「リーファー輸送」とは何なのか?

リーファーコンテナ
20ft(フィート)タイプのリーファーコンテナ。これは修理中だ
リーファーコンテナ
20ft(フィート)タイプのリーファーコンテナ。これは修理中だ

ワインのリーファー輸送を業界に提案した大久保順朗氏が、リーファー輸送が必要と考えるに至ったワイン物流の問題の本質を語る。今回は、氏が提唱したリーファー輸送の基本と狙い、注意点をまとめる。

理想的「リーファー輸送」の条件

「リーファー輸送」とはリーファー・コンテナ(reefer container/refrigerated container=冷蔵機能付コンテナ)で温度コントロールして品物を運ぶことである。

 このコンテナの対象品目は、生鮮食品(冷凍・冷蔵)、生花、生体動植物、フィルム、化学薬品、医薬品、酒類、美術品、電子部品などと年々拡大している。

 しかし当然のことながら、ここでは酒類(とくにワイン)に特定して解説させていただく。

 25年前の、当初の「ワインのリーファー輸送」提案とは、変質し易いワインを原産国と日本の港湾部にあるワイン用倉庫の間をつなぐ区間での、品質劣化要因から守る目的で行った限定的提案であった事を前置きする。

 当時、私にとっての、ワインのための理想的な「リーファー輸送」とは、最低限、以下の条件をクリアーした輸送法を言うものであった。

  1. 冷蔵専用の20ftタイプを選択すること
  2. 積載するワイン・カートンをコンテナ内壁に密着させないこと
  3. 内壁との間にはフォーク・リフト用パレットを挟み込むこと
  4. コンテナ天井面との間は30センチメートル以上確保し、最上段のワイン・カートンの上に樹脂パネルを敷き詰めること
  5. コンテナの設定温度は16~18℃を確保すること
  6. コンテナ内部には温度記録計を積載しておくこと
  7. ワイン積載後は、電源が確保されていること

 以上を厳守して海上輸送区間を運んだワインが、私にとっての「リーファー輸送されたワイン」であった。

 リーファー・コンテナには極低温専用・冷凍冷蔵兼用・冷蔵専用の3タイプがあり、20ftと40ftのサイズがある。このうち、コンテナ内の温度差は小さな20ftの方が少ない。それゆえワイン輸送には20ftタイプが好ましいのだが、近年、コンテナ製造会社は20ftタイプの生産を縮小あるいは中止している場合が多く、手当てが難しいのが現状である。

 上記の条件とは、20ft型冷蔵専用リーファー・コンテナの機能上の欠点を、さらに補完するために決めた条件である。

 リーファー・コンテナは適正な積載方法を遵守しても、設定温度に対し最大±5℃温度差が生じる場合がある。この温度差を極力抑えるには、コンテナ内の空気循環を円滑にする工夫が不可欠なのである。

ローコストのリスク

 さらに言うなら「機械は壊れるもの」であることも肝に命ずべきである。

 昨今の酒類業界も他業界同様に“ローコスト・オペレーション”を先進経営の証のように思い込んでいる企業が多い。それで、コストを下げるために料金の安い船やコンテナを使用する。だが、そのように選んだ船会社では、船内の電源ポイントのプラグやケーブルのメンテナンス周期は長くなる。コンテナの冷却装置のメンテナンスも同様である。

 当然の結果として、事故の発生率は高くなる。海上コンテナは毎日潮風に晒され、嵐に遭遇すれば海水を浴びる環境にある。その上過積載をしてしまえば、コンテナ内の冷気循環を阻害して冷却装置の負荷が増大し、冷却パイプに穴が開いたり、プラグやコードの絶縁樹脂が劣化・破損する事態が急増する。

 実は、冷却装置の破損事故は頻発しているのだが、荷主にその事実が伝えられないことの方が多い。リーファー・コンテナには温度記録装置が備わっており、24時間記録されているのだが、この温度記録シートは荷主に対して原則非公開であり、装置が多少の期間停止してしまったとしても、荷主には報告されない。

 最近は24時間のモニタリング・システムも導入され、修理スタッフも常駐しているらしく、冷却機能回復までの時間は飛躍的に短縮はされているが、事故件数が減ったわけではない。しかし25年前は、巡回目視点検での発見に期待するのみであり、故障が発見されても修理スタッフは乗船していなかった。

 また、荷主側が独自に第三者機関の証明書を発給してもらえる温度記録計(スイスのライアン社)を搭載した場合には、海上保険料の料率が引き上げられてしまう(つまり、温度管理上の事故の確率は高いということの証左と言える)。

 私が理想とするこの「リーファー輸送」を100%実行しているワイン輸入業者は、私の知る限り皆無である。立ちはだかる壁は“ローコスト・オペレーション”優先である。

 積荷が食品の場合、食品衛生法(厚生労働省・消費者庁が所管)に照らした各種検査が待ち受けているので、“ローコスト・オペレーション”優先にも必然的にタガがかけられるので少しは安心できる(塩乾物の場合は心穏やかな情景ではない場合もある)のだが。

 酒類も食品衛生法が対象とする「すべての飲食物」に含まれるのだが、監督官庁は国税庁である。アルコールの殺菌力のお陰で生命の危険に陥るような腐敗やバクテリア増殖はない(?)のだろうが……。

About 大久保順朗 82 Articles
酒類品質管理アドバイザー おおくぼ・よりあき 1949年生まれ。22歳で家業の菊屋大久保酒店(東京都小金井市)を継ぎ、ワインに特化した経営に舵を切る。「酒販ニュース」(醸造産業新聞社)に寄稿した「酒屋生かさぬように殺さぬように」で注目を浴びる。また、ワインの品質劣化の多くが物流段階で発生していることに気付き、その改善の第一歩として同紙上でワインのリーファー輸送の提案を行った。その後も、輸送、保管、テイスティングなどについても革新的な提案を続けている。