国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。カナダで冷凍食品に関連の大腸菌O26:H11感染アウトブレイクが発生。ドイツのシンポジウムでラット由来E型肝炎ウイルスが新たな人獣共通感染症病原体である可能性が指摘された。
【カナダ】冷凍スナックに関連の大腸菌O26:H11感染アウトブレイク
カナダ公衆衛生局(PHAC: Public Health Agency of Canada)は、Pillsburyブランドの冷凍スナック食品「Pizza Pops」に関連して発生している大腸菌O26:H11感染アウトブレイクに関する公衆衛生通知を発表した。
本アウトブレイクに関連して検査機関で大腸菌O26:H11感染が確定した患者が5州から計20人報告されている。患者の発症日は2025年10月上旬〜11月下旬報告患者のうち4人が入院し死亡者はいない。
患者の多くがPillsburyブランドの「Pizza Pops」の喫食または当該製品への接触を報告した。調査は継続しているため、本アウトブレイクに関連した別の食品が新たに特定される可能性がある。
本件に関連して、2025年12月21日にPillsbury社は「Pizza Pops」4製品の回収を開始した。
【ドイツ】ラット由来のE型肝炎ウイルス
ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR: Bundesinstitut für Risikobewertung)施設で、食品媒介性ウイルスに関するシンポジウムが開催され、ラット由来のE型肝炎ウイルス(ratHEV)の新たな人獣共通感染症病原体である可能性が指摘された。
肝炎ウイルスは肝臓に炎症を引き起こす。主にA型、B型、C型、D型およびE型の5種類が存在し、E型肝炎ウイルス(HEV)だけでも世界で年間およそ2千万人が感染している。しかしながら、通常はラット間で蔓延しているHEVの変異株(ratHEV)がヒトにも感染することが判明したのはここ数年のことである。これまで主に香港およびスペインから個別事例が報告されていたが、ドイツ人患者においてもratHEVの感染事例が初めて報告された。
BfRのReimar Johne教授によると、ratHEVの感染経路については大部分が解明されていないが、研究結果からratHEVがドイツおよび中欧における新たな人獣共通感染症病原体として考慮される必要があることが示唆されている。研究者らは、本シンポジウム「6th BfR-Symposium Foodborne Viruses」においてratHEVの現状を紹介するとともに、病原体の拡散および伝播に関する最新の知見を発表する。
HEVに加え、高い感染性を持つノロウイルスやA型肝炎ウイルス(HAV)など、よく知られている食品媒介性ウイルスも本シンポジウムのテーマに含まれる。まだ比較的研究が進んでいない腸管アデノウイルスや、現在鳥インフルエンザの再流行を引き起こしているインフルエンザウイルスなど他のウイルスについても、伝播による潜在的なリスクが議論される。これらの病原体について「基礎知識」「検出方法」「衛生、不活化、結果の評価」の3つのセッションに分けて専門家から情報が提供される。
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(微生物)No.26(2025.12.24)
- https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2025/foodinfo202526m.pdf
