本当だった「距離は死んだ」

 そろそろ今年を振り返る頃になってきました。もちろんまたいろいろなことがあったのですが、自分の経験ではなくひとから聞いただけで心に受けたインパクトの大きかった話の一つはこんなものです。

 レストランを経営している友人がこの春北海道の離島へ旅行しました。親戚の結婚式に出るためだったそうです。この友人の親戚である新郎が離島に暮らしていて、東京から新婦を迎えたとのこと。

 それで、友人がお祝いを述べたあと、ところでと花嫁に聞いたそうです。愛があるとはいえ、東京に暮らしていた人がここで暮らすのに不自由は感じなかったのですかと。なにしろこの花嫁さんは、けっこう凝ったものを作る料理好きな人で、レパートリーにはエスニック系のものもある。友人は素朴な疑問として、珍しい食材や新しい調理器具などを探して手に入れる、そういう楽しみはどうするのだろうと思ったわけです。

 ところがご本人は全く心配ないとにっこり――「Amazonですぐ届きますから」。

「トム・ピーターズの起死回生」(”The Circle of Innovation” http://amzn.to/1zLLewT)に「距離は死んだ」という見出しを見つけて、「まあね、昔に比べればそうでしょ」なんてつぶやいていたのが16年前。しかし、今度ばかりは本当にそうなっているんだとわかりました。

 国が地方再生とまたぶつぶつ言っていますが、本当の変化は官が起こすものではなく、民間で、自然に、そして突然雪崩を打つように起きるものなのでしょう――10年後、いや5年後、あなたはどこに住んで何を食べていると思いますか?

※このコラムはメールマガジンで公開したものです。

齋藤訓之
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Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。日本フードサービス学会会員。戸板女子短期大学食物栄養科非常勤講師。東京栄養食糧専門学校非常勤講師。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ →