2018年食の10大ニュース[6]

農林水産関連の話題をまとめました。

  1. 豪雪、地震、豪雨、猛暑
  2. カー娘“もぐもぐタイム”の韓国イチゴ騒動
  3. 主要農作物種子法廃止
  4. 雪印種苗の不祥事
  5. 豚コレラの発生確認
  6. 「日本ワイン」表示開始
  7. 豊洲市場開場
  8. 2025大阪万博のテーマに「健康長寿」
  9. 日本がIWCからの脱退を表明
  10. TPP11発効

1. 豪雪、地震、豪雨、猛暑

 豪雪で明けた2018年。6月に大阪府北部地震。平成30年7月豪雨。6〜8月の猛暑。関西と西日本がとくにたいへんだとおろおろしていたら、9月には北海道胆振東部地震。踏んだり蹴ったりの1年で、生活だけでなく農林水産にとっても物流にとっても打撃の多い年だった。

 これまででは考えられない激甚な気象災害はこれからも起こるという。また、地震への最大の備えは予測ではなく、常住坐臥、いまこのときに地震が襲うかもしれないことを忘れないことだ。ただ、その備えを「心配」と捉えると心が持たない。経済的、物理的備えと、災害をしなやかに受け流せる姿勢を身につける鍛錬が必要なのだろう。

2. カー娘“もぐもぐタイム”の韓国イチゴ騒動

 2月、平昌五輪でカーリング女子の“もぐもぐタイム”が話題になり、そのなかで日本代表選手が「韓国のイチゴがおいしい」とコメント。3月に齋藤健農水相(当時)がその韓国のイチゴが「以前に日本から流出した品種を基に、韓国で交配されたものが主だ」と指摘した。

 調べてみると、一応は法律と国際的なルールからいって正当に育種されたものだとわかるのだが、遺伝子資源に日本産の著名な品種が含まれていたことは確かなようだ。そして、脱法的な印象はどうしても残る。

 果実品種の流出は以前から問題になっていたことだが、近年は他にも、日本で育種したシャインマスカットが中国に流出し、中国産が中国・香港などで飛ぶように売れているといったことも問題になっている。日本の野菜品種が欧米で栽培されて現地のシェフにも人気などといった話題にも触れるが、「大丈夫なんだろうか?」と気になる例はある。

 もっとも、日本産農作物品種にしても、多くの場合、その源流は海外からもたらされた品種にある。欧米等にも、日本に対して同様の冷たい視線を向けている企業・団体・人がいることは記憶しておくべきだろう。

 いずれにせよ、市場に出る品種の多くは膨大な時間と費用をかけて作出した“著作物”に違いない。日本は世界に通用し、国益につながる知財戦略の立て直し、法律、各種制度、振興策を整備することが必要。むしろ、知財立国を掲げていきたい。

3. 主要農作物種子法廃止

 4月、主要農作物種子法が廃止された。米、大豆、麦の種子の安定供給のために国が果たすべき役割を定めた法律だった。2000年施行の地方分権一括法以来の地方分権の具体化・現実化の一環で、中央集権的体制がまた一つ取り除かれたものだろう。今後は、都道府県と民間が力をつけていくことを考えていく必要がある。

 しかし、種苗法との混同や誤解、誤解へ誘導する論調なども目立った。地方分権が進むのにつれて、悪口を言う対象が分散して困る勢力もあるのに違いないと感じた。

4. 雪印種苗の不祥事

 4月、雪印メグミルクの子会社雪印種苗が、牧草などの53品種で、複数種子を混ぜ、商品名を偽って販売し、それを隠蔽していたと発表。ブレンドによる商品づくりかと思ったが、調達の不足から水増しをして、それが長期にわたって続いたものだった。

 さまざまな産業で日本企業の耳を疑うような偽装、隠蔽、虚偽記載、背任等の不祥事の報が続いている。名に「雪印」と付く会社は、これまでのプロセスから不祥事防止にはとく力を発揮し、むしろ「白さ」をリードしてほしい企業群だったのだが。

5. 豚コレラの発生確認

 9月、岐阜県の養豚農場で豚コレラの発生が確認され、12月25日までに計6件の発生が確認されている。また、9月以降に調査対象区域内で野生いのししで豚コレラの陽性事例が確認されている。

 関連する話題として、欧州等からアフリカ豚コレラの発生が拡大し、今年8月には中国でも発生が確認された。豚コレラ、アフリカ豚コレラとも、国内の畜産にとって予断を許さない状況が続いている。

 家畜の伝染病では、2010年の口蹄疫の流行も記憶に新しい。また、農業の現場に持ち込まれることが心配される病害は、畜産だけでなく、耕種農業にもある。

 これらは海外から持ち込まれるものである。その点、検疫が重要だが、私はちょっと突飛な施策も考えている。通関エリアにしかるべき長さの足拭きマットを設置し、空港・港湾で靴底の消毒もお願いしてはどうか。

