中国土産の凝った細工と十二支

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中国の土産として印章(はんこ)が選択肢であると本連載第32回の記事に記したが、中国でおすすめの土産物はこれに留まるものではない。細かな細工の物作りは中国の人々の得意とするところである。ここではそれらのいくつかを紹介しよう。

細かな細工はお手の物

瓢箪の細工、何かを飲んで思案顔のおじいさん、そして驚異の4層球体。
瓢箪の細工、何かを飲んで思案顔のおじいさん、そして驚異の4層球体。

 中国に行ったら、博物館や街中にある小さな土産物店に足を運ぶことをお勧めしたい。きっと、心がときめく逸品を見つけるに違いない。写真の、木製の球、ひょうたん細工、粘土製のおじいさんから話をスタートしよう。

 右端の木製の球であるが、驚くことにこれは4層構造、4つの球体が入れ子構造になっているのだ。どうやって作っているのだろう。外側から彫っていくのは間違いない。その後、つなぎ目を残して次の層を彫る。これを繰り返し、内側からつなぎ目を切断して作ったに違いない。小さなガラス瓶の中にギリギリのサイズで船を収めるボトルシップ細工があるが、その非ではない。

 ひょうたん細工も面白い。小さなものだが、つるの状態が興味深い。表面には熱した半田ごてで模様を書き込んでいる。注文すれば、好きな言葉や名前を書き込んでくれるのだが、そこまでする必要がなかったので、犬が描かれている出来合いのものを購入した。

 中央の粘土製のおじいさんは趣がある。飲んでいるのはお茶だろうかお酒だろうか。筆者としては後者であってほしいと願う。飲みながらふんわりとした気持ちになって、何かを考えているに違いないと思うからだ。人類の将来だとすれば、幸福な状態であってほしい。現在はそういえない状態なのは悲しい。

十二支の丑は何か

翡翠の龍(左)と七宝の龍(右)。中央は丑として出て来たものだが、水牛のようだ。
翡翠の龍(左)と七宝の龍(右)。中央は丑として出て来たものだが、水牛のようだ。

 さて、写真の4層構造の球体彫刻のモチーフは龍である。

 龍は架空の存在ではあるが、聖なる存在でもある。中国では四大聖獣たる瑞獣(ずいじゅう)の一角を占める。また、皇帝のシンボルとされてきた。西洋のドラゴン(dragon)が、悪の化身と恐れられてきたのとは対照的である。

 龍はまた、辰として十二支の中でも縁起がよいものとして人気がある。十二支はもちろん中国発祥であるが、中国だけでなく、日本でも、また東南アジアなどの諸国でも用いられている。2023年の十二支は卯で、日本ではこれはうさぎということになっている。しかし、これは地域により多少違いがある。卯は中国、日本、韓国、モンゴル、インドではうさぎだが、タイやベトナムで猫ということになっている。

 筆者の干支は丑=牛である。広州市の博物館に行った際、土産物店で「お前の干支は何か」と聞かれてそれを答えた結果、出て来たのが2枚目の写真中央のものである。これは牛というよりは水牛だろう。卯が猫であるベトナムでは、牛は牛の代わりに水牛になっている。大きな違いはないので、気にはしていない。

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About 横山勉 99 Articles
横山技術士事務所 所長 よこやま・つとむ 元ヒゲタ醤油品質保証室長。2010年、横山技術士事務所(https://yokoyama-food-enngineer.jimdosite.com/)を開設し、独立。食品技術士センター会員・元副会長(http://jafpec.com/)。休刊中の日経BP社「FoodScience」に食品技術士Yとして執筆。ブログ「食品技術士Yちょいワク『食ノート』」を執筆中(https://ameblo.jp/yk206)。