柵で囲われたフフナーゲル・ホテル外観
洋酒文化の歴史的考察

VII 横浜・カクテルことはじめ(1)

1860年に横浜に登場したフフナーゲル・ホテルは、木造一階建ての日本建築だった。外国人には不評だったホテルだが、ここには恐らく日本で最初と考えられるバーがあった。ここに欧米の著名人が集まった理由の一つは、当時の日本の治安の悪さだった。
姉の宮垣みね子(左)と妹のとし子
洋酒文化の歴史的考察

VI 女性バーテンダーのさきがけ(2)戦前日本編

エイダ・コールマンの例にならい、日本の当時の一流ホテルに女性バーテンダーの名を探す。もしそこに名前が見つからなければ、探索は一挙に難しくなる。年号が昭和に変わって全盛期を迎えたカフェー、そこでおぼつかない手つきでシェーカーを振っていた「女給」という存在があるからだ。それでも見つかったある女性は、確かな腕を持つ名バーテンダーであったはずだが、その後の消息はつかめなくなってしまう。
洋酒文化の歴史的考察

VI 女性バーテンダーのさきがけ(1)欧米編

19世紀半ばまで、旅人のための宿泊施設は、なんらかの目的を持った旅行の便宜のためにあった。しかし19世紀後半以降、欧米には富裕層のレジャーに利用目的を絞った高級ホテルが相次いで登場する。新大陸の新しい飲み物だったカクテルは、その中で新しい発達を遂げた。そしてカクテル史上に数々の伝説を残したサヴォイ・ホテルに、世界で最も有名な女性バーテンダーが現れる。
洋酒文化の歴史的考察
洋酒文化の歴史的考察

V 蜂印と赤玉~ボタニカルを巡って(3)

先行してシェアを広げていた「蜂印香竄葡萄酒」に挑んだ「赤玉ポートワイン」。この両者はともに“ワイン”の部類と思われるが、実は全く異なるジャンルの酒である。さらに興味深いのは、「赤玉」は「蜂印」に対して不利な部分で勝負をかけ、費用をかけて広告を展開した点だ。
洋酒文化の歴史的考察
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V 蜂印と赤玉~ボタニカルを巡って(2)

ノイリープラットのドライ・ベルモットに使われているボタニカルの一つ、セントーリーとは果たしてどのような香りであったか。ところで、リキュールに使われるボタニカルを調べているときに気付いたことがある。戦前に覇を競った「蜂印香竄葡萄酒」と「赤玉ポートワイン」についてだ。
セントーリー
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V 蜂印と赤玉~ボタニカルを巡って(1)

ベルモットについて調べていくと、実はその処方は各社さまざまであることがわかる。各社のベルモットに利用されるボタニカル(香草・果皮等)を詳細に見ていくと、その多様さと不明瞭さに困惑する。そんな中、ノイリープラットのドライ・ベルモットに使われているボタニカルの一部が書かれているのを見付けた。
マルチニ伊太利ベルモット
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IV 赤くなかった“赤富士”(7)

ラベルに日本文のあるベルモットのボトル。このようなものがどうして作られたのか――「大日本基準コクテール」にあったマウント・フジに関する記述を読んだ今は、それがわかる。資料を当たった結果も、その銘記すべき出来事の信憑性を裏付けるものだった。
ラベルに日本文のある奇妙なベルモットのボトル
洋酒文化の歴史的考察

IV 赤くなかった“赤富士”(6)

今回、FoodWatchJapanの原稿を書くことがきっかけで「大日本基準コクテール」ブックの実物を目にすることができたが、もう一つ、ここから改めて調べ直したマウント・フジカクテルについて、知られざるエピソードがあった可能性が出てきたことを「赤富士」リサーチの後日談として残しておきたい。
洋酒文化の歴史的考察
洋酒文化の歴史的考察

IV 赤くなかった“赤富士”(5)

JBA版「マウント・フジ」に残る謎は2つある。そのうちの一つは、やはり「大日本基準コクテール・ブック」によって真実が明らかになった。明らかになったことを改めて正面から受け止め、日本洋酒文化史上記念すべき「マウント・フジ」の本当の価値に脚光を当てたい。
マルティニ・エ・ロッシ社ベルモット
洋酒文化の歴史的考察

IV 赤くなかった“赤富士”(4)

JBA版「マウント・フジ」のレシピがオリジナルとは別物の外観を呈するものに変わってしまった理由として、誤記ということも考えられる。しかし、筆者はこの仮説を退ける。ただ、そうして結着を付けたとしても、「マウント・フジ」にはまだいくつかの謎があるのだ。
マルティニ・エ・ロッシ日本限定瓶
洋酒文化の歴史的考察

IV 赤くなかった“赤富士”(3)

JBA版「マウント・フジ」が、赤くはないオリジナルからどうして現在普通に作られる赤になったのか。文献を当たると意外なことがわかった。ある段階で、ベルモットの「白」の指定が消え、さらにある段階で「白」の指定が別の形で復活していたのだ。
マウントフジ・カクテル
洋酒文化の歴史的考察

IV 赤くなかった“赤富士”(2)

オリジナルのJBA版「マウント・フジ」に使うベルモットが「マルティニ・エ・ロッシのベルモット(白)」だとすると、どうしても仕上がりは赤にならない。目の前で起こった現実が受け入れられず、実際に作ってみてもらうために、筆者はバーに向かった。