コンビニエンスストアのこれから(5)新たな道を、業態の存在意義から考え直す

コンビニエンスストアに関する問題点
コンビニエンスストアに関する問題点
コンビニエンスストアに関する問題点
コンビニエンスストアに関する問題点

前回掲げた諸問題を解決するには、個別の問題をつぶしていくよりも、そもそもコンビニエンスストアの存在意義が何であるかを問い直すことから考えるべきだ。その上で、フランチャイザーがフランチャイジーの利益を確保する方法を、いま一度考え直す必要がある。

コンビニエンスストアの存在意義は何か

 コンビニエンスストア(以下CVS)の現状の問題点の解決を考えるには、まず現在の社会におけるCVSの存在意義のレビューから始めるべきだろう。これは遠回りだが、急がば回れで、この方が回答に早く確実に到達できるはずである。

 問うべきは、CVSが提供するべきは「何が」「誰に取って」の「利便性」かということである。

 たとえば、東日本大震災を通じて見えたものは何であっただろうか。この不幸な災害は、我々の社会の実像も明らかにした。

 その中の一つの現実は、少子高齢化が進展が進んだ高齢社会の現実である。また、買い物や各種の社会的サービスについての“難民多発”“弱者多発”も記憶に新しい。

 この社会的現実に対して、自らも年齢的にも高齢化しつつある在来店のフランチャイジー(以下FCジー)=オーナーを、有効に統括し、この社会問題に現実的に取り組むことがCVSの使命の一つとなる。

 もちろんそれはボランティア的な社会運動ではなく、社会から受け容れられるビジネスとして展開され、安定的に運営できなければならない。

 そのビジネスモデルを追求する中で、価格競争から脱却する“コト売り”“価値売り”を再開発することを目指す。そしてそれによって、広範で膨大なネットワーク化されたCVSの優位性が発揮できるはずだ。

隗より始めよ

 この動きは、もちろんCVSのフランチャイザー(以下FCザー)から着手する必要がある。チェーン本部は何よりも、一層フェアに既存のFCジーの現場で起こっている問題を抜本的に改善するビジネスモデルに変化・進化させる努力を加速させる必要がある。

 FCジーにまつわる“三現”(現地・現物・現状)を、FCザーの視点から見下ろすのではなく、FCザーの第一顧客であるFCジーの視点に立って、新しい方策の再構築を行う必要があろう。

 自らの資金を投資しているFCジーのオーナーにとって、かつてのように“儲かるしくみ”として再構築できなければ、新たにFCジーを集めることも困難になる。これは当然、FCザーが展開しようとする各種のサービス提供の推進にも支障をきたすことにもなる。

 もっとも、最近のCVS経営者はいわゆる個人FCジーへの依存度が低くなり、駅ナカや、病院、学校、官庁、郵便局、大型オフィスビル等、組織力のある法人FCジーが増えているから、現時点では、私が経営体験から感じている労務をはじめとする諸問題に対しては、FCザーの実感は薄いかもしれない。しかし、法人FCジーであればさらに経済合理的に経営判断をするため、収益が上がらないビジネスモデルには投資しなくなるだろう。

 また、これら新しい立地を有利に抱えているFCジーの増加は、当面は安定した成長に資するだろうが、この路線を強化し過ぎれば、これまでせっかく作り上げてきた、きめ細かに地域社会をカバーするネットワークに穴を開けることにもなる。放置すれば、やがては貴重なネットワークの持つ強みを他者に奪われるか、あるいはCVSの将来的な社会的使命を放棄せざるを得ない結果にもつながりかねない。

 いずれにせよFCザーが核となって、顧客、FCジーの三者が「Win-Win-Win」の関係性で発展できるように「変化」を実現することが必要だ。変革をもたらし得るのは、“三現”に合った政策を導入できる強権を持つFCザーからである。

 CVSチェーンにおいてFCジーがチャネルの政策を変更できるような力関係・交渉力は持ち得ないのが現実である。

相互に“Delightful”で“Profitable”な関係を

 私はハーレーダビッドソンジャパン(以下HDJ)在職時代、販売店への影響も大きな政策変更を行ったが、その際の業務負担や投資を必要とするものについては、常に「まずHDJから始めます」と販売店に宣言してから取り組んだ。そしてその言の通り、販売店に対する支援策を含めてHDJが先導し、負担も負った上で政策として展開した。

 言うまでもなく、これは販売店との絆の形成には大変有効であったし、この絆が強力な販売網としての“ファミリーの結束”を強め、販売網全体の力を高める好循環を生んだ。

 その経験からすると、現在の多くのCVSチェーンは、FCジーを大切にしているかどうか、はた目からは疑問を抱くのである。現状のままではFCジーから見たFCザーに対する“顧客満底度”は低下の一途にあるのではないか。その疑いを、FCザー自身が持っているかどうか、自ら問い質していただきたい。

 ビジネスにおける長期の関係性は、すべからく相互に“Delightful”(喜びを与える)であり、“Profitable”(利益が出る)なものでなければならない。さもなくば、お互いが不幸になるだけだ。

 とくにCVS業界においては、FCザーとFCジーはあらゆる点で格差が大きすぎる。であればこそ、圧倒的強者であるFCザーが、圧倒的弱者であるFCジーに対して“愛と真実で適正利潤を確保”する政策を打ち出すべきであろう。

About 奥井俊史 106 Articles
アンクル・アウル コンサルティング主宰 おくい・としふみ 1942年大阪府生まれ。65年大阪外国語大学中国語科卒業。同年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。中国、中近東、アフリカ諸国への輸出に携わる。80年初代北京事務所所長。90年ハーレーダビッドソンジャパン入社。91年~2008年同社社長。2009年アンクルアウルコンサルティングを立ち上げ、経営実績と経験を生かしたコンサルティング活動を展開中。著書に「アメリカ車はなぜ日本で売れないのか」(光文社)、「巨象に勝ったハーレーダビッドソンジャパンの信念」(丸善)、「ハーレーダビッドソン ジャパン実践営業革新」「日本発ハーレダビッドソンがめざした顧客との『絆』づくり」(ともにファーストプレス)などがある。 ●アンクル・アウル コンサルティング http://uncle-owl.jp/