アスパルテーム有害の懸念ない

No.15(2023.07.19)

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国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。アスパルテームについて、FAO/WHO合同食品添加物専門委員会(JECFA)の評価は摂取の状況と量を考慮している一方、国際がん研究機関(IARC)は発がんの可能性について説得力のある根拠がどの程度あるのかのみを評価している。欧州食品安全機関(EFSA)はグリホサートに重要な懸念分野は特定されずと報告した。

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【別添】アスパルテーム関連

 2023年7月14日、国際がん研究機関(IARC)とFAO/WHO合同食品添加物専門委員会(JECFA)が、ノンシュガー甘味料のアスパルテームに関する各々の評価の結果を同時に発表した。IARCは、ヒトにおける発がんの限られた根拠(limited evidence)をもとに、アスパルテームを「ヒトに対して発がん性がある可能性がある(グループ2B)と分類した。一方、JECFAは以前の評価で設定した許容一日摂取量(ADI)0〜40mg/kg体重を変更する十分な理由はないと結論し、ヒトが一日に摂取する量がこのADIの範囲内であれば安全であることを再確認した。この発表を受けて、各国の食品安全担当機関が見解を発表した。

※ポイント:今回のアスパルテームの評価は、IARCとJECFAが評価結果を同時に発表するという異例の対応が取られました。それだけセンシティブな問題だったことがわかります。

 丁寧に説明されていたのは、IARCとJECFAの評価の相違点です。さまざまな相違点があるので詳細は本文を参考にしていただきたいのですが、消費者にとって最も重要なことは、JECFAの評価ではアスパルテームを摂取する状況と量を考慮しているのに対し、IARCはそこまで踏み込んだ評価はしていないという点でしょう。IARCの評価では、ヒトにがんを引き起こすことについて説得力のある根拠がどの程度あるのかのみを評価しており、結論として分類された2Bの発がん性は、専門家の間では可能性が相当低いものであると考えられています。JECFAは、アスパルテームは消化管内で完全に加水分解されてフェニルアラニンとアスパラギン酸(どちらもアミノ酸の一種)、メタノールになる上、実験動物やヒトに関する新しい研究結果を考慮しても、アスパルテームの摂取がヒトに有害影響を及ぼすという説得力のある根拠はない、さらに現在の食事を介したアスパルテームの推定暴露量は健康上の懸念をもたらすものではないと結論しています。

 IARCとJECFAの発表後に相次いで発表された各国の食品安全担当機関の見解を見ると、JECFAの結論を重視しています。米国食品医薬品局(FDA)については、IARCの結論に合意しないと述べています。今回は要約のみの発表で、評価書の全文は数カ月後に発表予定とのことなので、その後に改めて各国から声明が出されるかもしれません。

【EFSA】グリホサート:重要な懸念分野はない;データのギャップが特定された

 欧州食品安全機関(EFSA)が、農薬の有効成分であるグリホサートのリスク評価を完了し、ヒトおよび動物の健康と環境への影響の評価では重要な懸念分野は特定されなかったと報告した。ただし、いくつかのデータギャップがあり、最終的な結論を出せなかった未解決の問題があったとも述べている。EFSAの評価結果は欧州委員会と加盟国に共有されており、今後、EUでの認可の更新の可否が検討されることになる。結果の詳細な発表は2023年7月末を予定しており、その後、数千ページにわたるリスク評価の背景文書も2023年8月末から10月中旬頃に発表する予定である。

※ポイント:EUでのグリホサートの認可の更新期限が、根拠となるEFSAの評価が完了していないことを理由に1年延期されていました。未解決の問題を欧州委員会がどう判断するかが大きく影響しそうですが、今年の12月までには結論が出されるでしょう。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.15(2023.07.19)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2023/foodinfo202315c.pdf
食品安全情報(化学物質)No.15(2023.07.19)別添
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2023/foodinfo202315ca.pdf

