激辛チャレンジからの救急治療

No.20(2023.09.27)

辛いポテトチップス(イメージ)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。欧州食品安全機関は、欧州委員会からの依頼により、食品中のミネラルオイル炭化水素類のリスク評価を実施した。SNSで流行している「辛いチップスチャレンジ」により救急治療が必要になった事例が複数報告されている。8月以降フランス中毒管理センターへのキノコ中毒の報告が増加しており、当局はキノコ狩りの注意点を発表した。

注目記事

【EFSA】食品中のミネラルオイル炭化水素類のリスク評価の更新

 ミネラルオイル炭化水素類(MOH)は、飽和炭化水素類(MOSH)と芳香族炭化水素類(MOAH)からなる。欧州食品安全機関(EFSA)は、欧州委員会からの依頼により、食品中のMOHのリスク評価を実施した。EFSAは、食事からのMOSH暴露による健康影響の懸念はありそうにないと結論した。一方、3つ以上の芳香環をもつMOAHには遺伝毒性および発がん性と関連する可能性があり、2つのシナリオでの暴露評価によると健康影響の懸念を生じる可能性があると指摘した。ただし、毒性や暴露に関する多くのデータが不足しているとして、さらなるデータ収集の必要性を助言している。

※ポイント:欧州委員会が特定の食品に対するMOHの最大基準値設定の要否を検討するために、EFSAへ評価を依頼したようです。現在は、MOHの検出の判定、リコールや汚染源の追跡のためのカットオフ値をEUで統一するための定量限界値が、欧州委員会の常設委員会で合意されています。

【BfR】厳しい試練:激辛食品はとくに子供の健康に有害になる可能性がある

 ソーシャルメディアで「辛いチップスチャレンジ」が流行して、メディアの注目を集めている。このチャレンジは、カプサイシンで激辛にしたトルティーヤチップスを食べるというもので、参加を証明するために動画や写真で記録されることが多い。しかし、その摂取により救急治療が必要になった事例が複数報告されている。ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、カプサイシンの過剰摂取により健康への有害影響が生じる可能性を指摘し、とくに子供は感受性が高く影響を受けやすいとして注意を呼び掛けている。

※ポイント:BfRによると、粘膜刺激、吐き気、嘔吐、高血圧などの有害影響が報告されています。カナダ食品検査庁(CFIA)でも有害事象が報告されたとして同様の製品であるPaquiブランドの「2023One Chip Challenge」のリコールを発表しています。

【ANSES】キノコ狩りシーズンはすでに始まった:警戒すること

 2023年8月1日以降、フランス中毒管理センターへのキノコ中毒の報告が増加しており、すでに2022年の倍に及ぶ250件以上の症例が報告されている。フランス食品・環境・労働衛生安全庁(ANSES)は中毒の発生予防のためにキノコ狩りの注意点を発表した。

※ポイント:ANSESは、スマートフォンのキノコ認識アプリで毒キノコと食用キノコを判別することの危険性を強調しています。キノコの鑑定はさまざまな視点で観察しなければならず専門家でも同定が難しい場合もあります。そのため、画像検索の技術は向上していますが、使用する際は鑑定目的ではなく参考程度にしてしておきましょう。

 ようやく暑さに陰りが見え始めて、日本もキノコ狩りのシーズンになりました。確実に食べられるキノコであると判断できない場合は採って食べないようにしましょう。

※厚生労働省「毒キノコによる食中毒に注意しましょう」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kinoko/index.html

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.20(2023.09.27)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2023/foodinfo202320c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. WHO 健康とプラスチック対話

【FAO】
1. Codex

【EC】
1. グリホサート
2. 査察報告書
3. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. 食品中のミネラルオイル炭化水素類のリスク評価の更新
2. わかりやすい言葉による要約:食品中のミネラルオイル炭化水素類(MOH)のリスク評価の更新
3. グリホサート
4. 遺伝毒性試験の信頼性と妥当性を報告するための統一したアプローチ
5. ナノファイバーのハザード評価のための新アプローチ方法論(NAMs)の使用に関する EFSA プロジェクト。ロット1、ナノセルロースの経口暴露:胃腸内消化、ナノファイバーの取り込み、局所的影響
6. 新規食品関連
7. 農薬関連

【FSA】
1.2023年9月の FSA 理事会

【BfR】
1. 甘味料に関する BfR の意見
2. 甘味料:大多数の研究から有害健康影響はないことが確認されている―だが、研究状況は不十分である
3. 複数の甘味料の混合物はヒトの健康にリスクをもたらすか?
4. 厳しい試練:激辛食品は特に子供の健康に有害になる可能性がある

【RIVM】
1. オランダの放射能モニタリング:ミルク、食品、飼料-2020-2021の結果

【ANSES】
1. キノコ狩りシーズンはすでに始まった:警戒すること

【FDA】
1. 新たな包括的アジェンダを通じて動物バイオテクノロジー、獣医用製品、動物用食品のイノベーションを支援する
2. 栄養研究および政策におけるメタ解析の使用に関するワークショップを後援する
3. 米国での添加された砂糖の摂取を削減する戦略に関するバーチャル公聴会とリスニングセッションを開催する
4. LittleOak 乳児用調製乳に関して両親や保育者に警告する
5. 警告文書
6. リコール情報

【EPA】
1. EPA は絶滅危惧種を守りアメリカに食料と燃料を提供する農薬の利用を維持するため、長きにわたる訴訟に決着
2. EPA の発がん物質暴露削減とがん予防の努力

【CDC】
1. フィールドからの報告:テホコテCrataegus mexicanaの根と表示された、キバナキョウチクトウ Cascabela thevetiaを代わりに含むオンライン減量サプリメント-米国2022

【CPSC】
1. Buffalo Games は深刻な飲み込み、窒息、閉塞ハザードのため Chuckle & Roar 究極ウォータービーズアクティビティキットをリコール:乳児一人が死亡;対象年齢にのみ販売

【CFIA】
1. 国家残留化学物質モニタリングプログラム(NCRMP)及び化学物質食品安全監視
(FSO)プログラム年次報告書2020-2021年
2. リコール情報

【FSANZ】
1. 食品基準通知

【MPI】
1. 公衆衛生警告:Raglan 海岸線地域の貝類バイオトキシン警告

【香港政府ニュース】
1. ニュースレター
2. 放射線検査と無関係な日本からの輸入食品の空港での通関に時間がかかる
3. CFS は食品安全命令に違反した疑いのある日本産輸入野菜を追跡調査する
4. 許可されていない保存料サリチル酸を使用した包装済みのアーモンドミルクやクルミミルクを摂取しないようよびかける
5. 違反情報

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2.2023年上半期の輸入食品3.9%(輸入量)減少
3. オンライン動画で食品情報を正しく知る
4. ワカメ・昆布などの海藻類は放射能体内排出効果とは関係なし
5. 水産物の安全管理の気になる点? 食薬処長が直接回答する

【FSSAI】
1. 食品安全法違反の事業者の起訴を開始

【その他】
・ProMED-mail1件