca Raton)のキュウリが本アウトブレイクの感染源である可能性が高いことが特定された。しかし、これらの2社だけでは本アウトブレイクのすべての患者は説明できなかった。

 調査の一環として、FDAはBedner Growers社およびThomas Produce Company社の生産施設で立ち入り検査を実施し、複数の検体を採取した。検査の結果、両社の農場の用水路の水からS. Braenderup株が検出された。WGS解析により、これらの用水路の水から検出されたサルモネラ株が、本アウトブレイクの一部の患者由来のS. Braenderup 株2株と一致することが確認された。また、両社で採取された土壌検体および水検体からは、アウトブレイク株とは異なるサルモネラ株も検出された。

 Bedner Growers社およびThomas Produce Company社による今シーズンのキュウリの栽培・収穫はすでに終了している。両社から出荷された製品はもはや市場には流通しておらず、本件に関する継続的な公衆衛生リスクは存在しない。

 Fresh Start Produce Sales社(フロリダ州 Delray)は、サルモネラ汚染の可能性があるとしてキュウリの回収を実施した。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

目次

【米国食品医薬品局(US FDA)】

1. ミニペストリーに関連して発生しているサルモネラ(Salmonella Enteritidis)感染アウトブレイクを調査中(2025年2月6日付初発情報)

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】

1. 栄養補助食品の冷凍シェイク飲料に関連して複数州にわたり発生しているリステリア

(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイク(2025年2月24日付初発情報)

2. キュウリに関連して複数州にわたり発生したサルモネラ(Salmonella AfricanaおよびS. Braenderup)感染アウトブレイク(2024年8月22日付最終更新)

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】

1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)

【欧州食品安全機関(EFSA)】

1. 食品のリスクベネフィット評価に関するガイダンスの更新

【オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)】

1. 欧州連合サルモネラリファレンス検査機関(EURL-Salmonella)主催の第29回年次ワークショップ(2024年5月28〜29日、オランダLeiden)

【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】

1. カンピロバクター:家禽肉での検出が多い下痢症病原体

【ProMED-mail】

1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(19)(18)(17)(16)(15)(14)

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.05(2025.03.05)
https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2025/foodinfo202505m.pdf