ラベルに潜む危険(1)

ボトルの結露の結果、ラベルが破損・汚損し、貼り替える必要を生じる場合もある。だが、これにはやっかいな問題もある。とくに注意が必要なのは、傷のついたラベルを剥がす方法と、貼り替え用ラベルの管理だ。まず、そもそもワインのラベルというものがどのようなものかから説明する。

ラベルの貼り替え

 さて、結露によってラベルが擦り切れたり中仕切りの中仕切りの段ボール片が貼り付くといった汚損を生じたワイン・ボトルはどうするか。これは貼り替えるしかない。貼り替えるためには、汚れたラベルを剥がさなければならない。

 ではどのように剥がすのか? これは大きな問題だ。ラベルが破損・汚損しながらも中身は無事だった場合でも、この作業が新たなアクシデントを招来する場合があるのだ。

 ラベル貼り付けに使われている糊が澱粉糊である場合は、ボトルを水や温湯に浸し、糊が溶けてラベルが剥がれるのを待つ。直近に出荷予定がなければ、貯蔵庫と同温度の水を使えばよい。

 しかし、貼り替え量が膨大であったり、出荷予定が迫っている場合はやっかいだ。期日までに貼り替え作業を完了させるには温湯を使うことになるが、そこで何℃の温湯で糊をふやかすかが問題となる。

 湯の温度が高ければビン口から液漏れを起こし、従前の温度に戻るときには新たなビン内酸素流入を引き起こして、ワインの酸化が進行してしまう。

 それ以上に出荷予定が迫っていれば、そう悠長なことはやっていられない。その場合は、カッターなどの刃物でラベルをこそぎ落とし、わずかに残った残屑は濡れた布で拭き取る。これは人海戦術の力技であり、作業コストは高い。水に溶けない合成糊が使われている場合も、溶剤を使うよりこの方法がよいようである。

予備ラベルの管理は要注意

 ところで、貼り替えるラベルはどうするのか? これは原産国の蔵元から送ってもらうしかない。だが、良心的蔵元であるほどに簡単には応じてくれない。商品偽装の危険性があるからだ。長い取引の実績の上に構築された信頼関係がなければ応じられない要請なのである。

 だが逆に、長い取引の間に事故発生率が把握できるようになってくると、予め一定率で予備の貼り替え用ラベルを蔵元が送ってくれる場合もある。この場合は、その予備のラベルを誰が保管するかが問題となる。もちろん、現場の誰かが勝手に持ち出せるようでは困るのだ。

 その理由を述べるためにも、ワインの履歴書と言ってもいいラベルについての考察をもう少し詳しくお話しよう。

ラベル記載内容は整理されたが

 ワイン・ボトルのラベルは、通常大きいラベルが表(メイン)ラベルであり、ワインの産地名・ブドウ品種・ボトル容量・アルコール度数・収穫年・ワイン生産者名・ビン詰め業者名等々が記載されている。一方、通常小さいほうのラベルは裏(バック)ラベルと呼ばれ、少し前までは輸入業者名や添加物表示・アルコール分表示・エキス分表示等が記載されていた。

 このうち、エキス分表示というのは全く意味がわからなかった。さらにアルコール分表示はメイン・ラベルに記載された数値と合致していないものが大半であった。また、添加物表示に酸化防止剤使用の表示があったりなかったりしたものだ。これらは消費者に混乱を与えた。

 今の主流の表示はアルコール分に関しては「表ラベルに記載」のただし書きとなり、わけのわからないエキス分表示は姿を消したようである。

 一方、最近は生産者あるいはビン詰め業者による注意書きやセールストークを記載した裏ラベルを貼っている場合が増えた。それゆえ、輸入業者名を記載した裏ラベルは所在なげに小さく貼り付けされている場合が多い。

About 大久保順朗 82 Articles
酒類品質管理アドバイザー おおくぼ・よりあき 1949年生まれ。22歳で家業の菊屋大久保酒店(東京都小金井市)を継ぎ、ワインに特化した経営に舵を切る。「酒販ニュース」(醸造産業新聞社)に寄稿した「酒屋生かさぬように殺さぬように」で注目を浴びる。また、ワインの品質劣化の多くが物流段階で発生していることに気付き、その改善の第一歩として同紙上でワインのリーファー輸送の提案を行った。その後も、輸送、保管、テイスティングなどについても革新的な提案を続けている。