ワインを襲う3つのダメージを避ける入手方法

「温度」「過剰酸素流入」「撹拌」という3つのダメージを考慮した場合、愛飲家なり小売店なりはワインはどのように取り扱うべきか。たとえ話で明らかにしておく。それにつけても問題は平箱の存在だが、これが必要な理由はないということも確認しておく。

長野での消費に北海道経由は選べない

 私がもし長野県に住むワイン愛飲家であったなら――。

 東京都内の輸入業者が扱うワインは、東京都内の信頼できるワイン・ショップに注文するだろう。それも、春・秋の気温変化の少ない季節を選んで、アソートで12本単位で注文する。この数がまとまれば、他の荷の隙間に寝かされた状態で届くことを避けやすい。しかも、発送に際しては別途料金がかかっても堅牢な縦箱への詰め替えを依頼する。宅配便で送ってもらうが、発送日は天気予報を調べた上で決める。昼夜間の温度差が少なく、可能な限り曇天となる日を選んで指定するのだ。

 インターネット通販の普及で、最近は全国各地のワイン・ショップやネット通販業者がさまざまなワインを扱っている。Webサイトで品ぞろえを見れば、中には心引かれる価格や希少品も見つかるだろう。しかし、そこで簡単に手を出すわけにはいかない。とくに、そのショップや業者が北海道や関西から発送するとわかれば、長野県に送ってもらおうとは考えない。東京から大きく迂回する“余分な旅をしたワイン”となるからだ。

 もしも、夏場や厳冬期など、東京から発送してもらうのに適切でない時期に予定外にワインが必要となった場合は地元で探す。長野市や松本市のワイン・ショップへ出向いてボトル状態をチェックして買い求め、もちろん正立状態で自分自身で持ち帰る。

自分で走れば経路上のダメージ・ポイントも発見できる

 私がもし秋田県のワイン・ショップ経営者であったなら――。

 東京都内の輸入業者のワインは、その業者に直接取引きで発注する。もちろん、春・秋の気温変化の少ない季節を選ぶ。高級ワインはアソートで12本単位で、中級ワインはケース単位で注文する。これらが平箱横臥詰めであったならば、やはり別途料金がかかっても堅牢な縦箱に詰め替えを依頼する。並級ワインの場合は縦箱正立詰めであることが普通だが、もちろんそうであることを確認する。以上を取りまとめて、天気予報を調べ、昼夜間温度差が少なく可能な限り曇天日を指定して宅配便発送してもらう。

 もしも路線便運送業者に輸送を依頼する場合には、所要日数、中継集荷場の機能と自店との距離を確認し、適当と言えるかどうかを考えて依頼するように努める。

 また、年に2~3度は自分自身で東京まで車で仕入れに出向く努力も必要である。これには、自分で品物や人や設備を見たり、交渉したりといったこと以外のメリットがある。すなわち、長距離トラッカーが休憩する時間帯と場所を確認したり、ルート中に隠れたダメージ・ポイントを発見できる場合があるのだ。それは、たとえば昼間灼熱となるサービスエリアであったり、工事のために長い区間にわたって凹凸の出来た道であったりするかもしれない。

 地元の酒類卸業者から仕入れる場合は、保管設備の機能、輸入業者からの搬送時期が適切であるか、縦箱正立詰め輸送品であるかを確認して仕入れる。平箱横臥詰め輸送品は仕入れないことが肝要である。

平箱でなければならない理由はない

 平箱横臥詰めは、これまで述べてきたように輸送段階の不都合を考えれば受け容れられない荷姿である。それなのに、なぜ平箱横臥詰めはなくならないのだろうか?

 それは、一つには天然コルク栓を採用しているワインのコルクの乾燥萎縮防止のためである。実は、縦箱正立詰めワインの場合も、中身が天然コルク栓ボトルであれば、長期保存や長期間を要する海上輸送に際しては横置きにせざるを得ない。ところが、縦箱正立詰めのパッケージを横置き状態にして3段以上重ね積みすると荷崩れする確率が非常に高くなってしまう。そこで、その問題を避けるためにも最初から平箱を選ぶということが行われる。

 ばかげた理由であると私は思う。

 天然コルク栓ワインのコルクの乾燥萎縮防止と、重ね積み時の荷崩れ防止は、平箱を用いずとも解決可能なことなのだ。

 その方法の一つは、第72回で述べたように、ボトル単位でフィルムで常圧完全密封した上で、堅牢な縦箱に正立で収めて梱包することだ。

 もう一つの手段は、横置きしても変形しにくく、3段より多く重ね積みしても荷崩れしない堅牢さを備えた縦箱を開発すればよいだけのことである。第60回を参照いただきたい。

 パッケージの強度を高めるには、強度のある素材を選ぶことと、箱の構造を工夫することが考えられる。素材は、段ボールのフルート(断面の波板状部分)密度を適切に選んだり、Wフルート(フルートが2層のもの)を採用するなどが考えられる。

 箱の構造も、中仕切りのフルートは通常天地方向を向いていて、上からの加重には強く左右からの加重には弱くなっているが、全部または部分的に横方向向きとする構造も考えられるだろう。あるいは、中仕切りにはWフルートでしかも、2層の波状部分の方向が同一ではなく垂直に交差するような素材を使えば、縦・横両方の強度が高まるのではないか。開発の余地はたっぷりありそうだ。

 これらを検討の上、ボトル単位でフィルムにより常圧完全密封で横置きを避けるか、横置き可能な堅牢さを備えた縦箱を開発するか、どちらかコストの低いほうを選べばよい。どうしても平箱を使い続けなければならない理由はないはずだ。

大久保順朗
About 大久保順朗 82 Articles
酒類品質管理アドバイザー おおくぼ・よりあき 1949年生まれ。22歳で家業の菊屋大久保酒店(東京都小金井市)を継ぎ、ワインに特化した経営に舵を切る。「酒販ニュース」(醸造産業新聞社)に寄稿した「酒屋生かさぬように殺さぬように」で注目を浴びる。また、ワインの品質劣化の多くが物流段階で発生していることに気付き、その改善の第一歩として同紙上でワインのリーファー輸送の提案を行った。その後も、輸送、保管、テイスティングなどについても革新的な提案を続けている。