魚を食べることの利益を説明

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.14(2019.07.10)を発表した。

注目記事

【FDA】FDAは「妊娠中又は妊娠するかもしれない女性、授乳中の母親、小さい子どものための魚を食べることについての助言」改訂版を発表

2017年1月に米国食品医薬品局(FDA)と米国環境保護庁(EPA)が合同で発表した魚食に関する助言を改訂した。助言内容に変更はないが、2015-2020アメリカ人のための食事ガイドラインの勧告を反映し、魚に含む栄養素が胎児や子供の成長や発達に果たす重要な役割と魚食による健康への利益に関する説明を追加した。

※ポイント:米国FDA/EPAの助言は、魚貝類をメチル水銀の濃度に応じて3つに分類した上で推奨される摂取量を示したもので、非常にわかりやすくよくできています。国民による魚の摂取量が少ないため、FDAは助言に魚食の利益を追加することで、魚を適切に食べることの重要性を強調しています。

【EFSA】食品安全レギュラトリー研究の必要性2030年

欧州食品安全機関(EFSA)は、科学的パネルのメンバーや関係者からの意見をもとに、科学委員会やEFSAによる2030年に向けた食品安全レギュラトリー研究の必要性とその優先事項として、3つの研究分野「安全な食品システム」「リスク評価の革新」「総合的(ホリスティック)リスク評価」と各研究分野に含まれるテーマをまとめた。

※ポイント:食品安全レギュラトリー研究の今後10年間の課題が簡潔にまとめられています。これを読むと、参考になるとともに、日本の食品安全のレギュラトリー研究やリスク評価が国際レベルにまだまだ追いついていないことを実感します。また、リスク評価/コミュニケーションに関する科学者の知識や経験を広げるトレーニングや、リスク評価と食品安全の次世代の専門家の教育が優先事項に含まれることをうらやましく感じました。

【BfR】二酸化チタン まだ研究が必要

二酸化チタン(TiO2)はEUでは食品添加物E171として認可されており、ドラジェやチューインガムなどの菓子やコーティングの白色色素として使用されることがある。歯磨き粉や日焼け止めのナノ粒子として化粧品にも含まれている。欧州化学庁(ECHA)の吸入暴露に関する助言と食品添加物E171に関するフランス政府の決定を受けて、二酸化チタンの摂取によって生じる可能性のある健康リスクが議論されている。

※ポイント:EU域内では、二酸化チタン、とくにそのナノ粒子の食品添加物としての使用に注目が集まっています。

フランス政府は暫定的な使用停止という保守的な対応を予定しています。これに対して本年5月にEFSAが、安全性に関するこれまでの科学的な結論を変更するような新しい根拠はないという声明を出しており、ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)もこの声明に同意しています。ただし、毒性データの不足を補うために現在も研究が進められており、この話題はまだ続きそうです。

一方、オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)からも二酸化チタンに関する最近の研究報告へのレビューコメントが出されました。そのコメントでも、食品添加物としての二酸化チタンは安全であるとするFSANZのこれまでの評価の結論を変えるものではないとしています。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.14(2019.07.10)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2019/foodinfo201914c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. 国際がん研究機関(IARC):モノグラフ会合の予定

【FAO】
1. Codex

【EC】
1. 最新の欧州警察組織と国際刑事警察機構の共同作戦で1億ユーロ以上の偽の食品や飲料が押収された
2. 査察報告書

【EFSA】
1. 食品中の残留農薬:EUの状況は?
2. ミツバチの健康:EFSAの研究がEU賞で表彰される
3. ミツバチと農薬に関するガイダンス:作業計画を発表
4. 食品及び飼料に利用する遺伝子組換えダイズMON 87708×MON 89788×A5547‐127の評価
5. 食品添加物としての塩酸(E 507)、塩化カリウム(E 508)、塩化カルシウム(E 509)、塩化マグネシウム(E 511)の再評価
6. 食品安全レギュラトリー研究の必要性2030年
7. アプリ開発者コンソールは私達の食品安全性データを広げる
8. 食品酵素関連
9. 新規食品関連
10. 食品と接触する物質関連
11. 飼料添加物関連

