八列とうもろこし

北海道に、「八列とうもろこし」という古い品種のトウモロコシが伝わっている。収穫したままの実物は見たことがないのだけれど、細長く、断面を見るとトウモロコシの粒の列が8列しかないため、この名で呼ばれている。

八列とうもろこしのコーンブレッド。
八列とうもろこしのコーンブレッド。

 柴田書店時代の先輩の深江園子さん(私は浪人してますし、中途入社ですので、先輩といっても私より年齢が上とは限りませんよ)から教わった。北海道でかなり以前から栽培されている品種で、今もこの品種を守っている農家がいるとのこと。

 スローフードの「味の箱舟」にも選ばれている。ところが、なかなか難しい代物らしい。収穫してすぐに、どんどん硬くなってしまうので、茹でて食べてもおいしさが伝わらないことがままあるという。

 北海道の農家は、トウモロコシについて鮮度第一ということを言うために「お湯を沸かしてから取りにいけ」と言うことがある。それを聞いて、「そんなオーバーな」と思っていたけれど、どうもこの「八列とうもろこし」などが主流の時代に言われた言葉らしい。

 正体は「ロングフェロー」あるいは「札幌八列」というフリント種のトウモロコシ。生食用よりも、粉に挽いて食べるものではと伝えると、深江さんもちょうど製粉を考えていたとのこと。道具をどうしようかと悩んでいたら、ついに生産者の方が製粉機を購入された由。

 その粉を送っていただいた(まだレポートを送っていなくてすみません)。挽きぐるみで、こういうコーングリッツは国内ではなかなか手に入らない。これはとても面白いことになりそう。

 コーンブレッドを焼いてみた。野性味が出過ぎるのではと思っていたら、考えていたよりもずっと上品な感じ。香りがよく、粒々の食感もほどよい。今日は恐る恐る市販のコーングリッツと半々にして焼いたけれど、次は八列とうもろこしだけで焼いてみよう。

 北海道名物に育ちますように。

※このコラムは個人ブログで公開していたものです。

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About 齋藤訓之 398 Articles
Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。公益財団法人流通経済研究所特任研究員。戸板女子短期大学食物栄養科非常勤講師。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。日本フードサービス学会、日本マーケティング学会会員。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ →