廃棄カツ横流しから得る教訓

壱番屋の廃棄カツ横流しの問題は、さらに生協連などを含む他の事業者が廃棄したものの横流しも明らかになってきています。

 岐阜県は、産業廃棄物処理業ダイコー(愛知県稲沢市)からカツを購入していた食品関連会社みのりフーズ(岐阜県羽島市)で、壱番屋製以外の100を超える品目が見つかったと発表しています。また、愛知県は廃棄物処理法に基づいて食品製造に伴う産業廃棄物処理を行う企業への立ち入り調査を始めたということです。問題は産業廃棄物処理を行う企業だけでなく、自社工場を運営する外食企業を含む食品メーカーにも、廃棄物の管理の徹底が求められていくでしょう。

 食品メーカーも、産業廃棄物処理業も、ともに、外から流れが見えにくいなか、いかに信用を育てていくかに努力してきた業界ですから、善良な企業にとってもここは正念場と言えるでしょう。

 本来、産業廃棄物は排出事業者が自らの責任で適正に処理することになっているところ、それを適正な手続きによって他に委託することも許されるという形ですから、問題が発生すれば排出事業者も法的・社会的責任を問われることになります。

 1990年からは、マニフェスト制度というものが運用されています。これは、産業廃棄物処理を他に委託する場合に、産業廃棄物の名称、運搬業者名、処分業者名、取扱上の注意事項などを記載した産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付して、産業廃棄物と一緒に流通させるというものです。当初は爆発性、毒性、感染性を有する特別管理産業廃棄物で義務付けられましたが、1998年からはすべての産業廃棄物に適用されています。

 また、マニフェストの形も、複写式伝票の紙マニフェストに加えて、電子マニフェストも導入されました。2001年には、産業廃棄物に関する排出事業者責任の強化が行われ、最終処分の確認が義務付けられています。

※公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)のWebサイトに詳しい説明があります。

産廃知識 マニフェスト制度(日本産業廃棄物処理振興センター)
http://www.jwnet.or.jp/waste/knowledge/manifest.html

 今回の事案では電子マニフェストの改竄があったようですが、それがどのように行われたのかを検証し、再発の防止策を考える必要がありそうです。

 また、排出事業者側で行うべきことも見直す必要があるでしょう。たとえば、個人情報や機密を含む書類は廃棄に際して自社内でシュレッダーをかけるのが普通です。PC等を処分する場合も、ハードディスクは自社内で破壊してから廃棄するものです。磁気テープやICチップのあるカード類も、最低限の破壊は加えるでしょう。こうした一手間が廃棄物の運搬や処理を行う企業の責任の負担を軽減することにもなりますし、安全と信用のためには一つのシステムでよしとせず、二重三重の冗長性を持たせた体系を作ることが大切です。

 同様に、食品を廃棄する場合も、細断するとか穴を開けるとか、商品として利用できない形に最低限の加工を加えることは考えるべきでしょう。とくに今回の事案では冷凍食品が転売されているわけですが、これがもし低温を保ったまま運ばれたのだとすれば、何とも丁寧な杜撰さと言わざるを得ません。

 また、中国製冷凍ギョーザ事件やアクリフーズ農薬混入事件等をきっかけに、食品業界ではフードディフェンスの考え方と対策が浸透してきていますが、今回の事案から、食品に対する悪事は汚損や毒物混入等だけでなく、横流しも含めて対策を考え、社内の管理や教育の徹底と、透明性の向上を進める必要があるでしょう。

 透明性というのは、とくに横流しというものは、悪意のある従業員による犯行というだけでなく、経営層を含む管理者が金融のために手を染めるということも業種を問わず一般に古くからある問題であり、万一このようなことが疑われれば、仮に法律上の犯罪とならなくても企業が失う信用の度合いには計り知れないものがあります。外部の第三者の目をいかに光らせてもらうかも考えるべきでしょう。

 食品製造では工程の改善、管理、監視、教育、さらに透明性の向上と、やるべきことが年々増えてきますが、これも産業の進歩だと考えて取り組んでいくほかありません。取り組んだことは消費者から歓迎されることに違いありませんから。もっとも、高コストとなれば話は別ですが。

問題のカツはすべて堆肥化したことになっていた。堆肥舎もまた、いろいろなものが集まる場所である(写真はイメージで、記事とは直接関係ありません)
問題のカツはすべて堆肥化したことになっていた。堆肥舎もまた、いろいろなものが集まる場所である(写真はイメージで記事とは直接関係ありません)

※このコラムはメールマガジンで公開したものです。

齋藤訓之
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Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。「FoodScience」(日経BP社)では「食の損得感情」を連載。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。日本フードサービス学会会員。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ → ※齋藤訓之のブログ →