土壌型から産地を見る(1)水田の土壌型は5種類ある

田植え前の水田
田植え前の水田。泥の海の状態
田植え前の水田
田植え前の水田。泥の海の状態

作物や圃場と土壌型の関係を水田から見ていく。最初に、水田作がうまくいく褐色低地土・灰色低地土と、そうではないグライ土・黒泥土・泥炭土について説明する。水田に向く/向かないの違いは、これらの土壌の水はけ(排水性)による。

水田から土壌型を理解する

 日本の水田面積は、畑の約2倍はあります。水田のある風景を“日本の原風景”と呼ぶことに異論を挟む人は少ないでしょう。都会に住んでいる人も含めて、多くの日本人の目に水田のある景色が焼き付いているはずです。

 また米という食べ物も、日本人にとっては執着の強いものです。“強い”どころか、なくてはならない食べ物ナンバー・ワンかもしれません。

 そこで、土壌型という馴染みの薄い事柄についての説明を、誰もがイメージしやすい水田と米のお話から始めてみます。うまい米や産地の特徴などの詳細は、個別の地域についてでなければお話するのは難しいですが、考え方の基本を理解してもらえたらと思います。

水田の土壌型の違いは水はけの違い

 さて一口に水田と言っても、土壌型で分類可能ないくつかの種類があります。そして、水田の土壌型によって、それぞれで出来上がる米の品質も違ってきます。

 現在、多くの小売業、外食業、流通、そして消費者は、有機栽培の米がいいとか、特別栽培米は違うとか、あるいは魚沼産が素晴らしいとかと言い、そうした基準で米の特徴を把握したり、伝えたりしています。しかし、そのように栽培法や広い地域での切り分けでは決まらない、土壌型というもっと根源的な条件によって、米の品質は大きく変わるのです。

 土壌型によって、水田の何が違うかと言えば、それはズバリ水はけです。

 水田の水はけ(排水性)は、暗渠の設置や溝切りなど人工的な改善策で、その効果を得ることはできます。しかし、ある土地がもともと持っている土壌型と水はけの特徴がわかっていなければ、そうした改善も的確に行われません。また、もともと適した土壌型の土地を選べば、無理に作るためのコストも下げられることは言うまでもありません。

 そこで、自分が耕作している、あるいは仕入先農家が耕作している水田の土壌型を知ろうとするわけですが、これは水田の横に立って単純に外観を眺めただけで見分けられるものではありません。

 しかし、土壌図があれば、ほぼ水田1枚ずつがわかるといったレベルで知ることができます。

水田作が最もうまくいく褐色低地土

褐色低地土の圃場断面標本(モノリス)
褐色低地土の圃場断面標本(モノリス)左右ともに北海道の畑地のもの/世界のプラウと土の博物館土の館(北海道・上富良野)所蔵

 日本の水田の土壌型は、5種類あります。

 このうち、最も水はけのよい水田土壌は褐色低地土と呼ばれるものです。この土壌型を持つ水田は全水田面積の5%程度とわずかですが、非常に良質な米を作ることができる貴重な水田です。

 褐色低地土の水田は、断面が褐色やそれに近い色です。

 どんなところにあるかと言うと、扇状地の上部から中腹あたりにあります。また、大きな平野で河川の下流域は低い湿地帯になりますが、河岸からやや離れるとコッペパンを置いたようにこんもりと盛り上がっている地形が見られます。これは地理学では自然堤防と言いますが、そうした場所にある水田でも見られる土壌型です。さらに、中山間地の棚田もこの土壌型となります。

 新潟の魚沼地域の土壌型も、褐色低地土です。

 褐色低地土は、このように地形的に周囲よりも盛り上がった、畑と言ってもいいような場所にあるということになります。こうした場所では砂利などが堆積していて水がうまく抜けるということです。

 そのため、むしろ水はけがよすぎて水を引き込むことに苦労したような場所です。しかし、それを克服して米を作付ける甲斐があったということになります。

灰色低地土も改善がしやすい土壌型

灰色低地土の圃場断面標本(モノリス)
灰色低地土の圃場断面標本(モノリス)左右ともに北海道の水田のもの/世界のプラウと土の博物館土の館(北海道・上富良野)所蔵/soil0066b

 次に、灰色低地土と呼ばれる、土の断面が灰色をした水田があります。これは粘土分が少ない土で、水が速やかに下に移動することで、根に酸素がよくいきわたり、根が活発に活動できます。ですから、ここでもやはりおいしい米ができます。

 灰色低地土は主に河川の下流の両側に広く分布していて、褐色低地土よりも多く、全水田面積の35%をも占めるものです。

 この土壌型はまた、水田を畑として利用する水田転作にも向いています。

 この灰色低地土は、人が何か働きかけるとそれに応えて効果を示す土だと言えます。ですから、何もしないより何か積極的に手を打ってみる方が得な土です。と言うののは、逆に手を打ってもうまく改善できない土があるという意味です。後で述べる水はけの悪い場所に出来る土は、いろいろ手を尽くしてもうまく改善できないのです。

 たとえば有機肥料を施すことにした場合、米の品質がよくなるのはこの褐色低地土と灰色低地土の2種類です。これらと違って、水はけが悪い場所の土ではそうはいかないのです。

根の活動が悪いグライ土・黒泥土・泥炭土

 水はけが悪い場所の土は、グライ土黒泥土泥炭土の3種類です。

 これらは灰色低地土よりも低い場所にある水田の土と言ったらわかりやすいでしょうか。

 冬でもじめじめしているような水田があって、そうした水田ではおいしい米が作れないと言われます。それは、水はけが悪いために根に酸素が届きにくくなり、活発に活動できない根となります。するとさまざまな栄養を土から吸うこともできなくなり、米の味も悪くなるというわけです。だから、有機肥料を入れるなど、人が何か働きかけても、うまく反応しないわけです。

 次回は、このなかなかうまく改良できない水田の土について説明していきます。ただ、イネが育っている光景を眺めただけでは判定できないので、どのような地形にはどのような種類の土があるかを推測する方法に触れます。

関祐二
About 関祐二 101 Articles
農業コンサルタント せき・ゆうじ 1953年静岡県生まれ。東京農業大学在学中に実践的な土壌学に触れる。75年に就農し、営農と他の農家との交流を続ける中、実際の農業現場に土壌・肥料の知識が不足していることを痛感。民間発で実践的な農業技術を伝えるため、84年から農業コンサルタントを始める。現在、国内と海外の農家、食品メーカー、資材メーカー等に技術指導を行い、世界中の土壌と栽培の現場に精通している。