イグ・ノーベル賞のタマネギ

ハウス食品は切っても涙が出ない辛みのないタマネギ「スマイルボール」を発売する。これの開発につながった研究は2013年にイグ・ノーベル化学賞を受賞した。

  • 涙が出ないタマネギ「スマイルボール」。
    涙が出ないタマネギ「スマイルボール」。
  • 「スマイルボール」のロゴ。
    「スマイルボール」のロゴ。

販売は数量限定・チャネル限定。「Oisix」で10月29日(木)に発売の予定。また、東京都内の一部百貨店も10月末から取り扱う予定。販売価格は約400g(中玉2個相当)で450円(税別)を想定している。

「スマイルボール」は、タマネギの催涙成分(=辛み成分)が発生するのを抑えた品種。切っても目にしみず、手に付く臭いも少ないというもので、生食しても辛みをほとんど感じないため、水にさらさずに利用できる。

同社ではレトルトカレーの原材料としてのタマネギの性質について研究をしていたが、2002年に催涙成分合成酵素(lachrymatory factor synthase:LFS)を発見。催涙成分が出来るには、アリイナーゼとLFSが必要なことを発表し「Nature」に掲載された。

さらに、催涙成分生成の仕組みがわかったことで、その反応が進まないタマネギが「涙の出ないタマネギ」となると考え、重イオンビーム照射したタマネギの中から催涙性の弱いものを選抜育種する研究を開始。2012年にアリイナーゼの働きが著しく低いタマネギの作出に成功し、これをこのほど「スマイルボール」と名付けて販売することになった。

この間の2013年には、2002年の「Nature」掲載論文により、イグ・ノーベル化学賞を受賞した(※)。「タマネギが人を泣かせる生化学的なプロセスは、科学者が考えていたより複雑であることを、明らかにした」ことが受賞理由。

催涙成分の弱いタマネギの育種については遺伝子組換え技術を用いた手法での研究もあるが、今回ハウス食品が発売する「スマイルボール」はこれに当たらない。

※2013年イグ・ノーベル化学賞受賞者
今井真介(ハウス食品ソマテックセンター)
柘植信昭(同)
朝武宗明(同)
永留佳明(同)
長田敏行(東京大学名誉教授、法政大学教授)
熊谷英彦(京都大学名誉教授、石川県立大学長)