「腐らない・カビない=食品添加物のおかげ」とは言えない

缶詰
缶詰。腐らないしくみがあれば保存料は使わない。
缶詰
缶詰。腐らないしくみがあれば保存料は使わない。
工業的な食品の製造や流通とそれに関する法律に、一般の人(消費者と飲食店従業者も)はあまり詳しくないことが、誤った情報が信じられやすいことの背景だというタクヤ。その例として、缶詰に使用できる保存料は何種類かとクイズを出していたが。

缶詰に保存料は使わない

リョウ 「来たか。ごくろう」

タクヤ 「前回のクイズの答え、調べました?」

リョウ 「あー、忘れてた。缶詰に使える保存料は何種類あるか、だったな」

タクヤ 「はい。答えは、ゼロ。今の日本の法令では、缶詰に使える保存料は、ありません」(

リョウ 「え? そうなの?」

タクヤ 「缶詰というのは、完全に密封してから加熱殺菌します。それで中身が腐ることなく、常温で長期間保存できるという、人類の偉大な発明の一つです」

リョウ 「ニコラ・アペールというフランスのおっさんが発明して、ナポレオンの政府がかけた懸賞をゲットしたんだ」

タクヤ 「あ、知ってるじゃないですか。そういう機能を持ったものなので、缶詰には殺菌剤や保存料は使わないことになっているわけです。まあ、使えと言われても使わないだろうというのは、マクドナルドや大規模農家の場合と事情は同じですが」

リョウ 「でも、むかし通ってた定食屋のおばちゃん言ってたな。『ウチは缶詰使わないのヨ。学生さんに保存料使ったもの食べさせたくないから』って。懐かしいなぁ。おばちゃん元気かなぁ」

タクヤ 「そう思ってる人って、意外と多いみたいですね。隊長もさっきまでそう思ってたわけで」

リョウ 「うるさいな。“傷まない→保存料使いやがったな!”っていうタイプの論法がよくあるというのは、『マクドナルド』とか缶詰とかの他にもあるのか?」

タクヤ 「たとえばですね、隊長『ヤマザキパンはなぜカビないか――誰も書かない食品&添加物の秘密』(渡辺雄二著、緑風出版)って本知ってますか?」

リョウ 「知らんけど、なんだか読みたくなるタイトルだな」

タクヤ 「著者が考えたのか編集者が考えたのか、やってくれるねーってタイトルですよね」

リョウ 「ヤマザキパンはほんとにカビないのか?」

●食品別の規格基準について(厚生労働省)の「容器包装詰加圧加熱殺菌食品」を参照。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/jigyousya/shokuhin_kikaku/

何を調べれば真実をつかめるか

タクヤ 「温度・湿度・時間など条件でカビたりカビなかったりすると思いますが。著者が問題にしているのは、保存料ではなくて製パン改良剤の臭素酸カリウムというものなんです。この著者は、山崎製パン(ヤマザキ)と他社のパンがカビるかどうかをお手製の実験で比べてみて、結果、他社のがカビてもヤマザキのものはカビなかったので、それはヤマザキが使っている臭素酸カリウムが原因に違いないと、ざっくり言うとそういうことを書いたわけです」

リョウ 「へー。臭素酸カリウムというのは、実際に使っているのか」

タクヤ 「少なくとも、この本が出たときにはヤマザキは使っていました。ただ、使っても加熱で分解されるので、ほとんど残りません。今は検査機器の性能がよくなって、従来では考えられなかったほどわずかな量でも検出できるようになったので、0.5ppb(=0.0005ppm=0.00000005%)以下は検出しても残留していないと認める、ということになっています」

リョウ 「そんな微量でカビが抑えられる薬なんかあったら大発明だな」

タクヤ 「この本については、長村洋一さん(健康食品管理士認定協会理事長、鈴鹿医療科学大学教授)が『FoodScience』に書いたコラムが『FOOCOM.NET』さんにあるので、そちらを読んでみてください」(下欄に一覧)

リョウ 「で、臭素酸カリウムのせいでなかったら、何でカビなかったんだろうな?」

タクヤ 「そこは長村さんのコラムを読んでください。まあ、はっきりはわからないですが、可能性として考えられるのは、ヤマザキの工場が清潔だっていうことが一つ考えられるのではと」

リョウ 「なるほど。『マクドナルド』の話も、ハッピーセット(Happy Meal)を買った店と、サリー・デイビス(Sally Davies)の部屋が清潔だったっていうことが言えるかもしれないね」

タクヤ 「実地で検証できていないので、それはカモネのレベルで。いずれにせよ、面白い現象に出くわしたら、自分の頭で仮説を立てて、何を調べればそれがアリかナシか決められるか、それぐらいまでは考えたいものです」

リョウ 「みんな忙しいんだから、そうもいかないさ」

【長村氏コラム/FOOCOM.NET】
「ヤマザキパンはなぜカビないか」(長村洋一)
「続 ヤマザキパンはなぜカビないか」(長村洋一)

【参考/FoodWatchJapan】
「『発がん性』の強さについて考えてみよう――カビとパンの例」(畝山智香子)

【参考/製パン業界】
「パン生地改良剤(臭素酸カリウム)の安全使用について」(日本パン工業界科学技術委員会小委員会)
「パンのカビ発生メカニズムと保存試験の結果について」(山崎製パン)

●このシリーズの第1話
「マクドナルド」ハッピーセットが腐らない話について

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もの書き稼業 きた・はるか 理科好きの理科オンチ。