食品安全情報(化学物質)No.08(2012.04.18)

国立医薬品食品衛生研究所が月2回発表している「食品安全情報」(化学物質)。EU加盟国の委員会は、日本産製品について放射性物質に関する日本の新基準採用を決議した。EFSAの科学会議はごく微量な化学物質の影響とリスク評価について議論する。オーストラリアの検疫が押収した漢方薬から、絶滅危惧種由来の成分が検出された。

注目記事

【EC】SCFCAHの議事概要

 EU加盟国の代表によるSCFCAH(フードチェーン及び動物衛生常任委員会)では、日本産の食品及び飼料の輸入規制についての議論と採決が行われた。

 日本から輸入する製品について、2012年4月1日から日本で適用された食品中の放射性物質に関する新基準と同じ基準をEUでも採用すること、酒、ウイスキー、焼酎は規制対象から除外することなどが多数決で決議された。

※ポイント:この議論の中で注目すべきなのは、EUが日本の新基準をどのように捉えているかということです。議論では、日本での新基準設定は国産食品への信頼回復のためであり安全性のためではないと説明されています。また一部の国からは、基準値を下げることには科学的根拠がなく、提案された厳しい基準が将来EUで核事故が発生した時の前例になる可能性があるため合意できないといった慎重な意見も出ています。

【EFSA】毒性学における低用量反応とリスク評価についての議論する

 欧州食品安全機関(EFSA)の第17回定例会議(2012年6月、パルマ)において、毒性学における低用量反応とリスク評価について議論を行う予定である。

 この会議では、事前に参加登録した国際的専門家が、最近の科学的根拠について公開で議論する。最初に異なるテーマの4グループ([1]影響の種類について:有害か非有害か?[2]用量反応関係について、[3]低用量影響について:存在するのか?[4]リスク評価への影響について)で議論し、そこで得られた結論や勧告について最後の全体セッションで議論する予定である。

※ポイント:分析技術が進歩して、以前なら微量で検出できなかったような化学物質も検出されるようになりました。また、化学物質による影響を見る試験も、動物試験に加えて細胞や遺伝子レベルでの試験もできるようになりました。そこで生じるのは、食品に極微量含まれる化学物質はヒトに有害な影響を及ぼすのか? という疑問です。

 この疑問については多くの科学者が議論してきましたが、EUの専門家集団からなるEFSAで議論されるというのは意義深いことです。さて、どのような結論が出されるのでしょうか。

【NHS】漢方薬に絶滅危惧種を確認

 オーストラリアの科学者が、同国の検疫が押収した一部の伝統的漢方薬などから絶滅危惧種由来の成分や禁止薬物、有害重金属を検出したと発表したことを受けて、英国国営保健サービス(NHS)がこの種の製品について注意を喚起している。

※ポイント:このオーストラリアの科学者の発表が、海外メディアで話題になっています。これまでにも一部の漢方薬から天然の毒素や重金属が検出されたとの報告はありましたが、今回の発表によって新たに絶滅危惧種の動物由来の成分が含まれている可能性も指摘されました。

 含まれていること自体も問題なのですが、最も問題なのは、これらの含有成分が必ずしも表示されているわけではなく、消費者にはわからないということです。

食品安全情報へのリンク

「食品安全情報」
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html

食品安全情報(化学物質)No.08(2012.04.18)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2012/foodinfo201208c.pdf

今号の目次

【EC】
1. SCFCAHの2012年2月27日の議事概要
2. SCFCAHの2012年3月23日の議事概要
3. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. EFSAの第17回科学会議は毒性学における低用量反応とリスク評価について
2. 食品中臭素化難燃剤(BFRs)についての科学的意見:臭化フェノールとその誘導体
3. 遺伝子組換え生物関連
4. 食品と接触する物質関連

【NHS】
1. Behind the Headlines:漢方薬に絶滅危惧種を確認

【BfR】
1. 痩せる、強壮-副作用を伴って

【FDA】
1. オレンジジュース製品とカルベンダジム:ジュース製品協会への FDA の文書への補遺.
2. 一般向け通知
3. 警告文書(2012年4月3日、10日公表分)

【EPA】
1. EPAは化学物質の情報を電子媒体で報告することを求める規則を提案
2. EPAは2,4-Dについての誓願を拒否

【CFIA】
1. 食品の安全とは関係ない食品の包装規制の変更と自己評価表示ツール

【APVMA】
1. APVMAの科学者はがんへの恐怖が間違って語られていると述べる

【TGA】
1. TGAは消費者に対しビルマの医薬品の使用に警告

【香港政府ニュース】
1. お茶製品から放射性物質発見
2. サテペーストのリコール

【KFDA】
1. 日本産輸入食品の放射性セシウム基準強化適用
2. 日本の原子力発電所事故関連の食品医薬品安全庁による対応及び管理動向
3. 説明資料(「福島食品110トン食卓に上がった」との記事に関連)
4. 説明資料(放射性物質基準記事関連)
5. 説明資料(「日本産輸入食品が多数…、地域名公開不可で不信“増幅”」報道関係)
6. 基準•規格に不適合な容器(茶碗、皿)回収措置 
7. 標準、規格不適合“かつおぶし”製品流通販売禁及び回収措置 
8. 食品添加物保存料摂取は非常に安全なレベル 
9. 食品添加物、知っていると、安心!
10. 食用の花、摂取時のこれだけは必ず確認してください!

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(ProMED-mail)食中毒、致死、エルサルバドル 農薬疑い

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About 登田美桜 39 Articles
国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第三室室長 とだ・みおう 農学博士。国立医薬品食品衛生研究所は、医薬品、食品、その他生活環境中に存在する物質について、品質、安全性、有効性を評価するための試験、研究、調査を行う機関。 安全情報部の「食品安全情報」は、食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報を伝える。