そばは空気も食べる

そばはなぜすすって食べるのか? スパゲティはなぜすすらずに食べるのか? 以前、スパゲティを箸で食べてみて理由がわかった気がした。


そばを育てて打って茹でて食べる(杉山農場にて)。
そばを育てて打って茹でて食べる(杉山農場にて)。

 学生時代を思い返すと、けっこうスパゲティ三昧だった。あの頃はコメは研ぐものということになっていて、また、食べようと思い立ってから口に入れるまで40分ぐらいは辛抱しなければならない。それでより早く口に入れられる麺類へ走るわけだけれども、そばやうどんはつゆを準備する手間がかかる。インスタントラーメンはちょっと高い。対してスパゲティは、茹でて、面倒ならばバターと塩をからめて黒コショウを振るだけで簡単に食べられる。値段をあまり気にせず大盛りにもできた。

 いちばんよく食べたのは、ニンニクのスパゲティ。台所には常にニンニクを用意していて、スパゲティを茹でながらニンニクを微塵に刻み始め、オリーブ油を落としたソテーパンに鷹の爪とニンニクを入れて火にかける。塩、コショウ。シュワシュワ言ってきたところで、スパゲティの茹で汁をレードルに一杯入れて、固形ブイヨンをほんの少し削って入れ、汁気がなくなるまで煮詰める。これを茹で上がったスパゲティにからめれば出来上がり。あればバジルの微塵(当時は瓶入り乾燥バジル、今なら鉢植えのバジルの葉を刻んで)と、粉チーズを振りかける。

 茹で汁を入れるところで魚介、肉類、野菜を入れればいろいろにアレンジできる。馬鹿の一つ覚えで、そういうものばかり食べていた気がする。

 さて。だらしのない学生だったので、台所は常に洗い物の山。スパゲティが出来上がってからフォークを洗っていなかったことに気付くなんてことはよくあった。で、あるとき、「ままよ」と割り箸でスパゲティを食べたのだ。これが、あまりおいしい食べ方ではなかった。

 麺を箸でつまむと、どうしてもすすることになる。そうすると、口の中にスパゲティと一緒に空気が入る。この食感だとか、味や香りの回り方が、どうもおかしかった。ニンニクの香りや塩味が口の中を素通りしてしまう。

 逆に、そばを昨日来日したばかりの欧米人のようにすすらずにもぐもぐ食べてみると、口の中に空気があまり入らず、そばの食感が重くもっさりとなる。香りも鼻から抜けづらい。

 それで、そばは空気と一緒に食べるもの、スパゲティは空気を入れないように食べるものなのかと、納得した。また、そばはそばでも、田舎そばは空気を入れないようにして食べるほうがよいようにも感じる。

 うまいまずいは好みの問題だけれども、とりあえず、食べ物を食べるときに空気を口に入れる量も考えると、ちょっと面白いという話。

※このコラムは個人ブログで公開していたものです。

About 齋藤訓之 396 Articles
Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。戸板女子短期大学食物栄養科非常勤講師。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。日本フードサービス学会、日本マーケティング学会会員。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ →