サプリの専門家と言えば、医師ではなく医学博士です

テレビ通販のコメンテーターのことを書いてきましたが、もう一人、テレビ通販ならではとも言える人たちがいます。それが、商品を“科学的見地から解説してくれる専門家”。実はこの専門家を巡っても、いろんな規制やいろんな業界ウラバナシがあるんですよ~。

「お医者さんはダメなんです」

 たとえばコラーゲンがウリの商品があるとします。仮に「びっくりコラーゲンサプリ」という商品としましょう。この説明を進める過程で、「そもそもコラーゲンって体でどんな役割をするんでしょう? そこでこの方に聞いてみました」と登場するのが、ここで取り上げたい“専門家”たちです。

 しかし! ある肩書きの方々は登場できないんですね~。さてどんな肩書きの人たちでしょう? 答えはなんと「医師」! そう、通販の健康食品について、番組で医師はコメントできないんですね~。

 ただ、このお話は、筆者が担当した複数のキー局などでの体験談に基づきます。一部ローカルやCSではこの限りでないこともあります。念のため。

 でも、しかし、現実には、本業で医師をしている人たちが登場しているんです!

 ??? よくわからなくなってきました?

 実は、医師をしている人が違う肩書きで登場しているんですよ。どんな肩書きかというと……「医学博士」という肩書きで登場するのです。

「白衣も禁止なので」

 健康食品の通販で登場する専門家は「医師はNG、医学博士はOK」ということなのですが、一体なぜなのか? これはやっぱり、この道のキホン、「健康食品はクスリではない」という前提があるからです。

 医師というのは病気を治す人ですね。健康食品は病気を治すものではありませんから、医師がその成分について解説するのはよろしくないというわけです。

 では医学博士はなんでいいの? それは、医学博士は医療をはじめ人間の体や栄養その他のことを幅広く研究している“研究者”というわけで、直接的に人間の病気を治しているわけではない、という解釈みたいなんですね。「医学博士」というのは、学位を示す肩書だと。なので、学問的な知識として、栄養成分の解説をするのはまあよかろうと。

 こんなこと、説明すれば説明するほど、読んでいる方は「なんじゃそりゃ?」と思うでしょう。

 さらに、これもほとんどのキー局でそうですが、「医学博士という肩書きで登場する場合も、白衣を着て登場してはいけません」という規制があります!「医師」という肩書きだったり、「医師をにおわす表現」つまり白衣着用で、商品に権威づけをしちゃいかん、というわけです!

「人命にかかわることっていう意識は足りないかな」

「そんな細かいこと決まっているのか~」と驚いたりあきれたりしている人も多いかもしれませんが、「医師の肩書きで出ちゃダメ、白衣も着せちゃダメ」という規制は、個人的には必要な規制かな、と思います。

 というのは、とにかく健康食品のスポンサー側は、言えることはすべて、あれも治るこれも治る、外国ではこの成分でこれが治っている実績がある、など少数事例に至るまで言いたがるものなんです。これを許すとどうなるか? 視聴者の側には、本当にある病気でお悩みで、何かいいものはないかと必死の思いで見ている方もいる可能性は十二分にあるわけです。そんな方が、病院から処方されている薬をやめてその健康食品一本にのりかえるなんてことも起こり得ます。すると、人の生命を左右することにつながるんです。

 ところがですね。スポンサーおよび制作スタッフ(どちらも、会社の気質によってそれぞれに違いはありますが)は、健康食品の通販番組が、そこまで影響をおよぼす可能性があることを自覚しているかというと、そうでない場合が比較的多いです。

 どうしても現場は「売れるか?」ということがメインテーマになり、売れるためにセンセーショナルなことを入れ込めるだけ入れ込みたくなる。

 もちろん根拠がないウソまで入れることはないですけどね。一部一般の健康番組では、捏造が問題になったことがありましたが、健康食品や化粧品の通販では、仕組み上、そこまではできないと思います。効能などを語るときは、すべて“証拠”が必要となってきますので。

 ちなみにこの“証拠”を、なぜか通販業界ではいつの頃からか“エビデンス”と横文字で言うようになりました。いわゆる広告代理店用語なんですが、筆者的にはこの言葉、非常~にイラッとします!「証拠」「裏付け資料」など、誰でもわかる日本語でよいものを、なぜ「エビデンス」なんて横文字にせんといかんのだ! と。

 話が横にそれましたが、この通販の“専門家”のお話は、まだまだあるので次回も。

About 森畑たけし 65 Articles
通販番組制作担当者 もりはた・たけし 1975年生まれ。通常のテレビ番組と通販番組を手がけて12年。ひと昔前、一段下に見られていた感のある通販番組とその市場の成長に驚くばかり。同時に「やっててよかった~」とありがたい食い扶持があることにホッ……。しかし、膨大なグルメ情報、健康情報、お得情報などを発信し続けていながら、本人は全く活用できていない。自分が通販アイテムを買って続けるなら髪関係だろうかと、毛根と〆切が気になる人。