 さらに、海外から来た人と国内に住んでいる人とを問わず、家畜がいる場所、畑や水田などに、部外者が不用意に立ち入ることがないようにしなければならない。路面に石灰がまかれているのを見たら、「消毒のためだ」と思うよりも、「ここに入らないでということだ」と理解する市民が増えることを祈る。

 啓発のよい事例があったので、映像をご紹介しておきたい。

6. 「日本ワイン」表示開始

 10月、酒類業組合法に基づく果実酒等の製法品質に関する表示の基準が定められ、「日本ワイン」の表示が登場した。同基準によれば、「国内製造ワイン」のうち国産ぶどうのみを原料としたものが「日本ワイン」となり、地名や品種等を表示できることとなった(海外原料を使用したものは地名や品種等を表示できない)。

 近年、国内外で非常に注目されている日本ワインにとって重要な転換点である。また、これによって醸造に適したブドウ品種の生産への関心が高まり、それがきっかけとなって、さらに広く食品・飲料の原料となる農産物生産への関心が高まり、日本農業が“生食至上主義”“高単価一辺倒の政策”を脱し、日本産食品・飲料の多くが産業の全段階による協業(例のオヤジギャグでいうところの“農林漁業の6次産業化”)となっていってほしい。

 関連する話題として、麻井宇介(本名:浅井昭吾)さんと彼の薫陶を受けた実践者たちの物語が映画※になったことも、日本ワインにとって記念すべき出来事だった。

 また、酒類に関しては、酒税法改正でビールの麦芽比率が67%から50%に引き下げられ、果実、ハーブ、スパイスなどの副原料が認められた。多様な醸造文化につながることを祈る。

※rightwide、2018年11月30日「“日本ワイン”夜明けの3人」(スクリーンの餐 190)

7. 豊洲市場開場

 紆余曲折の一言では済まされないひどいプロセスの果てに、この10月ようやく豊洲市場が開場した。これに関しての話題は多いが、期待することを一つ述べておきたい。

 最近の多くの食品工場と同様に、見学コースが整備されていることは素晴らしい。豊洲見学が、食品の取り扱いの基本を学ぶ場となってほしい。

 ……秋あたりからそんな風に書こうと思っていたのだが、豊洲市場で最初のマグロの競りの写真を見てずっこけた。刺身で食べることが標準の魚を、相変わらず膝下の高さで扱い、古びた木製のすのこに並べているものもあった。日本のHACCPの夜明けは遠い。

8. 2025大阪万博のテーマに「健康長寿」

 11月、2025年国際博覧会の大阪市での開催(2025大阪万博)が決定した。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、貧困・飢餓の撲滅と健康・長寿を地球規模で広げるという。医療やバイテク寄りのイメージもあるが、こうして掲げられた事柄はいずれも現代の食ビジネスの重要な課題であり、日本の食産業にとって数少ない成長分野と見られているものでもある。

 食の楽しみにあふれた大阪で、新しい日本の食産業の進む道が示されるだろう。非常に明るいニュースと感じた。

9. 日本がIWCからの脱退を表明

 12月、日本が国際捕鯨委員会(IWC)から脱退することが発表された。来年以降、我が国の排他的経済水域(EEZ)内で商業捕鯨を再開するという。

 IWCに加盟し続けなければいけない理由もないだろうが、いま脱退する理由もよくわからない。

 なお、これを奸臣松岡洋右の所業になぞらえるのは言い過ぎであろう。ただし、どうもたいへん属人的な経緯があったようではある。

10. TPP11発効

 米国がTPPから離脱して署名しなおしたTPP11協定が12月30日に発効。来年2月には欧州EPAも発効する。TPP11と欧州EPAで「世界のGDPの4割弱を占める巨大貿易圏」のように書いているメディアも見かけるが、「日本経済新聞」によれば実数はTPP11加盟国13.2%(その半分ほどは日本)+EU21.7%で合計34.9%である。私なら「世界のGDPの3割」と書くところだが、巨大な貿易圏であることには変わりないだろう。

 TPP11、欧州EPAとも日本側は最終的には農林水産品の82%(品目数ベース)の関税を撤廃するということで農業界はそわそわいらいらしているかもしれないが、工業製品は100%(同)の撤廃だ。輸出に強い日本農業と、海外生産でも存在感のある日本式農業の成長に期待したい。


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齋藤訓之
About 齋藤訓之 299 Articles
Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。日本フードサービス学会会員。戸板女子短期大学食物栄養科非常勤講師。東京栄養食糧専門学校非常勤講師。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ →