セラリーニ論文はデータ不足

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.21(2012.10.17)を発表した。フランスでは先にグリホサート含有製品およびGMトウモロコシの混餌投与が齧歯類に有害とする発表がされたが、欧州食品安全機関(EFSA)はじめ複数国の研究機関から疑義が呈されている。英国食品基準庁(FSA)はカクテル中の液体窒素に警告を発した。BfRシンポジウム「危機対応と危機予防」のプレゼン概要が発表された。

注目記事

【EFSA,BfR,FSANZ】Séraliniらが公表したGMトウモロコシNK603関連論文のレビュー

 フランスCaen大学のSéraliniらがFood and Chemical Toxicologyにオンライン発表したグリホサート含有製品およびGMトウモロコシNK603に関する研究論文について、欧州食品安全機関(EFSA)、ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)およびオーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)が相次いでレビューを公表した。

 Séraliniらの主張はグリホサート含有製品およびGMトウモロコシNK603の混餌投与が齧歯類の腫瘍を増加させる、あるいは寿命を短くするというものであった。しかしながら、今回レビューを行った各評価機関による意見は、いずれも、Séraliniらの研究は科学的な質が十分ではなく結論および主張にはデータの裏付けがないとして、解決すべき問題点を示し、それに対する返答と主張のもととなったすべてのデータの公表を要請するというものであった。

※ポイント:食品や環境中のある物質がヒトの健康へ影響を与えるのではないかという研究報告は数多くありますが、それらの研究報告をどう判断するかは、EFSAの作業を主導したPer Bergmanの一言「明確な目標、正しいデザインおよび方法があってこそ、正確なデータが得られ意味のある結論が導き出される」に尽きると思います。ここでの正しいデザインおよび方法とは主にOECD毒性試験ガイドラインのことで、安全性評価に利用するデータはこのガイドラインに基づいて行われた試験結果が望ましいとされています。

※参考:OECD毒性試験ガイドライン翻訳版
http://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/oecdindex.html

【FSA】カクテル中の液体窒素に警告

 英国食品基準庁(FSA)は、アルコール飲料に液体窒素が使用されている可能性があるとの情報を受けて、その危険性について注意を喚起した。

※ポイント:この助言は、液体窒素で霧を発生させることを売りにしたカクテルを飲んだ英国女性が、超低温障害によって胃を切除したというニュースに由来しているようです。最近は化学実験のような斬新な料理方法を用いることもあるそうですが、どのようなリスクがあるかよく考えてから取り入れるようにしましょう。

【BfR】BfRシンポジウム「危機対応と危機予防」のプレゼン概要

 ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)が2日間にわたり危機対応に関する共同シンポジウムを開催し、そのプレゼン資料がpdfファイルで公表された。

※ポイント:国際ネットワーク(INFOSAN)、EUおよび各国の様々な機関が危機対応時に何をすべきかを議論したシンポジウム。各々の役割を明確にして、過去の事例の教訓から改善して行こうとするものです。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html

食品安全情報(化学物質)No.21(2012.10.17)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2012/foodinfo201221c.pdf

今号の目次

【EC】
1. 食品獣医局(FVO)査察報告書:ハンガリー
2. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. EFSAはGMトウモロコシと除草剤の研究の初期レビューを発表
2. 食品サプリメントの成分としての合成ゼアキサンチンの安全性に関する声明
3. 食品添加物としてのカルナウバロウ(E 903)の再評価に関する科学的意見
4. 栄養目的で食品に添加されるクロム源としての乳酸クロム(Ⅲ)三水和物についての科学的意見
5. 残留農薬の食事暴露推定のための確率論的方法論の使用についてのガイド
6. 香料グループ評価

【FSA】
1. 鉛の銃弾で撃たれた野生動物の摂取頻度が高い人たちへの助言
2. カクテル中の液体窒素に警告
3. 新規炭水化物に意見募集

【HSE】
1. 残留農薬モニタリング:2012年第1四半期の結果

【BfR】
1. Caen大学の研究は遺伝子組換えNK603トウモロコシの再評価の理由にならず、グリホサートの認可更新にも影響しない
2. ANSES(フランス)、国立食品研究所とデンマーク工科大学と共同のBfRシンポジウム「危機対応と危機予防」のプレゼン概要

【FSAI】
1. 野生のキノコ採集に注意

【FDA】
1. 警告文書(2012年10月9日公表分)

【CFIA】
1. 残留農薬及び金属を検査した子ども食品の100%が安全

【FSANZ】
1. ファクトシート:食品中のヨウ素
2. ファクトシート:ラウンドアップ除草剤とラウンドアップ耐性遺伝子組換えトウモロコシの長期毒性に関するSéralini論文への反応
3. 食品基準改正No.135(FSC 77)

【APVMA】
1. パラコートとパーキンソン病に関連はあるか?

【TGA】
1. 警告

【NSW】
1. 松の実とパインマウス

【香港政府ニュース】
1. 漢方薬リコール
2. カプセルに健康警告
3. 未登録漢方薬リコール

【KFDA】
1. 日本の原発関連への食品医薬品安全庁の対応と管理動向〔37〕
2. 生活中の“内分泌攪乱物質”暴露低減化の方法を提供!

【HSA】
1. HSAは違法混入の健康製品に関連する死亡を含む有害反応について警告

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
3
・(ProMED-mail)食中毒、汚染-フランス:チョウセンアサガオ