メッセージ提示で遺伝子組換え食品「買ってもよい」が4割から6割へ

「GM食品に係るメッセージ」提示前後の受容意識変化
全体(n=1000)

バイテク情報普及会は2013年3月6日、遺伝子組換え(以下GM)作物・食品に対する意識に関する、興味深い調査報告を発表しました。適切な情報を伝えることで、消費者がGM食品を受容する方向に態度を変化させるというものです。

キー・メッセージの策定と効果測定

 この調査は、第一次調査(2012年8月、Web調査、男女2000人対象)、第二次調査(2012年11月、グループインタビュー、女性36人)、第三次調査(2012年12月、Web調査、男女1000人)という3段階で行われました。

 このうち、第二次調査では、ある種のメッセージを組み合わせて提示した場合にGM食品に対する受容意識が向上する可能性が定性的に確かめられました。

 その結果を元に「GM食品に係るキー・メッセージ」をまとめました。そして第三次調査で、キー・メッセージを提示する前後にGM食品の購入意向を尋ねたところ、提示前では「買ってもよい」と回答した人は4割を切っていたのに対し、提示後では6割が「買ってもよい」と回答しました。

 どのようなリスクコミュニケーションが消費者への情報提供に有効であるかという調査は、これまでも行われてきましたが、本調査では、キー・メッセージを具体的に策定し、効果測定した点で画期的と言えます。

 キー・メッセージは以下のとおりです。

●「GM食品に係るキー・メッセージ」

・遺伝子組み換え作物は、遺伝子組み換え技術を用いて品種改良された作物です。

・遺伝子組み換え作物は、食物アレルギー、微生物学、植物学、農学など各分野の専門家が参画する、国際基準に基づく国の審査によって、安全性が確保されいます。製品化されてから17年がたちますが、健康への影響は報告されていません。

・日本は、おコメの国内消費量の倍もの量の遺伝子組み換え作物(大豆、トウモロコシなど)を輸入している、遺伝子組み換え作物の輸入大国です。

・遺伝子組み換え作物は、食用油、コーンスターチ・甘味料などの原料や、家畜(牛・豚・にわとり)のエサなります。そして、私たちが店頭で目にするドレッシングや即席めんなど油を使用した加工食品や飲料、食肉・卵・乳製品など、多くの食品にいかされ、日本の食生活を支えています。

 回答の選択肢別の態度変容の結果は以下のとおりです。

●「GM食品に係るメッセージ」提示前後の受容意識変化

「GM食品に係るメッセージ」提示前後の受容意識変化
全体(n=1000)

 この態度変容の理由を尋ねたところ、6割の人が「キー・メッセージをみて安心した」、5割の人が「キー・メッセージをみて驚いた」と回答しています。それぞれの印象につながった点は以下のとおりです。

●意識変化の背景

キー・メッセージをみて安心した 64.6%

キー・メッセージをみて驚いた(現状認識) 52.1%

安心につながった点(上位3位の理由)
1.安全審査に様々な専門家が関与していること(含医学) 41.2%
2.国の厳しい審査で安全性が確保されていること 34.0%
3.過去に健康への影響の報告は一件もないこと 32.8%
驚き(現状認識)につながった点(上位3位の理由)
1.日本の食生活を支えていること 33.7%
2.日本が遺伝子組み換え作物の輸入大国であること 30.7%
3.食用油や加工食品、飲料などに活かされていること 28.4%

全体(n=1000)

 これは、キー・メッセージによって、GM作物が「日本の食生活を支えている」「日本がGM作物の輸入大国である」という現状に驚き、一方、「安全審査に様々な専門家が関与している」「国の厳しい審査で安全性が確保されている」と理解したことを示しています。

 裏を返せば、このような利用・消費の実態と、審査のしくみが伝わっていないということを表しているでしょう。

定着の半面で根強い不安感

 GM作物・GM食品が日本に上陸して17年が経ち、これらはすでに家畜飼料、甘味料、食用油にはなくてはならない原料となっています。

 そして、食品安全委員会が毎年行っている食品安全モニターのアンケート調査では、GM食品に不安を感じると回答した方がこの4年間で50%を割るようになりました。また、生協やAEONなど小売店の店頭では、「GM不分別(GM原料を含む可能性がある)」と表示された食品が何種類も見られるようになりました。さらに、「不分別」と表示された食用油が、やや価格の高い「遺伝子組換えでない」表示の食用油より多く売れているというデータもあります。

 このように、GM食品もやっと消費者に受け容れられるようになってきた様子がうかがわれていました。ところが、昨今のTPPに関する議論の中では「TPPに参加すると安全性が確認されていないGM作物が日本に入ってくるかもしれない」「GM食品が日本国内で表示なしに売られるようになるかもしれない」といった発言が話題となることもあり、GM作物・GM食品に対する不安は根強いものがあることがわかります。

 そして、上記のような発言がメディアで行われたり、日常の話題になるということは、GM作物・GM食品は厳しい安全性確認を受けなければ流通しないこと、食品安全委員会が審査していること、表示は消費者庁が所管していることなどを知らない人が多いことを物語っていると言えるでしょう。

さらなるリスコミ研究を

 前述のように、GMを中心とするバイオテクノロジーに関する情報提供方法については、これまでにもいろいろな研究が行われてきました。その中では、一方的な情報提供よりも、メディエーター(仲立ちになる人)を置いた双方向性の高いものや、実験や見学会などの体験型などが有効でありそうなど、知見は少しずつ進歩しています。

 また情報の到達度などの評価方法についても、アンケート調査で定量的に調べる以外に、グループインタビュー(フォーカスグループ)など定性的な調査手法も研究されています。

 このように、情報提供方法やその評価方法については多くの関係者やリスクコミュニケーションの研究者らが苦労しているところですが、正解がないのがリスクコミュニケーション手法です。リスク情報の発信者と受信者との対等な意見交換が実現するように、研究者間の情報交換・共有を一層進めていきたいと思います。

●バイテク情報普及会
https://www.cbijapan.com/

●遺伝子組み換え(GM)食品に対する消費者の意識調査
http://www.cbijapan.com/siryou/DL/20130325/CBIJ_GM_Consumer_Survery_WORD_130306.pdf

※当サイトでは「遺伝子組換え」を標準の表記としていますが、本記事中の調査で使われた「遺伝子組み換え」表記は調査原文のままです。

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About 佐々義子 42 Articles
くらしとバイオプラザ21常務理事 さっさ・よしこ 1978年立教大学理学部物理学科卒業。1997年東京農工大学工学部物質生物工学科卒業、1998年同修士課程修了。2008年筑波大学大学院博士課程修了。博士(生物科学)。1997年からバイオインダストリー協会で「バイオテクノロジーの安全性」「市民とのコミュニケーション」の事業を担当。2002年NPO法人くらしとバイオプラザ21主席研究員、2011年同常務理事。科学技術ジャーナリスト会議理事。食の安全安心財団評議員。神奈川工科大学客員教授。