小規模店の生鮮調達に障壁あり

前回お伝えした、都心のビルの中で弁当店をイベント出店したときのお話からもう一つ。小規模店の営業予測と生鮮の食材発注の難しさを痛感しました。

来店予測の難しさ

 このイベント出店の最中にお願いしていた八百屋さんは、夕方ファクシミリで注文を出すと、その分を翌日昼に届けてくれるのでした。便利です。

 しかし、昼のピークにそろえるべき品は11時には作り終えておかなければなりません。したがって、昼に届く野菜は、翌日の仕込みに使う材料ということになります。つまり、野菜の発注は、2日後の来店予測に基づいて行う必要があります。

 これがけっこう難しいのです。ターミナルに接続し、ショッピングで来店する人もいれば、オフィスも入居する施設ゆえにビジネスパーソンの利用も多いという立地です。これで気温が低かったり、風が強かったり、雨だったりというと、オフィスのお客さんがランチのために外に出るのを避けてたくさん来店されます。ではと、それを見込んではりきって増産すると意外と客足は伸びなかったり。そんな日は、ショッピング客が減る分を割り引いて考える必要があります。

 また、何かのイベントで急に人が増えたりということもあります。そして、ある1種類の商品に人気があるということでそれに注力していると、急に売れなくなったり。調べてみると、同じエリアの他店が人気を見て類似商品を投入していたりします。

 こういった基本的な予測の難しさに加えて、やはりイベント出店ゆえに経験を活かして土地勘を働かせるということができないわけです。営業期間中は、自店改装中であったり、新規独立開業を控えて準備中であったりということでたまたま手伝ってもらえる経験豊かなプロのシェフたちが厨房の陣頭指揮をとってくれたのですが、彼らにとってもこの来店予測は難しかったようです。

 朝仕込みに入ろうとすると、すでに野菜がショートしていたりということは何度かありました。確認すると、甘く見積もっていた来店予測がはずれ、前日午後に予想以上に来店が多く使い切ってしまったとのこと。そのため、朝、別な人が緊急にスーパーで調達してから出勤して来る、ということもありました。

木曜朝の憂鬱

ある日八百屋さんがサンプルとして持って来た、まだら状に色分けされたピーマン。スーパーでは扱いにくそうだが、カットして調理する外食ではむしろ便利なことも(記事とは直接関係ありません)。
ある日八百屋さんがサンプルとして持って来た、まだら状に色分けされたピーマン。スーパーでは扱いにくそうだが、カットして調理する外食ではむしろ便利なことも(記事とは直接関係ありません)。

 そして、この調子が最も乱れるのが金曜日と月曜日、すなわち日曜日の前々日および水曜日の前々日に行う予測と発注でした。公設市場は基本的に日曜日は条例による休場、さらに水曜日の多くを臨時休場としているものです。これに合わせて、この八百屋さんは毎週日曜と水曜日は稼働しないと決めてしまっているわけです。そのため、月曜日に発注して火曜日の昼に届く品については、火曜日の午後と、水曜日1日分と、木曜日の午前中にどのような動きがあるかを予測して発注する必要があります。これがはずれると、前述のような、朝スーパーに走るという必要を生じるわけです。

 これが金曜日にも同じことが起こります。この施設の場合、日曜日の来店はぐっと減るので抑えめの発注をするのですが、何かの影響で来店が多かった場合は、もともと来店の多い月曜日昼に向けた調理に支障を来すことになります。

 この呼吸が、365日24時間開店している近隣のスーパーやコンビニエンスストアに慣れきってしまっている今日的な一生活者の私にはなかなかつかめませんでした。シェフらにそれを言うと、彼らは水曜日に八百屋さんが来てくれないのはもう常識で、そういうものだと思って仕事をしてきたと言います。

 生活者向けのスーパーやコンビニエンスストアが365日24時間営業しているべきとは、利用者である私も実はそう思っていません。しかし、飲食店は平日休みたくない店、日曜日に休みたくない店というのが普通にあります。それに対応した仕組みというのが、実は未発達だということがわかりました。

 公設市場には、安定した供給体制を維持しながら、しかし従業員の週休二日を確保したい、しかも従業員の頭数は増やしにくいという事情があるでしょう。それを考えればしかたがないとも思えます。

 しかし、チェーンストア向けにビジネスを展開している生鮮野菜やカット野菜を扱う会社の場合は、公設市場と連動することなく安定した供給体制をとっています。そして、チェーンストアには、小規模店よりも精度の高い来店予測のノウハウがあります。

 これらを考え合わせると、小規模店のほうが営業上不利な立場にあることがわかります。それでも黙々と働くシェフらに支えられて、今後も問題なく仕事は回るかもしれません。しかし、本当はそのあたりにも未開拓のビジネスチャンスが眠っているように見えるのです。すでに新しい動きを見せている既存仲卸しや、生鮮混載に取り組んでいるドライグローサリーの会社も、実はあるのですが。

※このコラムは日本食農連携機構のメールマガジンで公開したものを改題し、一部修正したものです。

About 齋藤訓之 396 Articles
Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。戸板女子短期大学食物栄養科非常勤講師。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。日本フードサービス学会、日本マーケティング学会会員。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ →