ゲノム編集肉牛のリスク判断

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。アイルランド食品安全局(FSAI)の「食品安全研究の優先項目2022」には、食品安全分野の研究課題を具体的にまとめている。米国食品医薬品局(FDA)は、ゲノム編集肉牛とそれに由来する製品に安全上の懸念はないと判断した。FDA食品安全近代化法(FSMA)の最終規則は、テロ行為などの意図的異物混入の防止が目的。

注目記事

【別添:FSAI】食品安全研究の優先項目2022

 アイルランド食品安全局(FSAI)のリスク評価・リスク管理の業務を進展させ、公衆衛生の保護を支援するための優先研究分野を概説している。FSAIは、研究助成機関や研究者に対し、これを研究の募集や提案を行う際の参考資料として引用することを推奨する。

※ポイント:FSAIの将来構想が伝わってくる一冊です。食品安全の分野で必要とされる研究課題が具体的にまとめられています。アイルランドの現状を踏まえたものですが、日本の食品安全行政にも当てはまる課題も多く関係者にはよい参考になるでしょう。

【FDA】FDAは安全性レビューの結果、ゲノム編集肉牛由来製品の販売は低リスクであると決定

 米国食品医薬品局(FDA)は、Acceligen社から提出された資料をもとに、2頭のゲノム編集肉牛とそれに由来する製品(例:子孫、精液、胚)や食品について、意図的なゲノム改変(IGA)による安全上の懸念はないと判断し、低リスク決定を行ったと発表した。

 FDAは、それらの製品や食品を市場に流通させることに異論を述べるつもりはない。これは食用となる動物のIGAの自由裁量についてFDAが下した初めての低リスク決定である。この肉牛はPRLR-SLICK牛と呼ばれ、極端に短いスリック毛を持つのが特徴である。高い気温によるストレスを受けにくく、食料生産の向上につながる可能性がある。早ければ2年後には一般消費者が購入できる食肉製品が発売されるものと見込んでいる。

※ポイント:スリック毛の肉牛は従来型の繁殖技術による生産でも自然の突然変異によって生まれており、それらの遺伝子変異との同等性と、それらの牛由来の食品を数年にわたり安全に食してきたことを、FDAが低リスクと判断した主な理由に挙げています。

【FDA】意図的異物混入から食品を保護するための緩和戦略に関するFSMA最終規則

 FDA食品安全近代化法(FSMA)の最終規則は、食品供給を標的としたテロ行為など、公衆衛生に広範な被害をもたらすことを意図した行為による意図的異物混入を防止することを目的としている。特定の食品やハザードを対象とするのではなく、特定の登録食品施設における工程でのリスク低減戦略を要求している。最終規則は、一部の例外はあるが、食品施設としてFDAに登録が必要な国内・海外の企業に適用される。

【MFDS】国内流通食品のマイクロプラスチック汚染レベルの調査結果

 韓国の食品医薬品安全処は、国内で流通している海藻類、塩辛類、外国でマイクロプラスチック汚染が報告された食品など合計11種102品目を対象に、2020年〜2021年にマイクロプラスチックの汚染実態と暴露量を調査した。その結果、懸念されるレベルではないと結論した。

※ポイント:マイクロプラスチックについては国際的に認められた分析法がないことが解決すべき課題の一つですが、MFDSは入手可能な研究報告をもとに独自に分析法を開発したようです。各食品1gあたりに含まれる量が示されていて興味深いです。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.07(2022.03.30)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202207c.pdf
食品安全情報(化学物質)No.07(2022.03.30)別添
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202207ca.pdf

今号の目次

【EC】
1. 抗菌剤耐性対策:委員会は EMA のヒト治療用にとっておく抗菌剤についての科学的助言を歓迎
2. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. デジタル時代の EFSA のオンラインコミュニケーションの多言語使用拡大
2. 消費者と食品中の糖類に関する EU 洞察調査
3. 国の規制機関と EFSA との間のデータ接続のための概念実証
4. EFSA のリスク評価の構成要素としての環境リスク評価に関する研修
5. 循環型経済における食品及び飼料の安全性の脆弱性
6. 地下水中の土壌光変換生成物に関する科学的ガイダンス案についてのパブリックコメント募集結果
7. 農薬関連
8. 飼料添加物関連
9. 食品接触物質関連
10. 加工助剤関連
11. 食品酵素関連
12. 遺伝子組換え関連

【FSA】
1. 研究プロジェクト
2. FSA 理事会はバーミンガムで会合しコモンウェルスゲームズ(国際スポーツ競技大会)のための準備を支援
3. 食品廃棄行動週間における食品安全
4. FSA ブログ
5. FSA は新たな5か年戦略を打ち出す

【DEFRA】
1. 食品基準:表示と組成

【DHSC】
1. 新しい報告書はフッ素添加が子供の虫歯を減らすことを確認

【COT】
1.2022年3月29日の会合の議題

【BfR】
1. 食品中アルケニルベンゼン:有害健康影響評価を妨げる状況

【ANSES】
1. 布と履き物中の化学物質:より保護するための規制案
2. 除草剤耐性品種の植物多様性への影響は?

【FSAI】
1. 乳幼児にライスミルクを使わないよう警告
2. EFSA の意見書:二酸化チタン(E171)が食品添加物として安全とみなさない
3. Breakfast Bite イベント3月30日:セーフケータリングパック-食品安全管理システム
4. リコール情報

【FDA】
1. FDA は安全性レビューの結果、ゲノム編集肉牛由来製品の販売は低リスクであると決定
2. FDA は特定の FSMA 規則の自由裁量方針に関するガイダンスを発行する
3. 意図的異物混入から食品を保護するための緩和戦略に関する FSMA 最終規則
4. FDA はスコンブロトキシン(ヒスタミン)を産生する魚と水産物の腐敗とヒスタミンに関する CPG の草案を発行する
5. テックトークポッドキャストエピソード3:よりスマートな食品安全新時代における人工知能
6. 公示
7. 警告文書

【USDA】
1. 遺伝子組換えを用いて開発した大豆の規制解除

【CPSC】
1. CPSC は全国中毒予防週間60周年と数十年での子供の中毒死の劇的低下を記念する
2. リコール情報

【FTC】
1. FTC は事業者が根拠のない健康強調表示でサプリメントを宣伝し続けることを止めさせる命令を提案

【FSANZ】
1. 食品基準ニュース
2. 食品基準通知

【MPI】
1.年次調査がニュージーランドの養蜂業者を支援する

【香港政府ニュース】
1. ニュースレター
2. 法令違反

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 食薬処、多消費農産物(若菜)対象に残留農薬などの検査を実施
3. 国内流通食品のマイクロプラスチック汚染レベルの調査結果
4. 食薬処、食医薬安全のための消費者中心のコミュニケーション強化
5. 回収措置

【SFA】
1. マレーシア産コーラルレタス及び小白菜の輸入制限について
2. リコール情報

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から10件
・ProMED-mail1件
・米国司法省1件

別添

【FSAI】食品安全研究の優先項目2022