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脱規模の経営はトヨタに学ぶ

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「トヨタ生産方式」と言うと、多くの方はすぐに「かんばん方式」という言葉を思い出すでしょう。しかし、この生産管理方式を体系化した中心人物である大野耐一氏は、これを初めて内部から社会に紹介した本である「トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして」の中で、早くも「トヨタ生産方式すなわち“かんばん方式”である短絡」を戒めています。

 かんばん方式は、トヨタ生産方式が目指すものを実現するためのツールの一つに過ぎません。では目指すものとは何かというと、「企業のなかからあらゆる種類のムダを徹底的に排除することによって生産効率を上げ」ることだと言います。トヨタ生産方式の原点として「ジャストインタイム」もよく取り上げられますが、トヨタ自動車創業者の豊田喜一郎氏が提唱したこのことや、豊田自動織機時代からの財産である「ニンベンのある自働化」(支障を生じたときに自律的に停止等の対処ができる機械を使う自動化)さえ、この実現のための手法の一つにすぎないのです。

 やはりこの生産管理方式の一部にスポットを当てることは大野氏の嫌うところと思いますが、あえて言えばこの生産管理方式の素晴らしい点は、やはりムダの排除が決め手であると着眼したことと、そのムダを詳細に分析したところにあると思います。

 トヨタ生産方式では、それを「7つのムダ」として分類しています。これに慣れ親しんだ人たちによれば、「7つのムダ」は頭の1字ずつを取って「飾って豆腐」と覚えるとよいそうで、以下の7項です。

  • カ = 加工そのもののムダ
  • ザ = 在庫のムダ
  • ツ = 作り過ぎのムダ
  • テ = 手待ちのムダ
  • ト = 動作のムダ
  • ウ = 運搬のムダ
  • フ = 不良をつくるムダ

 ここでこれら一つひとつを詳しくは解説しません。しかし、飲食店や農業など自動車産業とは仕事の種類も事業規模も違う業種にとっても、これらはいずれも重要な検討事項だということだけ申し上げておきたいと思います。

 大野氏の本のタイトルをもう一度見てください。「脱規模の経営をめざして」と付いています。あの“大トヨタ”が「規模ではない」と言っているのです。

 なにしろ、トヨタがこれを生んだのは「欧米ですでに確立していた自動車工業の大量生産に対抗し、生き残るため」であり、「“多種少量生産”という市場の制約のなかから生まれてきたもの」であったのです。

 小さな店、小さな農家、巨大なライバルがいる事業に携わる人ほど、ぜひ一度は手にとってほしい本の一つです。

「トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして」

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※このコラムはメールマガジンで公開したものです。

執筆者

齋藤訓之
齋藤訓之
Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。「FoodScience」(日経BP社)では「食の損得感情」を連載。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。日本フードサービス学会会員。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ → ※齋藤訓之のブログ →