ドイツ・ワインの縦箱のメリットは堅牢性だけでなく気密性にもある

ドイツ・ワインの縦箱は、フランス・ワインのそれよりも丁寧かつ堅牢に作られていて、高級ワインにも縦箱が使われる傾向が見られる。それが可能になったのは、パッケージの気密性を高めたことによると考えられる。

ドイツ・ワインの堅牢なパッケージ

 ここで注目すべきは、ドイツのワイン業界の縦箱パッケージである。フランスの縦箱パッケージと比べて上質・堅牢な段ボールが使用され、フランスとは異なる工夫が施されているものが多い。

 高級ドイツ・ワインのパッケージで注目すべきは、まず設計と組み立ての丁寧さである(例外もあるが)。まず、側面から天地面内側へ折り込むツバの部分は十分な幅を持たせて作ってあって、折ったときに中央に隙間を作らないようになっている。その上、その接合部の合わせにズレがない。このため、天地面の蓋部分をこれらに重ねると2枚重ねの状態となる構造としているものが多い。

 また、側面接着部の接着剤塗布方法が複数の点状ではなく線状となっており、しっかりとした面接合となっている場合が多い。しかも、天地の接合部をテーピングしている丁寧な処置も見られる。

 加えて、中仕切りはパッケージ内部の天地いっぱいに長さを確保しており、パッケージ内は12の完全に独立した小部屋に分かれているのだ。これならば断熱効果は上がり、外からの荷重によるパッケージの変形も防ぐことができる。

 ドイツにはこのように堅牢で気密性の高い箱があるため、かつては「4本×3段」タイプの平箱使用が多かった高級ドイツ・ワインでも、縦箱を使用する場合が増加傾向にある。

 では、このドイツ・ワイン業界のパッケージに対する丁寧な配慮はなぜ起きたのだろうか? 推理してみよう。私の推理は2つの理由を導き出した。

 一つは、段ボールの保温効果を最大限に確保するためというものだ。その狙いで密閉度を上げるため、隙間を作らない工夫を凝らしたのだろうという推理だ。なにしろ最北のワイン産地のことである。しかも、輸出に際しては、北緯50度前後の産地から北緯52度を超える北海沿岸の港湾を経由しなければならないのである。

 もう一つは、ドイツ・ワインのボトルが細長く、おのずと縦箱も細身になることだ。これを倒立状態で出荷すると、荷崩れを起こす危険性は高い。そこで縦箱正立状態で出荷するためには、コルクの乾燥萎縮を防止する意味でも、箱の密閉度を上げる必要があったのだろうと推理できる。

 では、これらのドイツ・ワイン業界の姿勢をフランス・ワイン業界も導入するとどうなるだろうか? まず、荷崩れ事故はほぼ発生しなくなるだろう。そして、コルク栓が乾燥萎縮を起こすに至るまでの時間を大幅に延長させることができるはずである。

コルク栓ボトルでは常に蒸発が起きている

 なお、一つお断りしておきたいことがある。マット・クレイマー氏の著書「ワインがわかる」(塚原正章・阿部秀司訳、白水社)にあるコルク栓の乾燥についての同氏の考え方と、私が経験と実験から知っている事実とは異なるということだ。

 同氏はコルク栓の気密性は非常に高く、乾燥しても気密性は損なわれないと言っておられるが、私はそう考えていない。とくに「デファンスール」というパッケージを開発した後はそれを確信している。

「デファンスール」については後日詳述するが、特別な構造を持たせた樹脂製の袋でボトル全体を包み込むしくみだ。このパッケージにコルク栓使用ワインと湿度計を一緒に封入する実験を繰り返した結果は、早いものでは数十分、遅いものでも数時間内でパック内は湿度100%に達したのである。つまり、通常の状態ではコルク栓をしたボトルからの蒸発は常に続いているということだ。

 さらに数カ月のパック貯蔵後に抜栓したコルク栓は抜きやすく、縦割りして断面を確認したが、コルク栓の中心まで全体が湿潤な手触りであったのだ。このパッケージに収めずに乾燥したコルクの水分はどこへ行ったのか。もちろん、大気中に放出されているのだ。

 同様の実験は一般のポリ袋と湿度計があれば再現が可能だ。ぜひ一度お試しいただきたい。

About 大久保順朗 82 Articles
酒類品質管理アドバイザー おおくぼ・よりあき 1949年生まれ。22歳で家業の菊屋大久保酒店(東京都小金井市)を継ぎ、ワインに特化した経営に舵を切る。「酒販ニュース」(醸造産業新聞社)に寄稿した「酒屋生かさぬように殺さぬように」で注目を浴びる。また、ワインの品質劣化の多くが物流段階で発生していることに気付き、その改善の第一歩として同紙上でワインのリーファー輸送の提案を行った。その後も、輸送、保管、テイスティングなどについても革新的な提案を続けている。