
国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。米国で冷凍豆モヤシに関連するサルモネラ感染が複数州で発生している。オランダ当局によると、家畜運搬と食肉加工で標準的方法とは異なる代替消毒方法の使用が加している。
注目記事
【米国】冷凍豆モヤシに関連のサルモネラ感染アウトブレイク
米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Anatum)感染アウトブレイクを調査するため、さまざまなデータを収集している。
疫学調査および検査機関での検査によるデータは、冷凍豆モヤシがS. Anatumに汚染され、本アウトブレイクの感染源となっている可能性があることを示している。
聞き取りが実施された患者6人全員が、インド(南アジア)系食料品店での買い物およびインド料理の喫食を報告した。また、このうち4人が、豆モヤシの喫食またはその可能性が高いことを報告した。
FDAは2025年5月に、冷凍のモスビーン(moth beanまたはmat bean)モヤシおよび緑豆モヤシ(moong bean)の検体を採取した。これらの検体からサルモネラが検出され、WGS解析により、当該サルモネラ株が本アウトブレイクの原因株であることが示された。
この結果は、本アウトブレイクの患者が豆モヤシの喫食により感染した可能性が高いことを意味している。
WGS解析の結果、患者11人由来検体および豆モヤシ由来8検体から分離されたサルモネラ株については抗生物質耐性の存在が予測されなかった。
【オランダ】食肉生産チェーンにおける代替消毒方法
オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM: Rijksinstituut voor Volksgezondheid en Milieu)の調査によると、家畜運搬過程および食肉加工過程において、標準的方法とは異なる代替消毒方法の使用が近年増加している。塩素系漂白剤などの標準的消毒剤を使用しない消毒方法や、モップ以外の掃除用具を用いた清掃方法が行われている。NVWAでは全体的な状況把握ができておらず、実際にどのような代替消毒方法が存在し、どのように消毒が実施されているかは明確ではない。
本報告書では家畜運搬および食肉加工過程において想定し得る代替消毒方法の一覧が提示されている。この一覧は既存の文献および家畜運搬機器製造業者・消毒剤供給業者・食肉加工従事者等に対する聞き取り調査による情報をもとに作成された。
関連する家畜運搬車の代替消毒方法および食肉加工過程上の代替消毒方法の候補として、化学薬剤によるスプレー消毒、酵素・紫外線・オゾンによる消毒などがあげられる。いくつかの代替消毒方法については詳細調査を行い、それらの作用機序、推定される残留物質およびその他残留化学物質、殺菌効果・ウイルス除去性能に関する情報が得られた。
全般的には代替消毒方法において有害物質の残留は確認されなかったが、いくつかの代替消毒方法では新たに有害な副産物が生成される可能性がある。文献情報からは、代替消毒方法が標準的消毒方法と同等に安全であるか否か、および同等の殺菌効果・ウイルス除去性能を有するかどうかについて、必ずしも明らかではない。
(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)
目次
【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 冷凍豆モヤシに関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Anatum)感染アウトブレイク(2025年7月17日付初発情報)
2. ピスタチオクリームに関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Oranienburg)感染アウトブレイク(2025年7月16日付更新情報)
3. ヤモリに関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella MuenchenおよびS. Lome)感染アウトブレイク(2025年7月17日付更新情報)
4. 米国のサイクロスポラ症患者に関する2025年のサーベイランス調査(2025年7月16日付更新情報)
【カナダ公衆衛生局(PHAC)】
1. 公衆衛生通知:REAブランドおよびBONAブランドのサラミ製品に関連して発生しているサルモネラ(Salmonella I4,[5],12:i:-)感染アウトブレイク(2025年7月15日、10日付更新情報)
【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)
【欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 生鮮および冷凍の果物・野菜・ハーブ類(ffFVH)の収穫後および加工工程に使用される水に関連する微生物ハザード-Part5(冷凍FVHにおける加工用水管理計画)
【英国食品基準庁(UK FSA)】
1. 英国食品基準庁(UK FSA)が新たなイノベーションハブ設立の支援として140万ポンドの補助金獲得を発表
【オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)】
1. 食肉生産チェーンにおける代替消毒方法
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(微生物)No.15(2025.07.23)
- https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2025/foodinfo202515m.pdf