【FSA】
1. 改訂英国複数年次全国コントロール計画(MANCP)の発表
2. 2019年6月19日のFSA 理事会の議事概要
3. 2019年6月27日のFSA Science Councilの議論の概要
4. FSAは英国監査局の報告を歓迎する

【DEFRA】
1. Goveは「ナターシャ法」を導入

【NHS】
1. Behind the Headlines

【ASA】
1. ASA裁定

【BfR】
1. 二酸化チタン まだ研究が必要
2. リン酸塩の摂取:乳児、幼児、子供は健康影響のガイダンス値を超える可能性がある
3. 健康リスク―年齢が果たす役割とは?
4. 抗生物質は限界?細菌はとっておいた薬にも耐性
5. 植物保護製品:食品の残留物がより明確に

【RIVM】
1. オランダの抗菌剤耐性は合理的に安定なまま
2. 食品中ミネラルオイル;発生と発生源のレビュー
3. 土壌中の広範な鉛汚染についての知識の概要

【ANSES】
1. 内分泌攪乱物質:現在の研究と将来展望についての科学会議

【Ruokavirasto】
1. イチゴの産地を査察する新しい方法

【FDA】
1. 食品中のパー及びポリフルオロアルキル物質(PFAS)を理解するためのFDAの科学的取り組み及び最新のFDA調査の知見に関する声明
2. FDAはオピオイドの中止、痛みの治療及びその他の治療目的で販売される未承認のクラトム医薬品製品を違法に販売する企業に警告を発する
3. FDAは特定の食事とイヌの心臓病の事例の関連性に関する第3次調査状況報告を発表
4. FDAは「妊娠中又は妊娠するかもしれない女性、授乳中の母親、小さい子どものための魚を食べることについての助言」改訂版を発表
5. リコール情報
6. 警告文書

【NTP】
1. ニュースレター

【NIH】
1. ファクトシート:減量のためのダイエタリーサプリメント

【CFIA】
1. カナダ政府はカナダ人に対して食品表示システムの重要な変更について意見募集
2. カナダは経済競争力を高め、貿易を円滑にし、消費者により多くの選択を与えられるようウォッカの基準を改定

【FSANZ】
1. 食品基準ニュース
2. 食品基準通知
3. オーストラリアトータルダイエットスタディは食品供給の安全性を示す

【APVMA】
1. APVMAは家庭用と庭用のクロルピリホス製品の排除を提案

【TGA】
1. 安全性警告
2. 健康製品の広告:広告上の安全性表示に関する規則

【香港政府ニュース】
1. 包装冷凍メカジキに基準値超過の水銀が検出された
2. 食品安全センターは淡水ハタ及び焼きウナギにマラカイトグリーンを検出
3. 上海ヌードルのサンプルに基準値超過の保存料を検出
4. 違反結果

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. リサイクルPET食品容器製造可否の実態調査の結果
3. 食品医薬品安全処、健康機能食品の研究開発段階から技術支援に乗り出す
4. 食品医薬品安全、SNSマーケット有名インフルエンサー販売製品の検査結果
5. トロピカルフルーツ「ライチ」空腹時に摂取しないでください
6. 花粉製品のピロリジジンアルカロイド(Pyrrolizidine Alkaloid)の安全管理強化
7. 食品医薬品安全処、食品異物制御のために食品業界と一堂に
8. 回収措置

【FSSAI】
1. 神話を否定する
2. 食品にホチキスの針を使うのを止めることに関する2019年6月27日の文書

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(ProMED-mail)メタノール中毒-マレーシア:偽アルコール
・(EurekAlert)神経科学研究が現在のアルコール限度に疑問
・(EurekAlert)サプリメントやニュートラシューティカルに新しいタイプのバーコード
・(EurekAlert)培養肉の売り方:科学より文化