今号の目次

【WHO】
1. 出版物
2. WHO 健康的食事ガイドラインと FAO-WHO 健康的な食事の概念の発表イベント

【FAO】
1. OECD-FAO 農業展望2023-2032は重要なアウトプット、消費、貿易の傾向をマップする
2.2019年以降複数の危機により、さらに1億2200万人の人が飢えに追いやられた、国連報告書が明らかにする
3. Codex

【EC】
1. 回復力があり持続可能な EU の自然資源を確保する:EU の食料システム保障計画
2. 農場から食卓まで戦略:欧州委員会の欧州理事会への農薬についての回答は、EU における農薬使用削減の緊急の必要性を示す
3. 査察報告書
4. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. EFSA プロジェクト GP/EFSA/AFSCO/2017/03に関する報告書「食品中のアレルゲンの検出・定量化及び食品中の最小誘発用量―アレルギー患者」
2. グリホサート:重要な懸念分野はない;データのギャップが特定された
3. preDQ-HLA‐DQ2及び HLA‐DQ8に対するペプチド結合予測のためのソフトウエアツール
4. 食品酵素関連
5. 食品接触物質関連
6. 農薬関連
7. 飼料添加物関連

【GOV.UK】
1. 栄養に関する科学委員会(SACN):報告書と声明
2. 加工食品と健康についての SACN の声明

【FSA】
1.2022年食品衛生評価制度(FHRS)による表示監査及び事業調査
2.「致命的となりうる」プロテインパウダーを避けるよう消費者に要請
3. リコール情報

【COT】
1. パー及びポリフルオロアルキル化合物についての暫定ポジションペーパー
2.2023年7月11日の会合

【DAFM】
1.2030年までの国のオーガニック戦略へのパブリックコメント募集

【BfR】
1. 昆虫摂取後のアレルギー反応に関する知見はまだほとんどない
2. 大豆を含む食品とフードサプリメント:健康面

【RIVM】
1. 新しい研究が確認:オランダの人々の PAFS 摂取量は多すぎる

【FDA】
1. FDA と FTC はデルタ-8THC を含む模倣食品を違法販売した6社に警告
2. 食品プログラムの優先ガイダンストピックスについて更新情報を発表
3. 食品成分及び包装
4. 着色添加物認証に関する報告:2023会計年度第3四半期、4月1日-6月30日

【EPA】
1. 未登録消毒剤を販売した Ross ストアを罰する

【USDA】
1. 科学者は超加工食品を使って健康的な食生活パターンを構築

【FTC】
1. FTC は FDA と、デルタ8THC を含む食用製品を子供たちが食べる食品とほぼ同じ包装で売っている企業に停止通告書を送る

【FSANZ】
1. ポピーシードの安全性と適合性
2. ニュースレター
3. 食品基準通知

【NSW】
1. 危険なポピーシードバッチに警戒
2. リコール情報

【Health. Vic】
1. ポピーシードに健康警告-更新

【MPI】
1. 公衆衛生警告:マールボロの Nydia Bay/Pelorus Sound 地域の貝類バイオトキシン警告

【香港政府ニュース】
1. 食品汚染:日本から輸入される食品の管理措置
2. 違反情報

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 海外直輸入食品を購入する際に国内搬入禁止対象原料・成分を確認してください!
3. 韓国国民の糖類摂取量は WHO 勧告量未満、6〜18歳の子供・青少年3人に1人は超過
4. 輸入産浸出茶に対する検査命令施行
5. 食薬処長、精製塩の安定供給に最善
6. 産婦対象、浸出茶を母乳生成促進茶と偽広告した業者など7カ所摘発・措置
7. 細胞培養技術を適用した新素材食品の国際動向は?
8. バイオ技術を活用した食品添加物の安全性審査資料提出を緩和、新しい食品開発条件を用意
9. 福島汚染水放出に関する説明5次、8次、12次

【SFA】
1. 福島からの輸入食品の安全性に関する SFA のメディア回答

【その他】

●食品安全関係情報(食品安全委員会)から

●ProMED-mail1件

別添
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