米国の複数州でリステリア感染

No.05(2023.03.01)

リステリア(イメージ)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。米国で複数州にわたってリステリア感染アウトブレイクが発生している。具体的な原因食品はまだ特定されていないが、全ゲノム解析の結果は、本アウトブレイクの患者が同じ食品により感染したことを示唆している。

注目記事

【米国】米国で原因食品不明のリステリア

 米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、複数州にわたり発生しているリステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイクを調査するため、さまざまなデータを収集している。

 本アウトブレイクの感染源として具体的な原因食品はまだ特定されていない。各州・地域の公衆衛生当局は、患者が発症前1カ月間に喫食した食品に関する聞き取り調査を進めている。

 WGS解析により、本アウトブレイクの患者由来検体から分離されたリステリア株が遺伝学的に相互に近縁であることが示された。この結果は、本アウトブレイクの患者が同じ食品により感染したことを示唆している。

 CDCは、妊婦、65歳以上の人および免疫機能が低下している人に対し、リステリア感染の症状が見られた場合は医療機関を受診するよう助言している。

【欧州】EU域内の人獣共通感染症等は増加傾向だがパンデミック前の水準を下回る

 欧州食品安全機関(EFSA: European Food Safety Authority)および欧州疾病予防管理センター(ECDC: European Centre for Disease Prevention and Control)は、欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症に関する One Health の観点からの2021年次報告書「The European Union One Health2021Zoonoses Report」を発表した。

 この報告書によると、2021年はEU内の人獣共通感染症の報告患者数および食品由来アウトブレイクの件数が2020年と比べると全体的に増加したが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック前の水準を依然として大きく下回っている。

 患者およびアウトブレイクの報告数がパンデミック前と比べ全体的に減少しているのは、2021年にも継続されたCOVID-19感染対策に関連していると考えられる。数少ない例外として、エルシニア症および食品由来リステリア症アウトブレイクの患者数は増加しており、パンデミック前の水準を上回った。

 食品由来アウトブレイクはサルモネラが原因で発生したもの(773件)が最も多く、全体の19.3%を占めた。食品由来アウトブレイクは同じ汚染食品により2人以上が同じ疾患に感染する事例であり、すべての患者報告を示しているわけではない。サルモネラ症アウトブレイクで最も多く報告された原因食品は、卵、卵製品、および複合食品(様々な原材料を使用した食品)であった。

 リステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイクの報告件数(23件)はこれまでで最多であった。これは、全ゲノムシークエンシング(WGS)法の使用が増えたことでアウトブレイクの探知・確定能力が向上したことに関連している可能性がある。

 本報告書は、必ずしもアウトブレイクに関連しているとは限らない人獣共通感染症の全般的な報告も対象としている。カンピロバクター症は依然として最も高頻度に報告される人獣共通感染症であり、報告患者数は2020年の120,946人から2021年は127,840人に増加した。カンピロバクター症の原因食品として最も多かったのは鶏肉および七面鳥肉であった。サルモネラ症は2番目に多く報告される人獣共通感染症であり、報告患者数は2020年の52,702人に対し2021年は60,050人であった。3番目に多く報告された人獣共通感染症はエルシニア症(6,789人)であり、続いて志賀毒素産生性大腸菌感染症(6,084人)、リステリア症(2,183人)の順であった。

 本報告書には、Mycobacterium bovisまたはMycobacterium capraeによる結核、ブルセラ症、トリヒナ症、エキノコックス症、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)感染症、狂犬病、Q熱、ウエストナイルウイルス感染症および野兎病に関するデータも収載されている。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.05(2023.03.01)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2023/foodinfo202305m.pdf

今号の目次

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 米国の複数州にわたり発生している原因食品不明のリステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイク(2023年2月15日付初発情報)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
1. エキノコックス症 ―2019年次疫学報告書

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)/欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症および食品由来アウトブレイクは増加傾向にあ
るものの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック前の水準を依然下回る

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)

【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. 新しいハンドブックを発行:有効なリスクコミュニケーションのための6つの段階

【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(06)