中国では果物不足に陥らない

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多様な食物を摂ることが健康維持に有効である。その選択の中に含めたい一つが果物だ。ただし、日本では若者を中心に果物の消費が減少しており、栄養面で問題がある。理由の一つには皮をむくのが面倒ということがありそうだ。中国ではそのような心配は無用である。

種類豊富で消費量も多い中国の果物

中国のミカン。けっこう甘い。
中国のミカン。けっこう甘い。

 本記事では、農林水産省の果物の定義()を採用しない。一年生草本植物であっても、甘い果実は果物である。中国では果物のことを「水果」(スイグォ)という。日本で見かける果物は、中国ではすべてそろっているといってよい。そう言うと「温州ミカンはないだろう」というツッコミが聞こえそうだ。ところが、少し小ぶりだが大差ないミカンが存在する。

 中国ならではと言える果物がある。キウイフルーツがそれである。名称こそニュージーランドのシンボルたる飛べない鳥キーウィにちなんだものだが、原産地は中国である。日本では一般的ではないドラゴンフルーツやスターフルーツも店頭に並ぶ。さらに、ドリアンもよく見かける。中国で通常売られているのは、臭気を少なく改良した品種である。

 世界の果物消費で上位になる国はどこだろうか。オランダが1位で、1日当たり444gである(2011年)。オーストリアの1日400gがこれに続く。それらに比べると中国は1日223gで決して多いとはいえない。それでも、日本の厚生労働省が示す目標200gをクリアしている。そして日本は1日140g、129位と、先進国中最低レベルである。

※農林水産省では、「概ね2年以上栽培する草本植物及び木本植物であって、果実を食用とするもの」を果樹として取り扱っており、一般に「果物」と呼ばれるものでも一年生草本植物(メロン、イチゴ、スイカなど)などは「野菜」として取り扱っている。

マンゴーは中国の楽しみの一つ

三枚に下した小マンゴー。
三枚に下した小マンゴー。

 中国の水果店はいくつかの形態がある。多いのが個人小店舗(中国ひとり歩記第2回)である。もちろん市場(中国ひとり歩記第5回)でも主要な商材である。さらに、日本と同等のスーパーマーケットに加え、露店での販売が存在する。これらについては改めて紹介しよう。

 個人小店舗では、無料で果物の皮を剥き、一口大にカットしてパック詰めしてくれる。スーパーでも同様のパック詰め果物が販売されている。

 筆者が購入するのはコスパがよい果物である。中国でしか味わえないという条件も加わる。その代表と言えるのが、小ぶりのマンゴーである。中心に薄い板状の種子が存在するので、魚と同じ要領で三枚に下ろす。上下の果肉部分は縦横に切れ目を入れ、中央の種子部分は付着する果肉部分を前歯ではがしとる。

 うっとりするほど、美味である。

 中国の果物で残念なものも記しておこう。味がささやかな果物も存在する。いや、はっきり記そう。甘味に乏しいのだ。旬のサクランボやイチゴが挙げられる。どちらも、多少小ぶりであっても、観た目は実に美しい。ただし、口に含むと期待感とのギャップにガッカリしてしまう。中国の方が山形の佐藤錦を味わったら、目を丸くするに違いない。

 価格について触れておこう。リンゴやナシが3.95元/500g(59円、1元=15円)、約20cmの文旦が10元(150円)と格安である(2019年12月)。これはスーパーの価格で、個人小店舗ではさらに安価に購入できる。

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About 横山勉 99 Articles
横山技術士事務所 所長 よこやま・つとむ 元ヒゲタ醤油品質保証室長。2010年、横山技術士事務所(https://yokoyama-food-enngineer.jimdosite.com/)を開設し、独立。食品技術士センター会員・元副会長(http://jafpec.com/)。休刊中の日経BP社「FoodScience」に食品技術士Yとして執筆。ブログ「食品技術士Yちょいワク『食ノート』」を執筆中(https://ameblo.jp/yk206)。