「波動」の正体(2)

5円玉のダウジング。「どれどれ、この本にはいいことが書いてあるかな?……読めばわかるか」
5円玉のダウジング。「どれどれ、この本にはいいことが書いてあるかな?……読めばわかるか」
5円玉のダウジング。「どれどれ、この本にはいいことが書いてあるかな?……読めばわかるか」
5円玉のダウジング。「どれどれ、この本にはいいことが書いてあるかな?……読めばわかるか」

《6月25日の続き》私が「は?」という顔をしているのを見て、彼はいみじくも言った。「電気的な意味は全くないそうです」。言われてみて納得。「そういうことか!」と二人で合点した。それが“科学的な何か”である必要はなかったのだ。もちろん、構成作家のその人もそのことを見抜いているのだ。

 謎の機械の使い方はこうだ。左手の指で、機械表面の指定された部分を軽くこすり続ける。その動作を続けながらつまみを回していくと、「ある段階で左手の指先がざらざらして感じたり、温かく感じたりと変化を感じる。そのときのつまみの目盛りが指している値が、波動値」なのだそうだ。波動値を調べたい対象物を機械に載せたり、物ではなくどこかの場所を対象とするならその地図の上で調べたり、頭の中で想像しながら操作する。

 要は、「波動値」なるものを決めているのは、機械ではなく、機械を操作しているその人なのだ。その人が感じ取った“波動”の存在を、OリングテストがON/OFFで返すのに対して、このラジオニクスの機械の場合は、数字で返してくる。その違いだけで、ヒトが感じ取った何かを利用しようとする原理は同じだ。

 これならタバコで悪い値が出たり、神や仏で異常値が出たり、「ありがとう」と「ばかやろう」で異なる値が出たりするのも、まあ、うなずける。

 これと似たものにダウジングがある。振り子、L字やV字のロッド(棒)などを持って、その動きで地中の水道管、水脈、鉱物のありかを探すというもので、かなり昔から世界のあちこちで行われていたらしい。これも、振り子やロッドにはなんの仕組みも仕掛けもない。人間の勘や“第六感”を可視化するだけのものだ。

 勘や第六感と言っても、テレビの超常現象番組やSF小説に出て来るような超能力の類ではなく、「ピンと来た」「なぜか分からないけれど、変だと思う」と感じるようなものの類だ。意識には上らないけれど、ヒトが感じ取っている何かの情報を引き出して利用しようというのが、ダウジングやラジオニクスなのに違いない。

 そうであれば、例えば中が見えない2つの袋の一方にはタバコを入れ、一方には害のない何かを入れるというようにブラインド・テストの形としたとしても、被験者は実験者の微妙な表情、しぐさ、声の様子から何かを感じ取って、ダウジングやラジオニクスで何かを当てるということが、ある程度可能かもしれない。恐らくそれは、「どちらが体にいいか」を当てるのではなく、「どちらの袋にタバコが入っているか」を当てるのだ。

 そしてダウジングもラジオニクスも、使いこなし、精度を上げるにはスキルが要るのだと言う。「勘を鍛えろ」というわけで、これはつまり、「刑事の勘だ!」「記者の勘です!」「女の勘よ!」というのと、ほぼ同じ種類の人間の能力を利用しているものと思われる。

 言うまでもなく、「○○の勘」の類は「そういうものはありそうだ」というだけで、一部は心理学や脳科学で研究されてはいても、全般的にメカニズムまで解明されているわけではない。だから、ダウジングにせよラジオニクスにせよ、自分のリスクで、自分の仕事に使うのは自由だが、それはあくまでも個人の仕事や遊びのスタイルの話だ。

 ひとにものを売るに当たっては、他の科学的な検査をしっかりするべきだし、「ダウジングで好いと出ました」「波動値が○○のおいしい野菜」などとは言うべきではない。まして、「この野菜は農薬をかけたから波動値が○○と悪い」などと言って、誤解させるのはいけないことだ。勘だけで犯人と断定する刑事がいれば困るというのと同じこと。また、そもそも熱意を込めて伸ばすべきスキルは、もっと他にあるはずだ。

 波動ファンの農家が、どうしても波動を“測定”した結果を買い手に伝えたいとしたら、こう言うのは許されるだろう。「うちの野菜はうまいですよ。農家の勘です!」。

※このコラムは「FoodScience」(日経BP社)で発表され、同サイト閉鎖後に筆者の了解を得て「FoodWatchJapan」で無償公開しているものです。

About 齋藤訓之 392 Articles
Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。戸板女子短期大学食物栄養科非常勤講師。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。日本フードサービス学会、日本マーケティング学会会員。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ →