結露との闘い

ワインのリーファー輸送が本格化するにつれて、改善すべき課題もいくつか浮上してきた。その一つが、主にリーファー・コンテナから保冷倉庫に移動する際に発生する結露だ。これを封じ込め、品質を保つには、作業上の対策とハードによる対策があるが、それぞれ一長一短がある。冷蔵倉庫の空調のしくみの理解も必要だ。

結露=ダメージとは限らない悩ましさ

 リーファー輸送が始まってしばらくの間、ワイン・ボトルの表裏のラベルが破れたり擦り切れたり、あるいはラベルの縁に茶色い紙が付着しているものが多量に出回った。

 これは第26回で倉庫会社のベテラン作業員が言っていたように、ボトルを収めた段ボールに結露を生じた場合に、二次的に起こるアクシデントだ。

 段ボールの内側やワイン・ボトルまでに大量の結露を生じてしまうと、中仕切りの段ボール表面とボトルのラベル表面の双方がふやけ、それらが擦れ合うことで傷つく。さらに放置されると、ラベルを貼り付けていた糊が溶け始める。

 こうなると、さらに不適切な状態で長時間放置された場合でも、適切な空調庫へ収納されて時間経過した場合でも、再乾燥した時には中仕切りとワイン・ボトルが貼り付いてしまう。これを無理やり剥がすと、ラベルの縁に茶色い紙が付着した状態となるのだ。

 この状態のワインが、不適切な状態で放置され続けたものなのか、いったん結露はしたものの比較的短時間のうちに適切な空調庫へ収納されたものなのか、これを見きわめることは非常に難しい。不適切な放置を続けた時間次第では致命的ダメージを受ける場合もあるし、受けずに済んでいる場合もある。

プラットホームをいかに切り抜けるか

 汚損してしまったラベルの修復については次回以降で説明する。しかし最良の対処法は、そもそもこのアクシデントを引き起こさないことである。それには二つの方策がある。

 このアクシデントは海上輸送中やマーシャリング・ヤード留置時のコンテナ空調装置の故障や電源喪失時にも起こるが、99%は倉庫のプラットホームで起きる。空調倉庫と言えども、通常のプラットホームは外気温の支配するエリアである。

 だから、第26回の日本リカーの回想で話したように、プラットホームでの作業は夏の高温多湿期には迅速な作業遂行が求められる。これが方策の一つである。

 したがって、入出庫作業もないのにプラットホームのシャッターが降りていないような倉庫には、ワインを預けるべきではない。

 もう一つの方策は、プラットホームにドックシェルターを装備した倉庫に預けることである。

 ドックシェルターとは、トラック上のコンテナ開口部に位置とサイズを合わせたクッション付きのハッチだ。ここにコンテナ開口部を密着させるように駐車すれば、温度の高い外気に触れることなく積荷を倉庫内に移動できるしくみだ。

限界冷却能力が設定温度に近い倉庫がベスト

 ただし、ドックシェルターを装備する空調倉庫のほとんどは、極冷蔵倉庫および冷凍倉庫だ。つまり、ワインを預けるには温度が低過ぎる倉庫ということであり、注意が必要である。

 庫内温度を+15℃に指定していれば大丈夫だとも言えない。空調装置は設定した温度の冷気や暖気を送り出すわけではないからだ。とくに冷気は、コンプレッサーのガス圧縮能力次第で送気温度が決まるのである。

 具体的に言うなら、-20℃を維持できる冷凍庫を+10℃に設定運用することは可能だが、空調装置からは氷点下の冷気が送気されている可能性は大きい。+10℃の設定を維持するために、冷却装置のオン/オフを繰り返しながら庫内空気の攪拌を図っているものだ。

 したがって、装置の限界冷却能力と設定温度が近い方が、庫内温度のムラは少ない。これは倉庫だけでなく、リーファー・コンテナにも言えることである。それゆえに、当初のワインのリーファー輸送方法の基準として「冷蔵専用の20ftタイプを選択すること」を盛り込んだのである。

About 大久保順朗 82 Articles
酒類品質管理アドバイザー おおくぼ・よりあき 1949年生まれ。22歳で家業の菊屋大久保酒店(東京都小金井市)を継ぎ、ワインに特化した経営に舵を切る。「酒販ニュース」(醸造産業新聞社)に寄稿した「酒屋生かさぬように殺さぬように」で注目を浴びる。また、ワインの品質劣化の多くが物流段階で発生していることに気付き、その改善の第一歩として同紙上でワインのリーファー輸送の提案を行った。その後も、輸送、保管、テイスティングなどについても革新的な提案を続けている。